2011年8月19日金曜日

入間田宣夫 (歴史遺産科教授)   ・平泉を想う

入間田宣夫  (東北工科芸術大学歴史遺産科教授)  平泉を想う 
開山は寺伝では円仁 (慈覚大師) とされるが、実質的な開祖は藤原清衡である
藤原清衡の前半生は兄弟・親族が相争うもので、多くの近親者の死を目の当たりにしてきた
戦いに明け暮れた前半生を省み、戦没者の追善とともに、造寺造仏、写経の功徳により、自己の極楽往生を願ってのことであったと推測されている
世界遺産に登録する場合の基準がいろいろ有るが、そのうちの2つの基準に有っている
①平泉の寺院と浄土庭園、庭園が日本独特、アジアから伝わった庭の概念 日本に入ってくるといわゆる浄土庭園という独特のスタイルに変わって来て、日本にしかない庭園の形になる 
その庭園の形が後々の日本の庭園の鎌倉時代の庭園の形に影響を与える  
中国やインドなんかの池というのは真四角 (人工的 建物も同じ)大陸は四角四面の世界 処が日本に入ってくると何とも言えない曲線を持った
池の形になってくる  建物も自然にマッチする形になってくる

②日本の庭園をみると日本在来の自然に対する信仰、思いとそれから向こうから伝わってきた仏教、浄土思想が融合合体、混ざり合っていると云う事が一番の理由でしょうか  
人間が住んでいる我々の世界を仏様の住む世界と同じような理想の国にする事が仏国土 
浄土というのは実は少し違っていて 阿弥陀如来がお住まいになっている
人間の世界からずーっと向こうの何十億光年か判らないがそういったところに西方極楽浄土という 
浄土というのは限りなく清らかなけがれの無い土地という意味なんですが、ビューティフルであり同時にピースフルでもある楽園に近いイメージなんですけれども それが西の方には阿弥陀極楽浄土 東は東方薬師瑠璃極楽浄土  
本来の仏教の教えですと我々が人生を終えた後そこに往生する そこに行って生まれ変わる 
極楽の場合ですと池のハスの花の上に生まれ変わる
段々この様に極楽の様子を再現して極楽に行ったつもりになると云う考え方が出てきて、例えば敦煌 中国の壁画に阿弥陀様が真ん中にいて沢山の菩薩達がいて、舞台が有って美女が踊りを踊ってと云うあの光景を実は平安時代の後半に敦煌の絵と同じものを作って藤原頼道等はそこに行っては極楽に来た想いをバーチャルリアリティー というかそういう風にする
  
その考え方が平泉に入って来て浄土の様子をそのまんまこの様に実現した無量光院という建物が有るが平等院をもう一回り大きくした  
金慶山という綺麗な形をした山が有ってその山の真東に年に2回太陽が沈む時阿弥陀様が一直線上になるようにお寺を作り 池の中島に藤原秀衛が座る
宇治の平等院よりも進化したもの 無量光院に沈む夕日の風景も世界遺産の一部
従来 箱もの、お宝、美術一辺倒だった 
アンサンブルを認めさせたと云うのが今回の成果だった 
自然とか宗教とか込みにした形のものが認められてきた
日本で最初の武家の都 京都は中国の長安のような幾何学的な形状 中国直輸入  
平泉の作りは東西の軸線で沈む夕日を拝むような形で出来上がっている

極端に言うと武士と仏教が融合合体してできた街 それがそのまま鎌倉に引き継がれる 
江戸も仙台も盛岡も日本の城下町は皆そうなんですが、必ず後ろが有って殿様のご先祖をまつる廟が有って寺町が有る  
博多にチャイナタウンが出来て当時の最新文化を平泉は取り入れた 
本来仏像は金色にする 極楽の建物を表す為には金にしなくてはいけない 
仏教の教えを完全に体現しようと平泉では進めた
金色堂は平泉を作った清衡、基衡、秀衡の三代の御遺体をまつってある 
藤原3代で作ったお寺は2万程度 100年間に次から次へとお寺を作った
お寺って公共事業 税金だけ取って何もしない王様は直ぐに絶える 
平泉自体が京都の単なるローカルバージョンじゃなくてむしろ日本の歴史の転換点であった 
平泉は京都のなれの果てでは無くて鎌倉や江戸のお兄さん

仏教の思想は平和思想 生きとし、いけるもの 人間であれ、動物であれ、植物であれ 豊かなもの、富めるもの 老人子供女皆 仏教の前では平等
清衡の場合にはこれまでの戦争の時代を平和の時代に切り替えたいという思いから、巨大な寺院を作り その寺院のかたわらに金色堂を作った
お堂にかけた巨大な鐘が有って、鐘の文句が凄くって「この音が三千世界に響き渡る 鐘が響きわたるたんびにこれまでの命を奪われた生きとし、いけるもの、特に度重なる戦争で死んだ人たちの怨みを持った魂が鐘の音の力で洗い清められて極楽に行けるように天皇や日本国全体の人々が極楽に行けます様に、と云うよな事を鐘に書いてある 
梵鐘は無いが梵鐘の文句は「中尊寺落慶供養願文」に残っている  
人類平和 強く押し出した ・・・平泉が世界に対しての使命かなと思う