荒井伸也(元スーパーマーケット社長・作家) ・"社畜"から抜け出せ
81歳、1960年大学を卒業して大手商社に入社した荒井さんは人事部で仕事をしていましたが、大きな組織の中で手ごたえが感じられませんでした。
燃えるような仕事ができないかという事で荒井さんが見つけたのは、当時赤字が続いていた子会社のスーパーマーケットでした。
自ら進んで手を挙げた荒井さんは出向し、従業員と対話を重ねながら赤字を克服、大手の食品スーパーマーケットに育て上げました。
親会社の商社からは再三戻るように声が掛かりましたが、これを断り、スーパーマーケットの社長を務めました。
荒井さんは小説も執筆し、「小説スーパーマーケット」は映画「スーパーの女」の原作にもなりました。
子会社での生き方にこだわり、赤字から脱却させた経営手腕とは、小説で訴えようとしたことはなにか、伺いました。
昭和35年(1960年)大手商社に入社しました。
大手商社に入ると海外に行けると思いました。(英語、フランス語が出来たので)
総務部、人事部で衝撃を受けて、そのまま10年間人事部にいました。
女子社員の教育は知的生産があるが、もっと仕事がしたいとうつうつとしていました。
何か面白い仕事がしたいと思いました。
「社畜」、サラリーマンが会社に飼われた家畜みたいになっちゃっているんです。
自分自身が社畜の様で、面白くなかったです、何のために生きているのかと思いました。
苦労してもいいから、面白いことをやりたいと思いました。
街中で、すぐそばの店を通り過ぎてわざわざ遠い店に行くお客達がいて、どうしてなのかと問いかけると、生鮮食品の鮮度がいいということでした。
その店を見に行き比較しました。
鮮度の違いが明確に判りました。
自分で試してみたくなりました。
会社に願い出て、子会社に行くことを決意しました。
当時は子会社に行くと言うことは、サラリーマンのなれのはてで、小会社に行ったらもうおしまいという意味でしたので、子会社に行くことをなんとか避けたいと言う時代でした。
親友たちは止めてくれましたが、結局行きました。
商社がスーパーに進出した第一号なんですが、黒字にならなくて 7年間放っておかれました。
管理職が自分の時代に赤字を出したくないので放っておかれていた。
仕事ぶりが全く駄目でした。
意志を伝えることができない、ちゃんと聞いてくれない所でした。
バックが大商社なので潰れないと、15店舗までの拡大がみとめられていたなど、危機感が無かった。
商品の鮮度も全然駄目だった。
どんないいものを出しても2,3日たてばどんどん鮮度が落ちて来る。
色が悪くなったり、日付が古くなるとパックをやりなおして、日付を新しくしていたので、それを全部なくそうと提案しました。
鮮度を保つための技術、冷たい空気の流れを作る事が重要だが、使っていたケース自体に問題があり、ケースを入れ替えることまでやって何とかなりました。
ケースの性能、陳列の仕方、出し方が重要。
商品の流れをつくる難しさがある。
ベテランはなかなか聞いてくれないので、従業員の若い連中と仲良くなるようにということで、毎晩飲んで話をして仲良くなりまして、段々話を聞いてくれるようになりました。
技術的問題と人間的問題の両方を並行して解決しないと良くならないので、かなり気長にやりました。
関西のスーパーマーケットに行って見て、鮮度が良くて、なんとかコンタクトを取って親切に教えてもらいました。
数年間経ってから売り場が良くなってきました。
モニターの方から色々教えてもらって、問題点を克服してゆき良くなってきました。
黒字になったのは4,5年でした。
スーパーマーケットの難しさと面白さを体験しました。
親会社としては良くやったと言う事で戻って欲しいと言うことで、厚遇を示してきました。
現場の方が面白いと思っていたので、抵抗しましたが、ついに戻される方向に行きましたが、親会社を辞めてスーパーマーケットに飛び込んでいきました。
安土敏というペンネームで小説を書きました。
「小説スーパーマーケット」
日々の人間関係の体験が色濃く反映されている。
中学の終わりごろから高等学校ではうんと書きたいと思った。
現場に行くと現場の数だけ書ける。
一番下の人の情報を中間、上に出来るだけいい形、理解できるよう形に持ちあげると言うことがすごく重要だと思っています。
映画「スーパーの女」の原作にもなる。(伊丹十三による脚本・監督作品。)
私はスーパーマーケットに出会えてよかったなあと思います。
お客様が求めているのは、例えばスーパーマーケットに求めるのは今晩のおかずだとか、明日の弁当の事とか、それが何なのかと一生懸命考えればおのずと答えは出て来ると思います。
目の前の問題を一つずつ解決していけばそれでいいんじゃないかと思います。
現場の問題を変えようと思ったら現場から出発するしかない、だから現場が面白いし現場を経験することが大切だと思う。