2023年12月9日土曜日

高尾均(年賀状研究家)         ・4万枚のコレクションが語るもの

高尾均(年賀状研究家)         ・4万枚のコレクションが語るもの 

高尾さんは京都市内で長く印刷業を営み、その後研究を重ねた年賀状の知識を買われ、国内トップクラスの年賀状印刷メーカーから招かれました。  現在も顧問を務めるなど40年近く年賀状ビジネスに関わっています。 研究のために集めた年賀状は4万枚以上、年賀状以外の絵葉書も含めると5万枚以上のコレクションを持っています。 コレクションを拝見しながら年賀状の変遷と収集の魅力、年賀状のこれからをお聞きしました。

私は印刷業をやっていまして、年賀状に力を入れてやってきましたが、2000年ごろ自分のデザインと他を比べてみるとみんな同じだと感じました。  明治のころの年賀状がある事に気が付いて、それを材料にしてデザインを作ることを始めました。  2005年に神田の古本屋さんで明治から大正にかけて年賀状を1万枚以上コレクションしているものと出会いました。 7,8年かけて購入しました。 明治30,40年代に入ってかなり高級な印刷の年賀状があり、大正になると品質が悪くなり、昭和にはいると子供の年賀状が出てきます。   面白いと思ってはまってしまいました。  

聖徳太子のころ、中国から暦が入ってきて、新しい年の初めに宮廷でお祝いをするという事が始まりかなと思っています。 正倉院に新年の縁起の良い文章を書いたものが中国から送られてきたという事があって、「新しい年を迎えて良かった、益々栄えてゆくように」と言うよな事が書かれていました。  往来もの(手紙が往来するもの)の始まりが新年の挨拶から始まっています。 それを年賀状だという人は多いんですが、私は新年の拶は時候の挨拶で、新年のお祝いを開くからこないかと言うようなものなので、違うなあと思います。  年賀状が出てくるのは江戸時代かなと思います。  細川山城守立則が柳生播磨守に出したものがあります。  もう一通ありますが、内容はほとんど同じで、文例集があったのではないかと思います。  江戸時代の中期にはお坊さんとか知識階級の間では、新年の挨拶をする習慣があったようです。 庶民が出すようになったのは江戸時代の終わりごろの様です。 

近代郵便制度が始まったのは明治4年です。 明治6年に官製はがきが出来ました。(二つ折り) 現在のような形になったのが明治8年です。  年賀状を出すのは商売人が多かったようです。(明治10年ごろ) 筆で書いていたので簡単な文章になって行った。 明治13年から商社が海外の仕入れ先に出した年賀状が結構綺麗な年賀状になっています。   年始状、年頭状とかという呼び名で明治30年代まで続いています。 年賀状と言う言葉が使われたのは明治33年です。  日露戦争があり、外地との手紙のやりとりが増えて行きました。 絵葉書ブームが出てきます。  明治33年から元旦配達が始まる。 元旦配達が全国に行き渡ったのが明治40年です。  明治33,4年のころは3000万枚程度で、明治38年に1億枚、明治40年には4億枚になる。 綺麗な絵の年賀状が作られるようになる。 絵葉書屋の商売が成り立つようになる。 

大正時代に入ると女性、子供が年賀状を出すようになる。 昭和に入って子供たちのための絵葉書が作られるようになる。  昭和12年8億5000万枚。(日中戦争勃発)   その後極端に減ってゆく。 昭和16年には元旦配達が中止となる 2000数百万枚になる。 お年玉付き年賀はがきは昭和24年です。 大阪の林正治さんがアイディアが浮かび逓信省に話を持ち込んで、お年玉付き年賀はがきの発行につながったと言われています。  当時は、はがき代が2円で寄付金として1円、1,5倍となってしまうが、結局やろうという事になる。  特等がミシン、1等が純毛の洋服地、2等が学童用グローブなど6等までありました。  特等の前後として残念賞があり5万円当たった。 最初1億8000万枚、翌年は倍出した。 ピークは2003年(平成15年)44億6000万枚に近い。(発行された はがき) 印刷ミスとか手元に一杯残るので、私は1等が何回か当たったことがあります。 

大正時代の年賀状で家族の写真の年賀状を作っている。 そのほかいろいろ面白い年賀状も今日持ってきました。  年賀状の作り方も変わって来ました。 パソコン、プリンター、デジカメが普及して、家族の年賀状が増えて行きました。 スマホが登場して年賀状の世界がまた変わりました。  ヨーロッパでは1900年前後から年賀状の交換がかなり盛んになりました。 ニューイヤーカードはたくさん作られました。  第一次世界大戦で、ドイツで印刷されていたが、段々すたれていった。  

4,5年前から家庭の年賀状も減って来て。2023年の発行は16億4000万枚、2024年用は14億8000万枚発行されています。  今は画像を送ることが簡単になり、写真によるコミュニケーションが年賀状から離れて行っている。 若い人も年賀状の挨拶からラインでの挨拶にしようという風潮になってきて急激に減ってきています。  年賀状エンジョイ派、年賀状義務人情派、年賀状無用論派の3つのグループに分かれている。  本当に送りたい人への年賀状はそうは減らないと思います。