鈴木比佐雄(出版社代表・詩人) ・優れた詩人たちを育てたい
東京都荒川区に生まれる。法政大学文学部哲学科卒業。1987年、詩誌「コールサック」(石炭袋)を創刊。
詩作を続けている詩人たちの作品を紙面に載せ、詩の精神を後世に伝えたいとの願いからでした。
2006年には法人化し、これまでに詩集、評論集、芸術書など100数十冊発行しています。
なかでも『原爆詩一八一人集』、『大空襲三一〇人詩集』など公募作品を元にしたアンソロジー選集は大きな反響を呼びました。
鈴木さんは日本現代詩人会の理事、宮沢賢治学会の会員でもあり、広報活動を通じて新しい詩人の発掘にも努めています。
詩的な精神を皆さん持っているので、大半の人は詩人だと思います。
詩の言葉は個人言語、内面、肉体のリズムの中から生まれてくるものなので、それに気づけば詩が書けるはずなんですね。
詩という方法で芸術作品として残すことは感動を他の人に伝えられる有効な方法なんですね。
感動を伝達させるのが、詩の大きな役割かと思います。
石炭屋の息子だったので、高校生になるまでほとんど本を読んだ記憶がなかった。
山谷の近くだったので、働いている人たちが真っ黒になった、そういう人たちのために、薪と一緒に上に石炭を入れて石炭風呂を焚いて、その人たちの汗を流させると言う事が私の仕事だった。
6年の時と中学校3年生の時に、会社がつぶれて、高校生のころには毎日、本を1~2冊読むようになり、1年後には哲学書を読むようになった。
本格的に詩を書き始めたのは大学生になってからです。
弟が亡くなったこともあり、人間の内面を見つめる、不安、絶望、死、神だとか、考えたいと思って哲学に入った。
詩と哲学は非常に似ているなと思った。
「水泡-隅田川公園にて」 30代後半の作品
東京大空襲と関連する詩。
本質的なものが立ち現われて来て呼びかけられて、自分のリズムではあるが、亡くなった死者だとか、そういう人たちの思いが乗り移った形で、詩が生まれてくる、そういう書き方です。
「コールサック」(石炭袋)の由来 最も尊敬する宮沢賢治が書かれた、「銀河鉄道の夜」 9章にジョバンニとカンパネルナの会話があって、「白鳥座の向こうに石炭袋が有る」という場面があるが、宮沢賢治が語ろうとしたのは、ブラックホールであるのだが異次元の入り口、幸福の入り口の様なイメージが有って、宮沢賢治の精神を後世に伝える様な出版社を作りたいと思ったと同時に、石炭屋の息子だったので、ダブルイメージで「コールサック」(石炭袋)という名前の雑誌を32歳のころに作った。
詩論を書いていて、多くの詩人たちが応援してくれた要因になった。
原爆を経験した国民なので、原爆は落とされたけど決して復讐をしない、そういう悲劇を二度と繰り返さない世界を作ろうとする精神が、戦後史の根本にあって、そういう詩人たちの詩を結集して後世に残すべきではないかと評論を書いていたが、実現するためには出版社を作るしかないと思う様になった。
『原爆詩一八一人集』2007年に刊行
1997年に浜田知章さん 詩人 戦後広島に行き、原爆の悲劇を世界中に伝えて、原爆のない世界を作って行こうと原爆詩運動を提唱した人物で、「コールサック」社を応援してくれた。
鳴海英吉さん シベリアに抑留された詩人 この人も「コールサック」社を応援してくれた。
峠三吉さん
『にんげんをかえせ』
ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ
被爆者ではないが、原爆詩を書いている詩人たちが沢山いる。 新川和江さん
181人のうち50名ぐらいが被爆体験の詩人で、残りの人は被爆経験はないが、原爆詩を書いている作品を集めて、日本語版、英語版を作って2007年に出しました。
世界の空襲、空爆の詩を集めて、2009年に実現しました。 『大空襲三一〇人詩集』
『鎮魂詩四〇四人集』
鎮魂は日本の文学の重要なテーマで柿本人麻呂から始まっている、「妻を悼む」(挽歌)
鎮魂詩は詩の大きなテーマでもある。
現代の万葉集みたいなものを作りたいと思っていた。
「コールサック」で共通のテーマを提示して公募する。
詩人の感受性をしっかり受け止めてあげて、詩人たちが自分とは何かという事に対してアドバイスが出来ると思う。
「生き抜くための歌六十八人詩集」 自殺予防のための詩集と考えてアンソロジーを出した。
詩はある意味で生きるエネルギーをもう一度取り戻せる効果はあると思う。
自分の感受性から始まる、小さな自己から始まって詩を展開してゆく事で、本来的な自己に向かって行って、様々な他者(自然、事物)を発見してゆく、出来れば最後は他者の幸せを願う詩に向かっていけばいいなあと思う。
受けた感動を他者に伝えることが、詩の大きな効果だと思う。
若松丈太郎さんがいて、40年前から福島原発が危険だと言う事で「神隠しされた街」(福島原発が爆発したらどうなるかというシュミレーションした)という詩が有る。
2011年即 「命が危ない 311人詩集」 2012年「脱原発・自然エネルギー218人詩集」出版。
2017年 に「原爆詩 一八一人集」から10年になるので、181人だったものを300人ぐらいに拡大して世界中の海外に詩人と交流しているので、「原爆詩 300人集」の日本語版、英語版を作ってみたい。
詩の世界を活性化させていきたいと思っている。