東儀博昭(宮内庁式部職楽部首席楽長) ・【にっぽんの音】
能楽師狂言方 大藏基誠
筑前琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶と区別して、楽琵琶と言います。
横にして弾きます。
足の上に楽器を載せて構えて上からばちで弾くのが特徴です
4弦を上からかき鳴らすので低音です。
この琵琶は代々家に伝わってきた琵琶で、修復して使っています。
この琵琶は200~300年と聞いています。
舞いもあります。
陵王(りょうおう)の舞い、面を付けて赤い衣装で煌びやかな衣装です。
中国の長慶は美男子で顔が端正で、戦いの時に士気が上がらないと云うことで、おっかない形相の面を付けて戦いを挑んで勝ったことを表した舞いだそうです。
面の裏に綺麗な色彩で虹色の様な塗りが入っている。
千里を駆けるときには、光速で走ると、物理学的には虹色に見えることが最近分かって、こんなところにも細かい色彩の技が入っている、凄いなあと思います。
赤い衣装、左舞いには赤を基調としています。
舞楽には左方、右方に別れていて、左が赤、金、太陽、右が青、銀、月と別れています。
「没日還午楽」 出てくるときに、ぐるぐる円を描いてでてくるが太陽を金のごとく円で表す、舞いぶりの良さ、構成の素晴らしさを持っている。
これが日本の各神社でも普及して行く。
陵王(りょうおう)は左方独特の特徴的な舞です。
左からでて来て、出る足は左足から、左回りと決まっている。
右方は右からでて来て、出る足は右足から、右回りと決まっている。
左方は旋律に合せる、右方はテンポに合わせると云うふうに区別されている。
神様への奉納行事なので、狂言などでは神様から遠いほうの足から出なさいと教わってるが、そういった処も雅楽から来ているのかもしれない。
大きな太鼓が左右にあります。(鼉太鼓(だだいこ))
非常に迫力のある音。
舞楽の時に打つ楽器です。
「鼉(だ)」と云う生き物の皮を貼ったと云うことなんですが、「鼉」と云うものが夜中に時を告げるという鳴き声を模したのが、鼉太鼓だと言われます。
つづみのように張って、あげバチ(16本)で締めあげて音を調整します。
舞楽は自分の好きなように見て貰うのが一番いいと思います。
「胡徳楽 (ことくらく)」と言う演目は観客から笑ってもらえました。
お偉い所に接待されたものが自分で徳利のおおきなものと盃を持って上ろうの席から勧めて行くときに、その間に盗み飲みをして自分が酔っぱらってしまって、その光景が面白い。
舞楽は堅苦しいと思われないで色んな見方をしていいと思います。
「胡徳楽 (ことくらく)」の舞いはアドリブ的なものが多々あります。
*雅楽「納曽利 破(なそりのは)」朝鮮系統 右方の舞いの曲(テンポの曲)
二匹の竜が舞い遊ぶさまを表したもの。
一人舞のときには『落蹲(らくそん)』]一人舞を『納曽利(なそり)』と呼んでます。
平安時代にはつがい舞いとして舞われました。
相撲や馬くらべなどで、左が勝った時には「蘭陵王(らんりょうおう)」、右が勝ったら「納曽利(なそり)」を舞って勝利を祝ったと云うようなことも伝えられています。
高麗笛、篳篥(ひちりき)、鼉太鼓(だだいこ)、鉦鼓(しょうこ)、三ノ鼓 で構成しています。
50年雅楽に携わってきました。
先輩たちがどのように振りなど編み出したのか、探求することにわくわくする気持ちが有ります。
草木の風になびくさま、動物の仕草、自然界の現象などを垣間見て、さりげ無く取り入れ組み込んで優雅につくりあげたものを、当時どのような立場で回想していったのかという気持ちを察すると、なかなか楽しく思って取り組んでいる次第です。
深く知れば知るほど流石だなあと思います。
歌舞伎、三番叟の前に雅楽が有ってその前はどうなんだろうと突き詰めて行くことなども面白いと思います。
雅楽の名人、音が響き渡る、そして心にも、舞楽、腰を落ちつけて美味く足の所作が出来ると、綺麗な舞が舞える。
日本の舞いの所作は腰を落とす。
日本の音、間の音、静けさの音、まさに日本の音ではないかと思います。
聞こえない音はまさにいい感覚をもった音だと思います。
シーンと間を取る音、これは日本の音だと思います。
薪がパチンと割れる音、風のそよぐ音、などもいいですね。
神楽歌 「千歳」
天皇陛下の即位の後の祝宴の儀において、雅楽の演奏が4日間行われたことが有ります。
「太平楽」
太食 (たいしき) 調で新楽の中曲。朝小子 (ちょうこし) ・武昌楽・合歓塩 (がっかえん) からなる合成曲。舞は四人舞。即位の大礼のあとなどに演じる。番舞 (つがいまい) は陪臚 (ばいろ) など。武昌破陣楽。
一番豪華な舞い。
衣裳も相当重いし2時間かかり大変です。
探究心を持ってやっていきたいと思います。
*『越天楽』(えてんらく)