2019年12月5日木曜日

吉野彰(ノーベル賞受賞者)        ・私の平成史

吉野彰(ノーベル賞受賞者)        ・私の平成史
「リチウムイオン電池発明者が語る第四次革命と日本」という題名での講演。
生まれは昭和23年、大学卒後昭和47旭化成に入社 。
色々な研究を手掛けてきました。
リチウムイオン電池の研究テーマは入社後4番目のテーマになります。
着手したのは1981年33歳の時でした。
山場が1988年~1990年でした。
その後リチウムイオン電池を世の中に出してモバイルIT社会に繋がってきた訳です。
携帯電話スマートフォン、ラップトップ、パソコン、IT機器の電源として広く使われるようになりました。
平成元年にリチウムイオン電池が生まれて、新元号になり又新しいステップに向かって動いて行くことになると思います。

これまで人類は3つの産業革命を経験してきています。
第一次産業革命はジェームズ・ワットによる蒸気機関の発明によって、機械化産業が生まれてくる。(18世紀半ばごろ)
第二次産業革命は機械化技術が発展していろんなものが大量生産されて安く一般の手元に届く。(19世紀半ばごろ)
第三次産業革命は現在のモバイルIT社会です。
一般の人が明らかに実感するようになったのが、1995年だと思います。(ウインドウズ95)この時にリチウムイオン電池が大きく貢献しました。
これから迎える大きな産業革命を第四次産業革命と称していますが、具体的にどんな社会になるのかまだ誰も判っていません。
IOT、AIといった技術がさらに進化して新しい社会が生まれてくると思います。
内閣府が使ってる言葉が「超スマート社会」という風になっています。

リチウムイオン電池の研究がスタートしたのが1981年(昭和57年)でした。
私を含めて1981年の人にとって現在のモバイルIT社会は誰も想像していませんでした。
1985年にリチウムイオン電池の原型となるものができました。(4年目)
世の中に出せるレベルまで到達するのに又5年がかかりました。
1991年に商品化しようという事になりました。
しばらく全く売れませんでした。
1995年からモバイルIT社会が動き出しはじめ、携帯電話、スマートフォン、ラップトップ、パソコンなどに使われ始め現在に至りました。
リチウムイオン電池は平成の元号とともに生まれ育って新しい元号と共に次の使命に向かっているという事です。

第四次産業革命はET革命が最適ではないのかなと思っています。
Eはエンバイロメント(environment) アンド エナジー(energy)です。
これが第四次産業革命の大きなキーワードになってくると思います。
その時にリチウムイオン電池がどうかかわっていくのかという事をこれから話していきたいと思います。
ここ数年、マーケットの構図に大きな変化が出てきています。
2010年世界で20ギガワット/アワーに相当するリチウムイオン電池が生産されて出荷されています。
99.9%がモバイルIT機器向けです。
車載用の新しい用途が生まれかけてきました。
2017年に大きな変化がありモバイルIT向けと車載向けが逆転しています。
2018年には車載向けがモバイルIT向けの1.5倍というぐらいの数字が出てくると思います。

2025年までの姿は大体出てきています。
車載用が急激に増えていってモバイルIT向けのほぼ10倍になると予想されています。
500ギガワット/アワーに相当するリチウムイオン電池が車に搭載されます。
電気自動車の生産比率はまだ15%に過ぎません。
85%はガソリンを主体として内燃機関の車が走っているという事になります。
世界で内燃機関の車はやめようという動きがあり、ドイツで2030年、イギリス、フランス、中国では2040年、日本では2050年という目標を立てています。
100%にしようとするとリチウムイオン電池資源が無くなってきます。
リチウム、コバルトなども言われていますが、一番厳しいのがニッケルです。
より安く、より容量を上げるためにコバルト、マンガンからニッケルに移行してきています。
ニッケルの最大用途がステンレスです。

未来を予測するうえで非常に参考になる言葉がありバズワード(buzzword)という言葉です。
1985年から1995年にかけてバズワードという言葉が氾濫しました。
マルチメディアという言葉も同様でした。
第四次産業革命でどんな社会が生まれるかのか誰も判りませんが、1995年あたりとよく似ていると思います。
現在氾濫している言葉にEモビリティー、AI,IOT、セルフドライビングカー、カーシェアリング、コネクティッドカーなどなどがありますが、二つのバズワードが重要視されています。
①ケース(CASE)
ケースのC コネクティッド(なにかとなにかを繋ぐ)
ケースのA オートモナス(無人自動運転という意味です)
ケースのS シェアリング(共有)
ケースのE エレトロニック(
車が電動化されインターネットで世界中の車が情報を共有するようになる。
車は人が運転するものではない。

②マース(MaaS mobility as a service)
M モビリティー(移動手段)
aa as a
S サービス
これまで車は移動手段として使っていたが、これからは車を使ってどんなシステム、どんなビジネスを生み出してゆくのかと言う事が重要だという意味です。
私はAIEVが適切ではないかと思っています。
AIはartificial intelligence 人工知能
EVはelectric vehicle  電気自動車
人工知能化された電気自動車、こういうものが生まれてくると第二のシナリオが出てくる。
マイカーという事があり得なくなる。
交通渋滞が無くなる。
駐車場のスペースが有効利用できる。
巨大な蓄電システムが出来上がると発電所の絶対数が相当減る。
再生可能なエネルギーが受け入れやすくなる。
地球環境に優しいという事に貢献して、エンドユーザーの費用負担がどんと減る、1/7になる。

地球環境に優しい製品はどうしても値段が上がってしまうのが現在の状況でこれでは普及しない。
両立した技術が今後生まれてきて、両立した技術だけが残ってゆくと思います。
実現すると社会が一変します。
一般的に車は年間1万km走り、90万円払ってると思います。
タクシーに切り替えても変わりません。
無人自動運転になると運転手のコストがどんと減り、電動化されるとガソリン代が減って年間12万円ぐらいになります。
車をシェアリングするとなると車の稼働率が上がるので、長期耐久性が非常に大事になってきます。(10倍走ることになる)

CO2の問題、車から吐き出されるCO2は高々14,5%です。
車をゼロエミッションにしても15%ぐらいしか減りません。
車と発電所が連動してCO2のリダクションに繋がっていかないといけません。
自浄可能社会を実現させるんですよというのが一番大きなミッションだと思います。
普及させるためには地球環境への貢献と個人費用負担の軽減、この二つを両立させないといけない。
そのためにはAI、IOTという概念だと思っています。
そう言ったことを真剣に議論しないといけないと思います。