2019年12月25日水曜日

森 昭彦(サイエンス・ジャーナリスト)  ・【心に花を咲かせて】野菜の不思議にみせられて

森 昭彦(サイエンス・ジャーナリスト)  ・【心に花を咲かせて】野菜の不思議にみせられて
森さんは野菜は知れば知るほど面白いと言います。
日本にある野菜はもともと海外から日本に入ってきて定着したものが多いそうで、原産地周辺に残る原種や原種に近い品種が色も風味もまるで違っていたり、使われ方に吃驚するものがあったり、野菜にまつわる伝説や伝承も面白く、その地域での野菜と人との関わりが見えてきて興味深いそうです。
確かに森さんが書かれた本を読みますと野菜についての知らない話に驚きの連続でした。
森さんに興味深い野菜の話や何故野菜のことを調べるようになったのか伺います。

最近野菜の売り場にいくと今まで見たことのないような野菜が並ぶようになりました。
ロマネスコ、チコリトレビーゾ、ベルギーエシャロットとかなんだかわからない野菜があります。
若い人たちが新しい野菜を集中的に育ててイタリアンレストランにおろしたりする方々が増えてきました。
日本古来からある野菜は実はものすごく限られていて、ウリ、ナス、大根などは海外から入って来た野菜です。
平安、安土桃山、一番多かったのが江戸から明治にかけて、どんどん多くなってきました。
日本の売り場で普通に並んでいる野菜は約150種類ぐらいです。
野菜は時代によって変わってきます。

ヒユ、アザミ、ナズナ、タデ、セリも昔は野菜として育てられていました。
湯がいてお浸し、魚の付け合わせなどに使われてきました。
日本人は魚が好きで当たる方がいて、食あたりを防ぐためにタデなどは付け合わされるようになりました。
刺身などに赤い小さな双葉がてんこ盛りでついていますが、タデの赤ちゃんの双葉でそれを食べることで生魚に当たるのを防ぐのが、平安時代の宮廷貴族のたしなみだったんです。
ヒユは今も山菜料理として使われています。
おひたし、炒め物で使われます。
イヌビユというヒユは葉の先がハート型になっていて、日本に古く帰化した種類で癖がなくおいしいです。
スベリヒユは野草として食べます。
夏場にそうめんの薬味として食べられます。

ヨーロッパでも野菜という概念ができたのは中世以降です。
その前に野菜というと豆類しかなかった。
ソラマメも芽生え、茎葉の柔らかい所は塩ゆでしたり、スープに入れたりして食べていました。
人の動きのあるところには必ず美味い植物はついていきました。
ジャガイモ、玉ねぎなどヨーロッパに入って来たのは16世紀になってからになります。
ジャガイモ、トマトは入った当時は大不評で食べなかったそうです。
ジャガイモはナス科の植物で、その前にナス科の植物は有毒植物があふれていてこれに当たる人が多発して問題になっていました。
ジャガイモはナス科の植物という事で、ジャガイモは毒物だというイメージがついてしまいました。
毒はジャガイモの芽だけではなくて皮の部分にもあります。
でも陽の当らないところで管理すれば、皮も食べても大丈夫です。
電気の当るところでも、生きているジャガイモは駄目です。
傷ついたところを守ろうとして有毒な物質を出して守ろうとします。
売れ残って芽がでていたり、皮がうっすら緑がかっていると当たりやすいです。
当たると頭痛、めまい、吐き気に襲われ苦しみます。

スイカの原産はアフリカの中央部で、人に運ばれて古代エジプト文明にたどり着いて、苦いため薬草として使われていました。
ビー玉のおおきいものぐらいで小さかった。
有毒植物で、その中の種を取って薬用にしていました。
ウリとかキュウリとかと交配したりして、少しずつ大きくなってきて甘みも出てきました。
地中海を渡ってローマに2000年前ぐらいに到着してやや甘くなってきたそうです。
身は使われずに多くは種と皮が使われていました。
皮の白い果肉部分は絞って目薬にしていました。
皮でごしごしすると肌つやが良くなる。
スイカの根っこを乾燥させ粉末にして美容液として肌に付けて貴婦人たちは色つやを守っていた。
抗酸化物質が皮に多くあり、コラーゲンとかの組成を助ける可能性があるのではないかという論文がいくつか出ています。(緑の部分と白い部分との境目)
種の中身を出して、から入りするとおいしいです、中東では行われています。
スイカを焚火の中に入れて焦げたものを粉末にして布に入れ、火をつけると爆発するような火花が散って燃え始めて、ちょっとした火薬の原料とかに使われていました。
煮炊きのための火付けの素材として家庭の主婦が使っていました。
バングラディッシュなどではスイカの種を脳の強壮剤として使われていた。

今新しい野菜が入ってきています。
イタリアで栽培されているパースレイン、日本にはいってきて盛んに栽培され始めています。
見た目はスベリヒユが大きくなった感じです。
ミネラル、ビタミンがたっぷりで肉魚料理にも合って生でも食べられます。
ロシアは敗血症を起こしやすかった、ニンニクを摺り下ろして直接患部に塗るが沁みないんです。
ニンニクの成分には炎症を鎮めたり、痛みを鎮めたり、ばい菌を寄せ付けないなどの作用があります。
ロシアでは重要軍事物資として第一次、第二次世界戦で大いに利用されました。
ソラマメは恋愛に使われたそうです。
イギリスのおじいさんおばあさんがたは「お前に気に入った娘がいたら負ぶって、ソラマメ畑まで連れていけ、そうしたら彼女はお前のものだ」といったそうです。
花の匂いは甘い香りがして幸せな気分になるんです。
男女の恋愛の炎を燃え上がらせるといわれていました。
春の日にキャベツ畑に男女が集う会が昔あり、相手が自分の結婚相手にふさわしいかどうかの占いをして、キャベツを引っこ抜いて、土の量が多いと伴侶はお金持ち、少ないと貧乏人、根っこが太ければいい男、細ければ貧相な男、という事で占いをするそうです。
日本の場合はそういった伝承はあったと思いますが、忘れられてしまったようで伝わってきていないです。

キャベツのもっているキャベジンはs-メチルメチオニンは胃だけでなくて腸にも正してくれます。
キャベツに含まれるビタミンは豊富でB1、B2は肝機能を補強したり保護してくれるのではないかという事で注目されました。
蒸して食べるとビタミン類の損傷がほとんどないです。
生だとお腹が膨れてガスがたまったりします、食べ慣れていないと不要なガスが出てきてしまいます。

野菜に興味を持つようになったのは100%妻の影響です。
妻は有機無農薬で野菜を育てているので、虫、雑草が多くなってしまってめんどうをみてほしいということになり野菜の触れる機会が多くなり、野菜について調べ始めているうちに面白くなってしまいました。
野菜は人の歩みと共に形、味も変わりました。
自分の身を守るため、特殊な畑という環境で生きるために自分たちの体を作り変えてきました。
レタスも毒草でした。
阿片、モルヒネが治療で使えない場合は、野生のレタスを使うぐらい麻酔の効果がありました。
土で育てたレタスはちょっと苦みがありますが、そこに含まれているラクチュコピクリンは苦みの元で麻薬性物質になっていて虫の害から自分を守ろという事を堅持しています。
2年ぐらい前に帯状疱疹になってご飯が食べられなくなって、野菜なら食べられて私は最近では8割以上は野菜でほかに肉、魚などを食べています。