伊香修吾(演出家) ・【夜明けのオペラ】
岩手県で生まれ、盛岡で高校時代を過ごした伊香さんは東京大学経済学部を卒業し、大学院経済学研究科修士課程修了、新国立劇場を経て、英国ミドルセックス大学大学院舞台演出科修士課程修了、英国ロイヤルオペラ、ウィーン国立歌劇場・ウイーンフォルクスオーパー、ザルツブルク音楽祭などで研鑽を積み、15年間ヨーロッパで過ごしました。 日本に帰国後は日生劇場やラ・ボエーム、びわ湖ホール、ドンジョバンニなどの演出を担当、又他ジャンルとのコラボレーションにも積極的に取り組み、能楽師、狂言師が参加した『オペラ@能楽堂』は東京、パリ、ジュネーブ、チューリッヒ、ローザンヌで上演されています。
2017年のラ・ボエームはミミが世を去った後に残された5人のボヘミアンたちが、且つての青春時代を回想するという形で演出をするという事をしましたが、2021年はコロナで同じようにはできないという事情があり、2017年とは正反対のような演出でやってみました。
オペラとの出会いは、大学に入る前1年浪人していた時期に、親戚の人にオペラに連れて行ってもらいました。 オペラは嫌いなものに属していましたが、素晴らし体験になって一晩で人生が変わってしまったと思います。(上野の文化会館で見る。) 大学ではオペラを自主上演しようというサークルが出来ていて、すぐ入って活動を始めました。 すべて自前でやるという事でした。 自分はヴァイオリンを弾いていましたが、そのうち歌の方もやるようになりました。 大学院へ行って引き続き経済の勉強をしました。 興味があったのは難民問題、環境問題で大学院では環境経済学を学びました。 国連の職員になりたいとは思ったんですが、オペラ熱が自分の中で高まって行って、オペラでなんとか食べて行けないかという思いになりました。 劇場に勤めれば好きなところで生活が出来て、生活も安定するだろうと思いました。 新国立劇場に就職することになりました。
*「コウモリ」の序曲 ヨハン・シュトラウス2世が1874年に作曲
小学校4年生からヴァイオリンを習い始めました。 中学校を卒業するまで先生について習いました。 並行して長音の勉強もしました。 歌も小学校時代から好きでした。 クラシック音楽と出会ったのはFMラジオでした。 CDが出てきた当時でお小遣いを溜めては好きなCDを購入していました。 バロック音楽が好きで、はまってしまったのはヴィヴァルディの「四季」です。
*「四季」から「春」
新国立劇場に就職してオペラを見る機会が増えました。 演出というものがある事に気付きました。(26,7歳) 新国立劇場に来日していたイギリスの演出家のデイヴィッド・エドワーズさんに相談したら、ロンドンに来て勉強したらどうかと言われて新国立劇場を退職してロンドンに行くことにしました。 3月31日まで働いて4月1日にロンドンに向かいました。 芝居の基礎から勉強してみたいと思ったので、大変有意義な時間でした。 自分がオペラに入るきっかけとなった「コウモリ」の演出家のロベルト ヘルツルさん?のアシスタントをする機会が得られて、ウイーンに行くことを勧められウイーンに行く事になりました。 本当にご縁には恵まれたなと思っています。
来年はワーグナーのオペラを演出する予定になっています。 演出家としてはその作品が何を言っているかという事を間違いのない形でお客様に判っていただくことが大事なことだと思います。
*「コウモリ」の第三幕のフィナーレ