柴田美保子(女優) ・古事記をうたう -神話のふるさとから-
大阪市出身、1965年NHKのドラマ「チコちゃん日記」の主役でデビュー、その後映画やTVで活躍、1972年に脚本家の市川 森一(いちかわ しんいち)さんと結婚されました。
市川さんは大河ドラマ、「黄金の日日」「山河燃ゆ」「花の乱」など数々の大ヒット作品を世に送りだしましたが、晩年、ライフワークの一つにしていたのが古事記の普及でした。
柴田さんはその遺志を継ぎ、市川本、古事記の語り部として全国で活躍中です。
小学校1年生の時に児童劇団に入り、高校1年生の時に大阪NHKでオーディションがあり受けないかとの話があり、受けてみたら受かりました。
NHKのドラマ「チコちゃん日記」の主役でデビューしました。
チコちゃんの成長を追う1年間の青春ドラマです。
月曜日から土曜日まで毎日6時半から20分間放送されました。
「マキちゃん日記」という子供番組で脚本を書いていた市川 森一(いちかわ しんいち)と知り合い、市川が31歳、私が24歳の時に結婚しました。
40年間連れ添い、2011年12月に70歳で亡くなりました。
最初夫は『快獣ブースカ』『ウルトラマンシリーズ』の子供番組を書いていましたが、
その後大河ドラマ、「黄金の日日」「山河燃ゆ」「花の乱」などを世に送り、晩年、ライフワークの一つにしていたのが「古事記」のドラマ化でした。
バブル崩壊などで不安定な時代となり、日本、日本人の行く末に危機感を感じていました。
脚本家として、日本人の精神と文化の原点である「古事記」から現代人が学ぶことが多いのではないかとドラマ化に取り組みました。
2005年から2007年の3年間に渡ってNHKラジオオーディオドラマとして放送されました。
「自分の国の歴史を大事にしない国は滅びる。自分の国の建国の歴史を知らない民族は消滅する。と言われているが今の日本がまさにそれに近づいているのではないか、一体日本人は何処へ行ってしまうのか。古事記には私達祖先の生きざま、ありよう、考え方が書かれている。 それは今の私達に受け継がれて、文化、芸術、芸能、生活、思想など全ての基になっている。日本人の原点が書かれている「古事記」から今の私たちは改めて学ぶことが多くあるのではないか。・・・」
2012年古事記編纂1300年という記念の年に古事記の舞台化を企画していました。
律令の設定 大宝律令によって確立した。
歴史書 国史
一国の形が形成する上で民族が共有する固有の文化は無くてははならない。
711年(和同4年)天武天皇が国史の撰録(せんろく)を命じる。
太 安万侶(おお の やすまろ)が勅命を受ける。
各地に伝承される民話や古き言葉の編纂に取り組みました。
こうしてできたのが「古事記」です。
民族の原点探しでした。
1300年を経てどのように日本を形成してきたのか。
古事記は日本の全ての催事、祭りの根本がそうであるように、死と再生を歌いあげるドラマなのです、歴史ロマン大作です。
夫は企画書を書いただけで、自分の手で上演する事が出来なかったので、夫の夢を実現するために夫の妹の市川愉味子と上演活動を始めました。
2013年に神話ミュージッカル「ドラマティック古事記」を宮崎で初めて上演、2015年には第二作目を2016年には第三作目を上演しました。
一人がたりでも「古事記」の公演活動をさせてもらっています。
「古事記」は日本人の宝だと市川は言っています。
第一作目「始まりの始まり」 原作:市川 森一(いちかわ しんいち) 台本:市川愉味子
音楽:松本俊行 神話絵画:マークエステル
『この世の初め、気が遠くなるような昔々の事でございます。 ・・・高天原というところがありました。・・・呼び出されたのが「伊邪那岐命(いざなきのみこと)」と「伊邪那美命(いざなみのみこと)」、という神様でした。・・・天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)は言いました、「この漂える地上世界を美しい姿に整え固めよ」・・・鉾の先から滴り落ちた塩のしずくが固まり、積もり積もって幾つもの島が生まれて行きました。・・・こうして私達が住む大八島(おおやしま)がこの世に誕生したのでございます。・・・時が流れ太陽神「あまてらす」、月の神「つくよみ」、大海原を治める「すさのう」これらの兄弟神のお陰でつつがなく収められていました。・・・「すさのう」聞かん気の甘えん坊で大層我ままでした。 黄泉の国に去った母「いざなみ」が恋しいと駄々をこね赤子のように泣きます。
「すさのう」の大泣きが青々とした大地が枯れ木の荒れ野になるまで泣き枯らします。
・・・悪神、悪霊が湧きい出てあらゆる災いが同時に起こってきました。
・・・「すさのう」を追放しました。・・・「すさのう」は大喜び、高天原を目指して駆け昇って行きました。・・・「あまてらす」と「すさのう」は競い合いが繰り広げ会います。・・・「あまてらす」の口から漏れ出た息が虹色の霧となって天空に羽ばたいていきます。・・・次々と生まれい出たのはみ柱の清らかな女神達でございます。・・・「すさのう」は首飾りを惜しげもなくガリガリ噛砕き、息を吐き出します。 すると五柱の立派な男神が次々と生まれい出たのでございます。・・・「すさのう」は目も当てられぬ乱暴を働いたのです。・・・止め立てするものは誰もいなかったのです。・・・混乱のさなか、一人のおり姫が身体を突かれ命を落としてしまいました。・・・「あまてらす」は岩屋の扉を封印してとうとう一人奥深くに閉じこもってしまいました。
・・・「あまてらす」が去った後の世界は全てが真っ暗な闇に包まれてしまいました。神々は「すさのう」を捉えて牢獄に閉じ込めましたが、「あまてらす」は戻ってきません。・・・絶望の淵に立たされてしまいます。・・・「あまてらす」はひたすら悲しみに心を静めていますと、自らの光も弱弱しく薄れて行くようです。・・・そんな「あまてらす」に時空のかなたから呼びかけて来る声がありました。・・・その声は亡き母「いざなみ」でありました。・・・「いざなみ」は語りかけて行きます。そなたが居なく有った後の世界がどうなっているか見せてあげましょう。・・・天界も下界も暗闇に包まれてしまった、闇を喜ぶ悪神、悪霊が躍り出て疫病がはびこり、食べ物も育たぬ不毛の地になったのだ、気の毒なことだ。・・・「あめのうずめ」が踊り狂い、神々も囃したて「あまてらす」に戻って欲しい思い一心の祭りなのです。・・・「すさのう」は高天原を乗っ取ろうという野心は無く、姉に無心に甘えたかっただけの事、有頂天の余り心を踏み外した愚かな子。・・・とらわれの身を晒している。・・・母「いざなみ」の諭しに「あまてらす」のかたくなな心も次第にほどけて行きます。・・・「あめのうずめ」は言います、今より闇の夜をあまねく照らし希望の神として生まれ変わります。・・・さあ「たじからおう」天岩屋の扉を開けよ。』