2019年12月21日土曜日

アレックス・カー(東洋文化研究者)    ・"観光公害"を乗り切る

アレックス・カー(東洋文化研究者)    ・"観光公害"を乗り切る
近年訪日外国人、いわゆるインバウンドが激増し観光が重要な産業になった一方で観光名所での大混雑や外国人観光客によるマナー違反など様々な問題が起こり、観光公害、オーバーツーリズムという言葉も生まれました。
そんな中アレックス・カーさんは 日本だけでなく世界の観光地の現状と対策を調べ観光亡国論という本にまとめました。
アメリカに生まれ子どもの頃父親の転勤で日本に住んだことをきっかけに日本文化に興味を持ったアレックス・カーさんはアメリカの大学で日本学をまなび、その後は日本で古美術など東洋文化を研究90年代からは日本各地の古民家を再生し、観光客に一軒丸ごと貸す取り組みを行っています。
観光公害の現状と乗り切るヒントを伺いました。

小さな天満宮の境内の中の社務所だったが、空き家になってここに住み着いて40年以上になります。
襖に鶴の絵、書が沢山ありますが、この書は自分で書きました。
子どもの頃に横浜に来て住んでいました。
日本の山、川、海がとても美しくて、こういう家も好きでした。
一旦アメリカに帰り大学では日本の勉強をして、1971年にヒッチハイクで日本一周をしました。
それが決定的で日本で仕事をして住みたいと思いました。
どこへ行っても美しかったです。
徳島県祖谷(いや)は急斜面の上に家があって、山水画とかに書かれたような雰囲気で、それに惚れてしまって、ひと夏の旅の中の一番の収穫でした。
祖谷(いや)は過疎地帯になっていまして、一軒買ってしまいました。
120坪の土地で38万円でした。
300年ぐらい経つ家で、家はおまけでした。

再び日本に来て亀岡にある大本教という神道系の宗教がありますが、外国人に日本文化を教えるセミナーがあり通訳をたのまれました。
そしてここの家を見つけて亀岡に落ち着きました。
屏風とかを買ったりコレクターとなり、そして古美術商に発展していきました。
祖谷(いや)にある家は篪庵(ちおり)という屋号を付けまして、今でも残っています。
祖谷(いや)に海外から見学とか宿泊に来ました。
2000年代に古い家を現代に引っ張るような直しをして、今は京都だけで千数百軒やっています。
観光面では京都は放っておいても大丈夫ですが、祖谷(いや)のようなところは人口減少、高齢化とかで本当に厳しいです。

2010年以降は京都ではなくて地方です。
地域コミュニティーが寂しいです、人がいなくなって神社の掃除ができないとか、家がつぶれていくとか、観光の大事性が際立ってくるわけです。
1960年代に頃から公共工事で支えようとするシステムができて、80年代の後半から道路、橋、護岸工事が必要とはなくなってきているが、それに依存してきてしまっていて、毎年何億、何十億の予算を使って、必要ないのに作ってしまって、どんどん景観に大きな打撃を与えている。
日本は見苦しい国土に変わりつつあるが、公共工事を明日から止めてと言っても、依存してしまっているので無理で、それに代わる新しい産業が必要です。
健全的な観光をもってきたら、土木などにしか頼れないようなシステムは変わるという思いでやってきました。
2003年に日本では観光立国を宣言して、当時521万人であった外国人観光客は急増して2018年には6倍近い3000万人を越える。
この現象は日本だけではなく世界的な現象です。

2018年には京都では15年前より900万人増えて5275万人になり、外国人観光客は805万人で15%が外国人観光客です。
京都に宿泊した外国人観光客は15年前の年間45万人から450万人と10倍になる。
SNSで有名になり、今まであまりいかなかったような場所にも行くようになりました。
京都の伝統的な街並みの祇園花見小路では観光客があふれて問題になっている。
道路にはみ出して歩行者天国のようになって、建物を守る犬矢来(町屋などにある軒下の防護柵のようなものを指す)に寄りかかったり、私有地に入り込んだり、暖簾で手を拭いたり、舞妓さんを囲んで写真を撮ったり、着物に触ったり、そういった行為も報告されています。
色々対策を打ったりしているが、市民生活にも影響が出始めています。
忠告の看板だらけで、視覚汚染になっている。
祇園自体も看板で美しくなくなってしまうのではないかと懸念しています。

