大谷順子(NPO法人代表理事) ・【人権インタビュー】 (3)虐待の悲劇を許すな!
84歳になる大谷さんはこれまで子どもにかかわる様々なNPOの立上げにかかわってきました。
日本で初めて親と暮らせない子どもが里親と生活する家庭を集めた子供の村を福岡に開設するなど、子どもへの支援活動を50年以上続けてきました。
近年子どもの虐待に関するニュースが数多く報道されています。
子ども自身がSOSを発信していたのにもかかわらず、救われなかった命も少なくありません。
どうすれば子どもの虐待が防げるのか、大分にさんはそのカギが地域だと言っています。
大学を卒業した後しばらくTV局で働いていて、子どもの番組の制作にかかわりまして、そのご縁から子ども劇場という市民団体(今でいうNPO法人)、にかかわったのがきっかけです。
当時の子どもの状況が変わっていくという事で危機感を持ちました。
遊び、仲間、ゆったりした時間そういったものがどんどん失ってゆく予感がしました。
68歳の時に「子どもNPOセンター福岡」を立ち上げました。
子どもの問題が多様化して深刻な問題が多発するという事で、多くの市民がその課題に取り組むという方たちが出てきて、NPO法人として立ち上がりました。
当時子ども虐待という言葉はありませんでした。
しつけ、指導という名のもとに体罰はあったと思いますが、今でいう子供虐待が認識されたというのは、2000年に児童虐待防止法が成立しましたが、その少し前ぐらいから認識されてきたと思います。
子ども権利条約が子ども虐待を発見したという風に言われる。
子ども権利条約が国連で採択されて30年になります。
日本で批准して25年経ち、いまだにそのことが浸透し社会に根付いていかないという問題がもろもろの問題を引きおこすという事に関連があるのではないかと思います。
子どもは一人の独立した権利があるという見方が重要な事で4原則があります。
①生きる権利
②発達する権利
③保護される権利
④参加をする権利
生まれながらに持っている権利です。
国、大人社会は子どもに対してちゃんとそれを保証する責務を負う。
2005年69歳の時に市民参加型の里親普及事業に着手。
色んな背景を持った子供たちが次々児童相談所に連れてこられて(虐待が一番多かったが)、児童相談所が非常に困って、一時保護され、児童養護施設に子どもを委託したりしますが、一杯になってきて、他県にまでお願いするという様なことになりました。
里親を増やすことしかないという事で、私どもに相談があったという事がきっかけでした。
里親制度が知られていないことが判りました。
或る里親から世間から隠れるようにして生活してきたという話を聞いて、これは変えなければいけないと思いました。
2006年に子どもの村を作る事に着手。
複数の里親家庭が集まって専門家の支援を得るという事がポイントですが、一緒になって子どもを育てる村という事です。
5棟建っていますが、今4っつの家庭があります。
里親の愛情だけではどうにもならないということが判ってきて、専門的な支援があまりにも日本の中では不足しているという事です。
苦労してきた子どものトラウマを専門的な力がないとできないことで、一つ一つほぐしてゆく作業をするのでこれは大事なことだと思いました。
資金、土地、人材の確保、地域の方たちの合意を頂くこと、すべてが大変でした。
悪い子が来るとか噂が飛んだりして、反対されたりしました。
説明会を開いたりしましたが、反対する人達がいて収まるまで1年半かかりました。
2010年に村が開村しました。
子どもの顔を見たらいっぺんに変わりました。
一番反対していた人が開村半年後に、のし袋を持ってきて「子どもたちに罪はないけんね」と言って渡してくれました。
5万円入っていてびっくりして泣きました、今でも忘れられません。
殆どの子が厳しい経験をしてやってくるが、何か月かすると表情が変わってきて、柔らかい感じになってきて、子どもらしい顔になって行きます。
子どもの村ではいろんな大人と交流することがあり、それがとてもよかったと思います。
お祭りに参加したり、農作業をしているところを見たり、いろんなことを教えてもらったりしてとかいろいろあります。
オープンにするという事が大事なんじゃないでしょうか。
地域とのつながりが大事だと思います。
家族ぐるみの支援になってきていると思います。
困難をかかえた子がいくらでもいます、親が子を罵ったりしていること見かけることがありますが、私は声をかけたりしています、それだけでも違うと思います。
アドボケイト(Advocate 代弁者)の育成に力を入れています。
児童相談所、一時保護所などで訪問して子供の声を聴くという事です。
聴いた事を社会に届けるという役割を持つ人です。
親が怖い、先生が怖いので言わないでおこうという様な子どもたちがいるので、子どもの立場に立って言えないようなことを時間を掛けて聴こうとするものです。
子ども支援にかかわらない別の人がなるという事です。
今年6月に参議院本会議で通過して法律として成立したという事があり、子どもアドボケイトの構築というのを2年後を目途にして実現するという方針です。
その時に備えて人材を備えておくというものです。
子どもの人権を尊重することが一番で、しっかりと子どもの声を聴く社会に向けて歩いてゆくと、きっといい社会になるのではないかと思います。
虐待の相談数が増加しているという事がありますが、空振りでもいいから電話した方がいいというその意識の表れだろうと思います。
思いすぎでもいいから代わりにSOSを発信してという事で 虐待防止に備えてゆく事が必要だと思います。
子どもへの温かいまなざし、子どもにかかわると自分が柔らかくなってゆくと思うので、気に掛けることが大人も変わってゆくきっかけになると思います。