2019年12月4日水曜日

中森明夫(作家)             ・アイドルに生かされて

中森明夫(作家)             ・アイドルに生かされて
三重県出身59歳、10月に5冊目の「青い秋」を出版されました。
ご自身の半生を描いた自伝的な作品です。
20代の初めからライターとして活動され新人類の旗手と称されたこともあり、「オタク」の名付け親としても知られています。
2010年に出版した4冊目の小説『アナーキー・イン・ザ・JP』は三島由紀夫賞の候補になりました。
評論の分野ではアイドル評論だけでなく文学や映画にも領域を広めています。
中森さんに最新作「青い秋」と、御自身の半生とアイドル論などについて伺います。

間もなく還暦ですが、青春という言葉がありますが、中国の故事ですが、青春の次に朱夏、白秋、玄冬とあるわけです。
本来白い秋という事になるのですが、いまだに自分は青いままなのではないかと思って「青い秋」というタイトルを考えました。
自分の心情です。
自分の経験をもとにしてほぼ書いています。
1980年代に衝撃的な自死を遂げた岡田 有希子さんとか、思想家の西部 邁(にしべ すすむ)さんとか僕とご縁のある方がいて、亡くなられた友人、知人等のエピソードが書かれています。
懐かしいという評価を頂いています。
雑誌などを中心に注文を受けて原稿を書くという事を40年ぐらい続けています。

三重県出身、漁師町でした。
15歳で上京しました。
東京の附属大学の高校に通っていて兄と同居していました。
当時のアイドルは東京にしかいませんでした。
学校には行かないで街にいって、気が付くと高校を中退しました。
家出して同郷の10歳ぐらい上の建築家の家に半年間おせわになり、そこには哲学書文学書など本がたくさんあり読みつくしました。
その時の経験が大きかったです。
20歳でライターとしてデビューしました。
あるきっかけで編集部を訪ねて、編集長と話をするうちに「君原稿を書いてみない」、と言われて書き始めました。
1980年代初頭は新しい雑誌が生まれたりして徐々に仕事が広がっていきました。
1983年に漫画雑誌のコラムを頼まれて、ある時若い男の子たちが相手を呼ぶときに「おたく」と他人行儀な言葉で言っていて面白いなあと思って、そこに書いたら凄い反響がありました。
「おたく」の名付け親という事になりました。

新人類の旗手といわれるようになりました。
1980年代半ばに朝日ジャーナルにでブレークしました。
TVもNHKさんをはじめ全部の局に出でるようになりました。
半年で倒れてしまいました。
TVに出ることを辞めて、B級アイドルについて毎月書いて続けていました。
1987年に『東京トンガリキッズ』を出版しました。
80年代に生きる若者たちに向けて書いたものです。
新人類ブームは1,2年でした。
篠山紀信さんと組んで旬の女性という事で、篠山さんが写真を撮って僕が文章を書いていました。
いろんな出会いがあり、文章を紡ぐという事をやってきました。
後藤久美子さん、宮沢リエさん、南沙織さんなどの取材をしました。
自分で言い出したわけではないのですが、アイドル評論家という事になって行きました。
アイドルは日本独自だと思います。

欧米では否定的な文脈で使われていますが。
人類の歴史を考えたときに神様、宗教よりも古いのではないかと思います。
石、木だとかに対して祈っていたと思います、中には踊ったり歌ったりして取り囲んでお祭りが多分あったと思いますそれがアイドルだと思います。
「アイドル日本」という評論集で、日本よアイドルたれという主張があります。
バブル崩壊して不況期が続いて、日本が目指すべき方向が見失われて、国家論が盛んに言われるようになりました。
世界に愛される国になるそういう意味を込めて「アイドル日本」で日本よアイドルたれとと書いた訳です。
紅白歌合戦にグループアイドルが出てきて年越しを祝うというのは日本の文化にかなっているのかなと思います。
アイドルが日本中にいるというのが今の時代だと思います。
小さいライブ活動とインターネットをつないで行ったと思います。
アイドルの文化は自分の人生とは切っても切り離せないような重要なカルチャーだと思います。

ツイッターで毎日発信しています。
個人メッセージを広く伝えられるという事で非常に重宝しています。
「寂しさの力」 東日本大震災の年に人間の一番強い力は寂しさの力なのではないかとツイートしたら、出版社の役員の人から本を一冊書いてほしいといわれました。
母に捧げる本でした。
スマホのアドレスに電話番号が並んでいるが、その中に亡くなって行った人が増えていって、決してかけて出ることはないが消去することが出来なくて、残してあって歳をとるという事はこういう事かなあと思って、書き残していこうと思いました。
そして「青い秋」という小説になりました。
2015年の国勢調査で男性の4人に一人が生涯未婚という事でした。
自分は特殊な人間だと思って書きましたが、特に都心のでは一人が多いと聞いています。
この小説は9年ぶりに書きましたが、自分の生きてきたことを言葉にして物語にするという事がとても新鮮でしたので小説を書いていきたいと思います。