2023年12月19日火曜日

入船亭扇辰(落語家)          ・江戸の夢、江戸への憧れ

入船亭扇辰(落語家)          ・江戸の夢、江戸への憧れ 

入船亭扇辰さんは、様々な理由でなかなか演じられない珍しい落語の演目を取り上げて、現代の高座で演じるという活動をしています。 今夜はそのうち最近手掛けた劇作家の宇野信夫さんの原作の落語、「江戸の夢」に関する話を中心に、様々な理由で長い間演じられていなかったものを世に問う事のご苦労や愉しみ、学びを伺います。 復刻活動を通じて扇辰さんが感じた江戸落語の世界や先輩たちへの憧れ、将来への思いなどもお聞きください。

古典落語でも長く演じられてこなかった珍しい話を復刻して高座にかけている、そればかりではないが。  「なす娘」は最近です。 入船亭扇橋師匠から教わりました。 若干怪談ぽいところがあります。 劇作家の宇野信夫さんは歌舞伎や狂言の作者として有名です。 若いころから歌舞伎作者として成功していた。 戦後は長らく上演されていなかった近松門左衛門の「曽根崎心中」を復刻、脚色、演出して、今演じられている「曽根崎心中」は宇野信夫さんの脚色がほとんどです。  のちに国立劇場の理事になっています。 昭和の黙阿弥と称されたようです。 戦前舞台劇の台本として書いたのが「江戸の夢」と言う作品です。 

「江戸の夢」 今の静岡県の庄屋夫婦の一人娘がどこの馬の骨とも判らない奉公人と所帯を持つという話ですが、奉公人の正体が最後に判る。  円生師匠がやるために、芝居のために書いた脚本を落語風にアレンジして、それを円生師匠が公演していました。  庄屋が自分の古女房と孫が出来る前に、一度江戸見物がしてみたい、という土地としての江戸に対するあこがれ、と言う夢も含んでいるんじゃないかと思います。 この話は悪人は出てきませんが他に「井戸の茶碗」「徂徠豆腐」「高野高尾」など善人だけが出てくる。 これらは全部落語ではないんですね。 講釈だから悪人が出てこない。 落語は大概悪いものが主人公だったりする。 

円生師匠が亡くなった年、高校1年の時に、NHKの追悼番組で「江戸の夢」を流しました。録音して繰り返し聞いていました。  それが「江戸の夢」との出会いです。 2009年に立川志の輔師匠が挑戦しているという事です。(ネタ帳から) 柳家小満ん師匠もやっています。 公演は稀です。 作者がはっきりしている時には上演の許可をするのにご挨拶に伺ったりしなければいけないので、それが上演機会が少ない一番大きな理由だと思います。著作権を誰が持っているのか皆目わからないことがあります。   名古屋での打ち上げの時に奥山恭子先生が「「江戸の夢」をやりたいんだったらつてがありますよ。」と突然言われました。  宇野先生の次男の方に手紙を出しました。  ご快諾いただき公演しましたが、自分としては出来がいまいちでした。  数年後にもう一遍やり直したいと思って、やったのが去年あたりです。 それからやるようになりました。 

江戸落語と言っても、明治、大正時代の出来事が入って居たり、いろんな時代が混じっています。  廓話等は良く残っている方だと思います。  廓話がやりにくくなったと言いますが、男尊女卑、売春が認められていたころに対する、お客さんの反感と言うわけではないかもしれないが、この時代はやりづらいと言う意味のやりずらさだと思います。 受けないですね。 「五人廻し」は私は名作だと思いますが、この4,5年「五人廻し」を3回やって、馬鹿蹴られしました。

演じられていな方と言うのはそれなりに欠点があって、あんまりおもしろくはない。   又最後まで聞いて下されば面白いんだけれど、前半押し込みの部分が長いとか、あります。 判らない単語が出てきたりする。(「へっつい」とか)  これからは厳しいなあというネタも結構あります。  「紫檀楼古木(したんろうふるき)」と言う話も円生師匠と先代の正蔵師匠が主におやりになっていた話ですかね。  お弟子さんたちも持ちネタとしては持っているが、やる機会はゼロに近いのではないでしょうか。  手がけてみようと思ってやったら気に入って、よくやるようになりました。  若い人も増えて新作落語を多くやるようにもなって来ました。