本多京子(医学博士・管理栄養士) ・”ダウンサイジング”で身軽に生きる
1948年 東京生まれ 実践女子大学家政学部を卒業したあと、東京医科大学に進み、医学博士号を取得した本多さんは、これまでに栄養と健康に関する著書60冊以上出版してきたほか、TVや雑誌などでのレシピ作りやアドバイス、プロ野球を始めスポーツ選手に対する栄養指導を行う等、食育の第一線で活躍を続けてきました。
本多さんは最近自宅を1/3にダウンサイジング、これに合わせて、身の廻りのものも1/3に減らしました。
老後に備えてのダウンサイジング、その狙いは何か、そこから得たものは何か、本多さんが管理栄養士として歩んできた道を交えて伺いました。
長生きをせざるを得ない時代になったので、身の丈に合った暮らしをストレスなく送って行きたいと思った。
今まで3階建ての全てを使っていたが、1/3にして残りの2/3部分を、貸して減らない財布を作ろうかなと思った。
一番大事なのはものを処理しようとか、暮らしを小さくしようと思っても、どこから手を付けていいかわからないので、これからの人生自分がどういう風に何を一番大切にして生きていきたいかをしっかり考える事だと思った。
私は食が一番大事なので、台所がどこからも見えるように家の真ん中にあるが、設計士からは本当にこれでいいのかと言われた。
出掛ける時も、火の始末、水、電気などを一望に判るし、料理をしながら他のことをしていても火の心配が無い。
1/3にするために、いろんなものを来てくださる方に声をかけて、持って行ってもらったり、被災地の知り合いの方NPOの方々に生かしていただく様に本とか食器などを利用してもらったりする。
貰ってもらうのに3年掛かった。
食器、フォーク、ナイフ、スプーンなどは山の様に有ったし、家具なども結構あった。
家に来てもらって食べてもらうのが好きで、食器類6人分のものは残すことにした。
写真 アルバム 等は本箱を整理するときに、どうしてもとっておきたいものだけを剥がして、小さな木箱に入るものだけを選んだ。
書籍もいっぱいあったが、本箱は1/5ぐらいになった。
自分の今後の仕事の在り方にも、整理するときに感じました。
最初にピックアップしたのは辞書で、相手(NPOとか)が役に立つものだろうと思われるものを次に選んで少なくしていった。
今後は自分が積み上げた経験を世の中の役に立てる種類になるのではないかと思った。
自分が積み上げた仕事のファイルが、一番の財産なのかと思ったので、本箱には並べてある。
幼稚園、小学校から高校までは学校が嫌いだった、仕方が無く学校にいっていた。
一人の世界が好きだった。
母の意向で大学を選んで大学に入って大学の授業を聞く様になって、勉強ってなんて面白いんだろうと思った。
化学が面白かった、先生との出会いが良かったと思う。
どの授業も最前列で全ての講義を聞いていた。
自分の未来を照らすような指導して下さる先生に出会えたという事は人生最大の宝だと思います。
知らないことが判ることが一番楽しい。
何故だろう、どうしてだろうと思う事を勉強するようになって、色々やってみたら楽しさが判った。
料理と科学との兼ね合い、面白い世界だなあと大学生の時に体感した。
聞いただけだと時間とともに薄れてゆくが、教えて頂いた事をやってみたり、さらに工夫を重ねたりすることによって、もっと知りたくなったりして、勉強することの楽しさがある。
出会った教授が、「今あなたが勉強している事を社会にどういう風に役立てたいか」という論文を書くときに、色々考えて、病気と栄養とのかかわりに興味が有って、実習にも行ったが、結論は就職するのはやめようと思った。
こういう食になればこういう病気にやがてなるだろうと、いうことが医学的に判っているのに、どうしてなっちゃった人を治療するのだろう、なる前の人の啓蒙活動することにお金を注いだり、活動をするところが無いんだろうかと、思っていた。
病気にならない人を作る為に、栄養学でどんな仕事が成り立つだろうかと、自分で切り開いていこうかと考えた。
教授が後押しをしてくださった。
栄養学の背景には医学的な要素が有るので、予防医学的な栄養学の分野を切り開くには、医学の世界の勉強をしなければいけないというのが先生の考えなので、医学部を目指した。
千葉大学食品微生物教室で食べものと細菌の関係の研究をして、早稲田大学の体育生理学教室
でスポーツと健康の関係をやっていて、栄養とスポーツをテーマで勉強したいと思って、研究員を7,8年して、東京医科大学介護学教室に入って博士論文を作る事にした。(コラーゲン代謝について)
水を除いた人間の体を構成する固形成分の一番多いのがタンパク質で、そのうち比率が多いのがコラーゲン。
骨などもコラーゲンが基本になっている。
歳を取るに従って、代謝が鈍くなって古いコラーゲンを使い続けると、架橋が起きて、皮膚が弾力が無くなりしわが深くなる。
代謝の謎を解く研究をしました。
生活習慣病は食原病でもある、自分の体質を知り、食習慣が大事で、啓蒙活動が大事なので、知り合いの編集長から本を出しなさいと言う事から本を出版するようになり、60冊以上になる。
講演会にも呼んでくださったりして、どんどん広がって行った。
スポーツ栄養学を導入する事を、プロ野球の球団から依頼が有り、選手の献立を作るとか、選手を支えているご婦人たちに栄養学を勉強してもらったりした。
他のスポーツの色々な選手が強くなるためにはトレーニングも大事だが、トレーニングを支えていい成果を出すためには、基本的な食生活が大事だという事が選手の方も判ってきて、そういう仕事もたくさんしました。
あまりに世の中が便利になって作らなくても食べられる時代になって、何にも考えなくても24時間食べものが売られている時代になったので、弊害、栄養の偏りができてしまって、メタボになって、やがて脳梗塞、心筋梗塞、心不全になるのが判っているのに、今何でもないので気がつかない、という時代になってしまって、食が意識しないで生きていけるのが問題なのかなと思います。
歳を取ると基礎代謝が下がってゆくが、必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルは減らない。
カロリーの摂り過ぎは押さえながら栄養はきちっと摂る事が大事で、賢く摂ることが大事。
栄養とカロリーは違うので、栄養はちゃんと摂ってカロリーは控えるという事が大事。
自分で料理するという事が脳の老化を防止する事に凄くつながると思う。
料理は段取りが凄く大事で、自分で段取りをして自分で料理して自分で食べることが、一番意識しないとできなくなるので、意識する事が大事です。
自分でやってみることが大事で、美味しいという背景、味が濃い薄いとかこくが有るとか無いとか感じたりする、美味しいという背景の見えないものが見えてくる。
砂糖、塩、油は生活習慣病の元凶なので、自分で作る時には砂糖、塩、油を減らして、なおかつ美味しくするためにはどうしたらいいのかなあと、工夫する事、実践する事で、自分で作ったものは美味しくなるはずです。
水野南北の言葉
「食は命なり、運命なり」 私の好きな言葉です。
食が自分の健康、命を支えているだけでなく、ものの見方を変えたり、それによって運命が変わったりする。