2023年12月17日日曜日

辻口博啓(パティシエ、ショコラティエ) ・〔美味しい仕事人〕 スイーツを究める

辻口博啓(パティシエ、ショコラティエ) ・〔美味しい仕事人〕 スイーツを究める 

辻口さんは「クープ・デュ・モンド」をはじめスイーツの世界的な数々のコンテストで優勝経験を持ち、現在も挑戦を続けています。 東京を始め全国で13のブランドを展開、スイーツの多様で奥深い世界を表現しています。 スイーツの次の時代を担う人達のためのスイーツの専門学校を運営するなど、後継者の育成など力を注いでいます。 スイーツを作るこんないい仕事はない、だってお客さんがみんな笑顔になる、パティシエは多くの人々の記念日を見ることができるんだと語り、スイーツをさらに極めて行こうと日々取り組んでいる辻口さんに伺いました。

クリスマスの季節を迎えますが、夏ごろからデザインとか作って味を見たりだとか、写真撮りなど、秋には全部終わらせて、パンフレットつくりに入って、これからは実際作らなければいけないので、スタッフの配置をどうしてゆくのか、考えてゆきます。 スタッフもクリスマスを越えると成長してゆきます。 

チョコレートはチョコレートの専門の厨房が必要で、カステラはカステレの専門の厨房が必要で、専門性を特化するために増やしてきました。  一つ一つの工程にいろんな意味合いを持っています。   素材をどう生かしてゆくかと言う事を常に考えながらやっています。   カカオ農園を今ペルーで購入して、オーガニックのカカオをのいろんな工程を研究しながら、要は素材に対する研究と、加工してゆく研究を一貫して今やっています。  発酵工程において、いろんな味わいを現場で付けることができるので、ファームで板チョコにしましょうというコンセプトで、より個性的なものが出来るので展開しています。 

「サロン・デュ・ショコラ パリ」(ショコラの品評会)で最高評価のゴールドタブレット(金賞)を受賞。 今年も受賞することが出来ました。 テーマが「琉球」(沖縄)    沖縄は塩もいろいろ違うし、黒糖もいろいろ違うし、こんなに豊かなんだと思いました。  そこから沖縄の料理に興味を持って、歴史を遡ると琉球王朝があって、意味のある素材だし、世界に向けて素材を発信するという事は良いことだと思いました。 今回テーマを「琉球」という事にして高評価を得ました。 「豆腐よう」(豆腐を使った沖縄独自の発酵食品)と合わせたチョコレートなんてまず存在しなかった。 非常に面白いコンセプトだという事でテレビに取り上げられて、メチャクチャ売れました。 波照間島産の黒糖、石垣島産の塩を使用しました。 島胡椒も素晴らしい素材でした。 島胡椒とハイビスカス(花が枯れた茎の部分)を使って作りました。  チョコレートとも凄く合います。

カカオは天日に弱いので、バナナを植えて影を上手く利用して、そばにカカオを植えるんです。 カカオがなるまでに3,4年かかります。 バナナは一年で実がなるので、バナナで生計を立てながらカカオが成るまで待ちます。 バナナとチョコレートは相性がいいです。ペアリングイベントをうちでやったんですが、アマダイのうろこ揚げとりんごのドリンクがよく合います。(りんごのタルト(洋菓子)を食べてみるみたいな感じ。) 

23歳の時に全国洋菓子技術コンクールで優勝、副賞がフランス旅行で初めてフランスに行きました。 日本のお菓子のレベルの低さを痛感しました。 フランス菓子に目覚めました。 素材を前面に出すお菓子つくりを目指したいと思いました。 会社では朝の6時から夜12時ごろまで仕事をして、寮に帰ってそこの厨房で明け方3時ぐらいまでコンクールの練習をしたりいろいろな練習をしました。 コンクールでは2000人ぐらいが参加します。 1位になるには何かしら違う。 翌年も優勝するためには、その気配を消しながらいい部分は残しつつ、創造的な破壊をするわけです。 

1994年:「コンクール・シャルル・プルースト」 で銀メダル受賞 フランスの砂糖の生成度合いは悪くて、飴細工が出来ないという状況になって、精製が必要だという事で女性用ストッキングを買って10枚ぐらいのところに、煮たてた砂糖を入れて濾して、それをいっぱい作りだめしました。  砂糖の購入費用がかさんで、お菓子屋さんの厨房は借りられなくなりました。 トイレの床が石で出来ていたので、綺麗に磨き上げてそこで飴細工は作りました。(コンクールでは飴は食べない) 

1995年:「クープ・ド・フランス インターナショナル杯」 優勝    1991年から日本予選が始まりました。 1、2位までが参加できます。   その時には私は2位でしたが、「クープ・ド・フランス インターナショナル杯」 では優勝できました。  美味しいものに対する情熱の火を消してはいけないと思っています。         

2012年4月:石川県金沢市に「スーパースイーツ製菓専門学校」(学校法人国際ビジネス学院)開校、学校長に就任しました。 後輩たちには自分がやっている後ろ姿は見せますが、質問しない限りはなるべく陰から支えてゆくことが、その子にとってもいいのかなあと思います。 

2015年NHK朝ドラ「まれ」 パティシエを目指して成長してゆく物語。 私の自叙伝を上手く女性版として表現という事で,NHKの高橋さんから話がありました。 私は和菓子屋の3代目で小さいころから和菓子屋さんになるんだと思っていました。 小学校3年生の時に友人の誕生会に呼ばれて、生クリームタイプのショートケーキが出てきて、その美味しさにびっくりしました。  その友達のお母さんから「辻口君の家にはこんなに美味しいケーキはないでしょう。」と言われ、ぐっと我慢しました。 自分でも感動するものを作ってみたいと思いました。  今はスタッフは300人ぐらいいます。