佐久間レイ(声優・劇作家) ・【ママ深夜便☆ことばの贈りもの】声は、心の扉を開く鍵
NHK「今日の料理ビギナーズ」のハツ江おばあちゃんを初め、「それいけアンパンマン」のわたこさん、「魔女の宅急便」のジジなど数々の作品に出演してきた人気声優です。 東京都出身で現在56歳、シングルマザーとして娘さんのことを大事に考えはぐぐんできたと言います。 子育てや心のケアなどをテーマに自ら活動している佐久間さん、これまでの経験をどのように受け止め伝えようとしているのか、伺いました。
「今日の料理ビギナーズ」は今年で15年目、NHKのEテレとNHK総合で放送中。 料理を伝えるだけだったら、今はいろんなデータがありそれを見た方が早いかもしれないが、短いなかにアニメーションを入れ込んだり、心の栄養剤みたいなそういう役割かなと思ったりします。 ホッとする場所でありたいと思っています。 ハツ江おばあちゃんは78歳であるんだけれどもお酒を飲んでますね。 娘のとし子がいてあまり料理はしなくて、でも優しく包んだりしています。 食材を買いに行っているところから料理なんですよね。食事って、おいしくて、嬉しくて、楽しくて食事だと思います。
17歳の時にNHK音楽番組「レッツゴーヤング」に出演。 サンデーズのメンバーでした。 バレエとかピアノとか慣れていて舞台が好きでした。 ソフトの部活で骨折したりして、高校卒業した後はどうするんだろうと自分で考えました。 そうしたら舞台とかに対する気持ちがワーッと盛り上がってきて、たまたまうちの近くの劇作家の先生のところに女優さんになりたいと言いに行きました。 サンデーズのオーディションがあるので、受けてみたらと言われました。 サンデーズのメンバーなることが出来ました。 NHKホールで歌わせて頂いたりしていましたが、そこでまた迷いが生じて、 体調を崩したりして辞めさせていただきました。 声優の方々に誘っていただき、行ってみたら声優の仕事が面白かったです。 自分の姿を皆さんに見ていただいてする仕事が恥ずかしいんですね。 吹き替え、アニメーションなど、全然ちがうものとして生きるとき、物凄くおもしろかった。 やってる役がヒットしても誰も気が付かない、それが心地よかった。 キャラクターのおおもとの性格みたいなところだけを捉えて、捉えるコツは好きになる事なんです、悪役でもどっか愛すべきところがあるんです。
結婚して子供が出来て、2歳の時に頑張るだけ頑張ってみましたが、その後娘と二人になりましたが、大変は大変でしたが、私は却って仕事があることが救われました。 仕事で離れたりすると娘が恋しくて、跳んでくると疲れなんか飛んでしまいます。 落ち込んでも仕事の仲間が助けてくれたりしました。 私のストレスから娘もストレスを抱えるようになり、急な動作をしたり、幼稚園でも拒食症のような状況になり、幼稚園の園長先生から「よかったね。」と言われて、「エッ」と言ったら、チック症(本人の意思とは関係なく(不随意)・急に(突発的に)運動や発声が反復して起こる病態で、それぞれ運動性チック、音声チックと呼ばれます。 心理的なストレスや、遺伝子や脳の機能障害がチックの発症に関与すると報告されています。)が出たりする状況を、要は肯定してくれました。 いろんなストレスがあって彼女はそれを外に表現して、表現できるようになったねと、もっとため込んでいたらもっととんでもない事になる、ちょっと余裕が出来てきてママ私つらかったよと言ってくれている。 外へ出したんだ、バランスとっているんだと思えたら、気持ちが明るくなりました。
或る時電車のなかで凄く動きが出ちゃって、押さえたら、娘が「これ治る?」って言ったんで、「悲しい思いをしたけれどきっと治るよ」と言ったら、娘が「治んなくても可愛い?」って聞いてきて、その一言はハンマーで殴られたように、私の心のなかのすべてに光を当てて包み隠さず自分で見るようになりました。 電車の中の出来事の時には抱きしめてしまいました、「治らなくても可愛い」って。 自分のせいで子供がこうなってしまったことを見たくないから、でもそこをしっかり向き合わなければいけない、一緒に越えて行かなければいけないと思いました。
回りのお母さんたちは見て見ぬ振りをしていましたが、「発表会などで変な動きをしてしまってごめんね」と言ったら、みんなが「そんなことはないよ」と言ってくれました。 アンパンマンのように、今までなんで助けを求めることをしかったんだろうと思いました。 小学校の頃にはほぼ治って行きました。 拒食症も親指大のおにぎりを大きな皿に一個載せて渡したら、「これだけ?」と言って食べてお代わりを要望してきました。 嬉しい楽しい食事はそれからのスタートになりました。 食は心を癒すこともできるし、あっという間に治りました。
気が付いたら「今日の料理ビギナーズ」は今年で15年目になってしまっていました。 ハツ江おばあちゃんとはご縁だと思います。 人とのかかわりで一番難しいのは、心を開いていただくことです。 心の扉が開いてくれると、講演などでちょっと難しい話があっても聞いてくれます。 ハツ江おばあちゃんとかキャラクターの声は心の扉が開いてくれるカギだと思っています。 「見えないへその緒」という作品がありますが、見えないへその緒は男性、女性、いくつだろうが、心を育てる。 見えないへその緒で愛情を送って育てるというのが、誰にでもできるんだよと。 大人同士でも繋がれる。 今自分にできる事をやっていけたら、相手も生きるし、自分も生きるような気がします。