屋猛司(邑久光明園入所者自治会会長) ・〔人権インタビューシリーズ〕 解剖記録から考える人権侵害
ハンセン病はらい菌による感染病です。 感染力は非常に弱いにも関わらず、国は療養所を作り強制隔離しました。 この隔離政策によって恐ろしい病気だと誤った認識が広まって入所者やその家族はいわれのいない差別、偏見を受けてきました。 3年前から各地のハンセン病療養所で入所者の遺体の解剖記録が残されていたという事が相次いで明らかになりました。 療養所の一つ岡山県の邑久光明園で入所者自治会会長を務める屋猛司さんは療養所に残された1123人の解剖記録を元に差別の実態を広く伝えようとしています。
入所者の遺体の解剖記録が何のために残されていたのか、判らない。 検証物件にはいいかもしれない。 昔は40から50畳の霊安塔がありそこでお通夜をやっていました。 隣に解剖室がありました。 ホルマリンで保管していました。(49体) 1123人の解剖記録についての調査は2020年10月から2022年11月までのおよそ2年間行われました。 調査を通じて判ってきた事実を元に屋さんは、療養所で暮らす人たちが何故解剖を断れなかったのか、語ってくれました。
大学の医学生の研修生の勉強のために解剖していました。 ハンセン病で亡くなる事はなく、他の病気で亡くなるので、それでみんな了解します。 本人の同意が確認されたのは7人だけです。 本人の署名が付いていたのは2通のみでした。 まともな承諾の状況とは違います。 昭和50年代にやっと反対する方も出てきました。 人権侵害と言う事は当時は判らなかった。 今はあちこちに行って勉強はさせて貰っていますが。 僕の場合は解剖させてほしいという事はなかったです。 もし言われたら、判っている病気だったら、何もそうする事はないと思います。
昭和49年に入所しました。(32歳) 大坂から船で来ました。 古い木造の8人部屋の暗い部屋でした。 これで人生終わったかなと言うような思いでした。 家族には迷惑を掛けたくないという思いで入りました。 家族には迷惑を掛けたくないという事で名前を変えて入っている人もいます。 亡くなっても偽名で亡くなっています。 それだけ偏見、差別があるという事です。 国はハンセン病は怖いものだと流布して、それを信用するわけです。 隔離政策そのものが人権侵害です。 夫婦もカーテン一枚で同居されていて、ほとんど人権を奪われていた。(子供を産ませない。) 納骨堂があり亡くなっても地元には帰れない。 人生のすべてを奪ったというのが国の強制収容、政府の罪ですね。 小学校5,6年生ぐらいから人権問題について、ハンセン病問題を基本として、これからも出てくるであろう感染症について認識して、人権について国、皆さんが判るようになれば人権について世界に通じる日本になるだろうと思うので、子供の時から勉強させてゆくことが大事です。
今年全国ハンセン病療養所入所者協議会の会長に就任。 国立ハンセン病療養所は全国に13あり、入所者が10月現在で764人、平均年齢が88歳。 国、自治体との話し合いが必要です。 偏見、差別がないのが理想ですが、理性との問題だと思います。 人権意識の核となる部分は、自分を大事にしなければいけないと思う。 親を、友達を大事にしていって、広がって行けば、それでいい。 どこにでも好き嫌いがあるから、いじめとかが出てくる。 自分を大事にしていったら、それは押さえて行けると思うが。