2020年1月30日木曜日

西村由美(オランダ語翻訳者)       ・知られざるオランダの生活を伝える

西村由美(オランダ語翻訳者)       ・知られざるオランダの生活を伝える
西村さんが訳したトンケ・ドラフト作「青い月の石」は国際アンデルセン賞などで知られるIBBY国際児童図書評議会の2020年のオナーリストに選ばれました。
西村さんとオランダ語との出合いは夫の海外転勤に同行して」38歳でオランダに渡り、現地で外国人のためのオランダ語講座に通ったのがきっかけでした。
九州ほどの広さの国土に1700万人が暮らすオランダでは人々は外国語に堪能で、英、仏、独など複数の言葉を話し、外国人も自然に隣人として受け入れるオープンさがあるといいます。
日本では江戸時代の鎖国政策の中で長崎の出島に医学など西洋の文物などをもたらしたのがオランダ人であり、オルゴール、ランドセル、エレキ、ポンズなど日本語に溶け込んだオランダ語も沢山あります。
立憲君主国でチューリップ、風車、画家のゴッホやフェルメールの国として親近感を持つ人も多いのではないでしょうか。
合理的な国民性で個人主義でありながら個人の誕生日や人と人との交流を大切にするなど、オランダ人についてまだまだ知らないことが沢山あると言います。
オランダの文化、オランダ人の考え方など翻訳を通して伝えたいという西村さんに日本とオランダの交流の思いについて伺います。

IBBY(International Board on Books for Young People)は世界中の優れた児童図書、子どもの文学を紹介しており、子どもたちに是非読んでほしいという推薦図書になります。
作品賞、イラスト賞、翻訳賞の3部門があります。
「青い月の石」は10歳ぐらいの男の子が主人公ヨーストで友達と一緒に地上と地下世界を行き来していろんなことを繰り広げる友情と魔法の冒険物語といった所です。
1970年のオランダですが、王子様が住むお隣の国は中世のような世界、そして恐ろしい王様が支配する地下世界があり、3つが自然に共存しています。
翻訳するにあたりトンケさんとはコンタクトを取りました。
2004年秋に、『王への手紙』は、オランダで過去50年間に出された子どもの本の中から第1位に選ばれ、改めて注目を浴びている。
日本語で本が出版されることにはトンケさんは本当に喜んでいました。
トンケさんは第二次世界大戦の時にインドネシアの日本軍の収容所で3年間過ごしました。
そこで話の才能があることを気付いたと言っています。

私はオランダから帰ってきてからオランダ語を教えることを頼まれました。
農業研修生、留学、研修で行く人たちを教えていました。
オランダへ行く人たちはオランダのことを知らないので、思いついたのが翻訳でした。
オランダの人たちの生活、暮らしぶりを伝えたかったので、子どもの本を翻訳することにしました。
子どもの本には大人も出てくるし、オランダのいろんな場面が出てくるのでいいと思いました。
友人たちに聞いて一番の勧めがアニー・М・G・シュミットでした。
オランダ人の心とオランダ人の生活を描いた方だと思います。
1911年に生まれて1995年に84歳で亡くなっています。
シュミットさんは凄く奔放な方でした。
オテンバ(この言葉もオランダ語)でした。
父親は牧師さんで教会で説教している間に兄さんのバイクの後ろに乗って教会の周りをぐるぐる回っていたという様なこともあったそうです。

アニー・М・G・シュミットの「ペテフレット 荘のプルック」 8歳ぐらいの少年プルックが一人暮らしでいろんな友達を作ってゆく。
シュミットさんは自分の理想の子どもを描いたと言っています。
独立心が強くて大人と対等に渡り合いましてオランダでは人気の本です。
「イップとヤネケ」もシュミットさんの作品で1952年から1957年までオランダの新聞に連載されて大人気になりました。
隣同士の男の子と女の子で親とかいろいろでてきます。

夫の転勤でオランダに行きました。
オランダでは英語が上手いと言っても話すことも書類のすべてオランダ語だったので外国人向けのオランダ語教室に行きました。
日本では知っている人としか挨拶しないが、顔も知らない人でも挨拶をします。
オランダの家では家をいつも綺麗にしています。
呼んだり呼ばれたり気軽にやっていますから気が楽で楽しいです。
自然な自発的な助け合いがあるのでちょっと吃驚しました。
繋がり方が温かい感じがします。
率直で生活も派手ではなくて簡素な感じで気軽に楽しむという事があります。
友達の誕生日にはこちらからお祝いに行きます、そういった感じです。
迎える方も気楽な形で接待します。
トイレ、台所など見えやすいところにカレンダーがあり、誕生日が書き込んであり忘れないようにしています。
オランダ語を学んだことで交友範囲が広がって、翻訳の仕事も広がって行って、オランダはインターナショナルでもありますが、人間サイズで、率直で外国人という事を意識しないで生活ができて何よりもありがたかったです。