観光は管理次第で、客の誘導、システムが考えられる。
あるキャパを越えるとどうしてもどこかで制限しないといけないことができてくる。
何名までとか予約制にして規制するところが世界で有名なところではできています。
美術館でも同様ですが、日本ではそうなってはいません。
イタリアのボルゲーゼ美術館は時間帯を予約してじっくり見られて美術品を楽しめる。
入場料を取るという様なシステムも必要な場合もあります。
富士山などはそうです。
ゴミだらけだし世界遺産にはふさわしくない汚さ、お客は十分楽しめない、オーバーキャパになっていて、数年前から1000円の入場料を取るという事が言われているが、1000円ではほぼ効果は無し、そして任意だし。
役所では思い切ったことが出来なくて批判されると思われていて、ほぼ富士山の状況は変わっていないです。
1万円の価値があるという分析結果もあり、1/10になったとしても収入は同じになる訳で、お客を減らすという事も大事だと思います。
観光客をいかにに増やすことで成果を測るが、いかに観光客を抑えるかも仕事の一つだと思います。

兵庫県朝来市にある竹田城跡、日本のマチュピチュという風にSNSで拡散して、年間来場者数がブーム以前の数十倍、50万人以上に急増して、16世紀末の天守閣の瓦が土の中に埋まってっているが露出して踏み砕かれる。
入場料が500円という事でほぼ無意味になっている。
一律になっているが住民はフリーパスにしたりして、5000円でいいと思います。
行きたい人は行く、という事でいいと思います。
ゼロドルツーリズム 嵐山の竹の道はお金はとっていない、伏見稲荷もゼロドルに近い。
神社などもそろそろ入場料なり何かの制限が必要かと思います。
商店街を歩いてもらう事で稼げることもできます。
街が活気づく方法をもっと考えて、街が潤うようにもっていかないとゼロドルになってしまう。

①入場料を取る。
②予約制
③誘導の工夫
④観光面積を増やす。(観光地のエリアでは車をシャットアウトしてしまう。)
混み合いが少なくなり歩行者天国の楽しみ、道にカフェが出来たり、座れるところが出来たりして、京都はこれをすればいいと思います。
地元は自由に車の出入りができるという事にすればいいと思います。
ブロードウエーでは車をシャットアウトにしてニューヨークの交通は凄くよくなって、ブロードウエーでは人は歩いているので大変な賑わいです。
京都も交通を大幅に考え直す段階に来ていると思います。

古民家を一軒丸ごと貸すという事業を行って指導をしています。
空き家問題、現在1000万軒で、十数年したら2000万軒になろうという大変な社会問題ですが、家の多くは文化遺産のようなもので、どんどん壊されてもったいないと思いまして、どうにか救う方法はないかと始めました。
新しいお金の収入源となり、村が元気になる。
文化資源を何とか残したり、地域の元気を取り戻したいという事で古民家を直して施設としてやっています。
地元との連携が必要です。
量より質、祖谷(いや)には9軒直して宿泊施設として営んでいますが、年に3000人ですが、大型観光バスできた人とは全くお金の使い方が違う、片方は数十分程度の見学で自動販売機とかせいぜいお土産とか、もう一方は1,2日の宿泊代、食事代とか一人=バス1台分になります。
そこには興味を持ってくるのでじっくり時間を過ごして質が高いです。
大型観光バスで来る人は興味を持ってくるわけではないし、ぞろぞろ来るので市民生活は邪魔される。
地方は小型で質が高く、という方があっています。
日本は宝物の宝庫です。
古民家などを直して受け皿があれば、不便なところでもと遠い所でも来てくれます。
世界の観光地でも似たような問題を抱えて対応したりしていて、日本の観光地は世界から学ぶチャンスだと思います。