2019年9月10日火曜日

小林快次(北海道大学総合博物館教授)   ・ハヤブサの目で恐竜を探す

小林快次(北海道大学総合博物館教授)   ・ハヤブサの目で恐竜を探す
砂漠や平原などでよく恐竜の化石を見つけ出すことから、「サルコンアイ」ハヤブサの目を持つ化石ハンターといわれ、今回の恐竜博で展示されているデイノケイルス、ムカワリュウの二つの注目される恐竜の発見にも深くかかわっています。
小林さんの恐竜発見の話を伺います。

国立科学博物館の恐竜博2019の会場に来ています。
デイノケイルスは1960年代に発見されましたが腕だけ見つかっていました。
2,4mという巨大な腕で、2006年、2009年に私たちの調査で全身骨格が発見されで全貌が判りました。
頭からしっぽの先まで11mという摩訶不思議な恐竜のいい所をとった不思議な恐竜として復活しました。
高さは5mあります。
植物を食べていた優しい恐竜で、ゴビ砂漠で発見されました。
3体の骨格を使って作っています。
ムカワリュウ、北海道むかわ町から発見された全身骨格です。
これも8mはあります。
植物を食べていた恐竜の仲間です。
白亜紀(1億年~6600万年前)の恐竜でデイノケイルスよりもさらに優しい恐竜です。
デイノケイルス、ムカワリュウは約7000万年前の恐竜になります。
恐竜が絶滅したのが6600万年前で、その直前に生きていた恐竜です。
最初アマチュアの方がしっぽを見つけて、その後2013年2014年に大規模な発掘調査で全身発掘しました。
日本の歴史にとっても非常に大きな発見となっています。
デイノニクスという恐竜も提示されていますが50年前に研究された恐竜です。
恐竜の現代型の研究がスタートしたのが50年前です。
デイノニクスは獰猛な肉食恐竜です。

子どもの時は恐竜少年ではなくて仏像少年でした。
福井県生まれで、お寺が結構ありました。
化石との出会いは突然でした。
中学校の時にクラブ活動で理科クラブでいろんな化石が出て、行ってみようというのが最初のきっかけでした。
アンモナイトを取りに行ったが、採れなくて悔しくて今につながっています。
福井県は新世代の地層で、葉っぱ、貝の化石はでますが、アンモナイトはなかなか見つかりません。
泥だらけの石をたたいて、出たときの喜びは大きかったです。
最初4人で始めていますが、最後はわたし一人になってしまいました。
釘とかなずちで工夫をして夜な夜な石をたたいていました。
高校の時には化石からは離れていましたが、地元の博物館が恐竜を探そうとの誘いを受けて化石の発掘に参加するようになりました。
その時発掘に来ていた横浜国立大学の長谷川先生のところにつくことになりました。

その後本格的にという事でアメリカに行きました。
1年間英語の勉強をしているうちに、自分の足で歩いて自信のある何かを身に付けたいという事で19歳で初めて恐竜をやりたいと急に思い立ちました。
恐竜図鑑を見てふっと思いました。
熱心さが全く違って必死にやりました。
今この瞬間を無駄にしないで生きるというような映画に出会って、勉強も自分が考えられること全部やりました。
クラスで一番の成績を取るようになりました。
恐竜研究は実際には凄く地味です、一歩一歩歩いて地道に探すしかないです。
見つからない喜びの作戦を立てていて、砂漠には必ず化石があるという前提に立って探して、見つからないとだめという訳ではなくて、見つかる確率が高くなる、見つからないと明日見つかる確率が高くなる。
見つからないほど次の日が楽しみになる。
ゴビ砂漠など調査に50年間も人が入っているので、あえて人の歩かないところを歩くようにしています。

地層にはそれぞれストーリーがあり当時の風景を岩が語りかけてくれます。
恐竜の化石の全体の7,8割はイギリス、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、中国、モンゴル、この6つの国から出てきています。
特に乾燥地帯が多いです。
恐竜研究は判らないことだらけです、やればやるほどわからなくなる。
知らないという事をいえる勇気があるという事は自分の知識を増やす非常にいいきっかけになるので、私は知らないことは知らないというようにしています。
恐竜は嫌われることはなくて、2割ぐらいは恐竜が好きな人がいて、恐竜を嫌いという人はあまりいない。
世界には存在しない生物だが過去には生きていて、興味を沸かせる題材だと思っています。

恐竜は私たち人間にメッセージを発していると思います。
6600万年前隕石が落ちることで恐竜は、地球上から姿を消すが、いまは大量絶滅の真っ最中といわれています。
生命の歴史のなかで38億年ありますが、その間に壊滅的な絶滅が5回あったと言われます。
一番最近の絶滅が6600万年前で、第6の絶滅があってそれが現代だといわれています。
温暖化、プラスチック問題など実は人間の存在がほかの生物を絶滅に追いやっていて、これまでの5回の絶滅よりも早くこの地球上から生物がいなくなっている。
2億5000万年前は地球上の9割の生物がいなくなったといわれるが、それよりも早く現代の生物はこの地球からいなくなっているといわれています。
残念ながら止める手立てはないです。

付けが回って最終的にはわたしたち人類の絶滅に繋がる。
かなり早い時期に来てもおかしくないと思います。
70数億人がいて、地球を圧迫してほかの生物がいなくなっているが、人間が繁殖してしまった原因で地球が壊れています。
人間は恐竜のように絶滅してしまうのか、人間らしく絶滅を伸ばす延命行為をするのかという事があると思います。
人間には知能があるので一丸となって何か活動すれば一気に環境は変わると思います。
日常出来ることを一人でも多くの人が協力してやることによって、1秒、1分・・・1000年、1万年という延命行為につながる。
環境と、ほかの動植物と共生して生活できるのが一番理想だと思います。
恐竜の絶滅が私たち人間に警告を出していて、今だからこそ考えてみようというのが、恐竜を研究していて感じるメッセージです。
8,9月はモンゴルに行って発掘調査をしています。