2023年12月23日土曜日

犬童一心(映画監督/CMディレクター) ・〔わたしの人生手帖〕

犬童一心(映画監督/CMディレクター) ・〔わたしの人生手帖

犬童さんと言いますと、星野源さん主演の「引っ越し大名」や野村萬斎さん主演の「のぼうの城」などいわゆる痛快時代劇を思い出すという方も多いと思います。 犬童一心さんは1960年東京都生まれ、63歳です。 高校時代から自主制作を始め、大学卒業後CM製作会社に就職する一方、映画製作を続けました。 1996年大阪を舞台に女性漫才コンビの環境を描く「二人が喋っている」が「サンダンスフィルムフェスティバルイン東京」でグランプリ、日本映画監督協会新人賞を受賞しました。 その後も劇場映画監督として、「メゾン・ド・ヒミコ」や「眉山」など良質な作品を発表し続けています。 長い歴史を持つ映画雑誌で作風はしなやかなまなざしで人生と青春を見つめる俊英と高い評価を得ています。 犬童監督はどの様な興味から映画に関心を持ったのでしょうか。 また映画を作るうえでの心情はどのようなものなのかなどについてお話を伺いました。 

間取りがどうなっているかとか、凄く興味があります。 日々の生活の中でどのように暮らすかという事を考えるのが好きですね。 撮影の時に考えていることも実はそれなんですね。 撮影シーンの中で人間がどう動くのか、セットの位置なども考えるのが映画監督の様なものなんですね。 動線を考えるというか。 父親が建築業なので小さい時から建築している建物に行ったり、建材のカタログを見ることなど好きでした。 でもあとを継ぐ気はなかったです。  セットも重要ですが、その中でどう人を動かすか、どこでだれが何をするかで、撮影した時の絵が決まってしまうので、始める前にどれだけ想像できるかというようなことが重要だと思います。 高校生から作ってきたのでそれが身になっています。 

1970年は映画会社がつぶれる時代でした。 70年代はテレビでは映画をやる時代でした。 映画が好きになり中学時代から映画を作りたいと思うようになりました。 高校2年生から映画を作り始めます。 映画は収入が不安定すぎると思っていました。 テレビコマーシャルが全盛の時代で、興味はなかったが、CM会社に入り真剣にやりました。 予算とスケジュールで出来ているという事が重要だという事が勉強になりました。  映画は自分が企画を進めて撮ることになっている作品と、依頼された作品があります。  依頼された作品は引き受けられないという作品はあります。 CM会社には定年まで居ました。 映画はCMと違って残るんです。  兼業としてやっていました。 

映画については次はこれをやっておきたいというものがあって、最初の商業映画は二人の女性漫才師の話です。  このころは少女漫画を映像に移し替えられないかと言うっことがベースにありました。  「のぼうの城」は作るのに7年間かかりました。 子供時代に見た面白い時代劇がなくなっていたので、それをもう一回作り直してみたいとか、その時々にやりたい事に合わせて企画して作品を作っていました。  子どもの頃から、映画の出来上がりに対する興味、カットの切り替わりに対する良いものと悪いものを感じました。 子どものころから、沢島忠監督が何故か好きでした。 「引っ越し大名」と言う作品を作りましたが、、沢島忠監督みたいな時代劇を作れないかと思ってやりました。 小学生時代からの延長なんですね。 

俳優が良く見えるように撮りたいという事が一番です。 映画は物語を語ってゆくことが重要です。 カメラは目の前に起こっていることを記録しているだけなんです。  その場が記録することに値するかどうかという感覚で、臨んでいるといった感覚ですかね。 俳優のその人の部分をちゃんと撮れているかどうか。 俳優って、その人がどんな生き方をして来たかという事を全部写るみたいなことはあると思います。 演技が上手いかどうかは半分みたいな。 普段どうしているかという事が結局写っているような、それがちゃんと写っているといい映画になっているという、そういう面があります。

肉親の愛情、友情とか映画の中で過大評価をしているんじゃないかと言うところがあって、普段育ってきた中で刷り込まれた人間関係、こういう事が重要なんだという事に疑ってかかる。 「メゾン・ド・ヒミコ」はゲイの人たちだけの老人ホームの話なんです。 そこにいる人たちの人間関係は非常に重要で、物凄く崇高なものになってゆくという話をやろうとしていました。  小さいころから戦争は何故終わらないんだという事がずっとあったんです。  何でこんなばかばかしいことを大人はやっているんだと小さいころから思っていました。  物心つく頃からずーっとベトナム戦争をやっていました。 根幹にあるのが、国家だとか、家族とかと言うものがどうしてもありました。  家族をまもるためとか ,国の主義主張、そのために人はどんどん死んでいると言う構造、大事にしているものに対する過大評価をしているというか、その時行う行為のために過大評価をしてゆく。 それに使われるのが血のつながりとか、友情、家族とかそういう人間関係、向こうも同じ関係でやって、家族をまもるためとか ,国の主義主張、友情、血縁などです。 構造がどっちもおんなじなんです。 それでずーっとやっている。 大事だと言われている人間関係、主義主張、でも人はどんどん死んでいる。 過大評価に対して疑ってかかる。 

やってみたいのは子供向け娯楽映画とか、ドラマを一回やってみたいと思います。 できれば時代劇で作ってみたい。 時代劇は作ってみると自由度が高いんです。 だれもみていないので 物凄く本当のような嘘もつきやすい。 テーマが発展させられる。 今の世の中にとって重要なのは子供の教育だと思います。 一番いいのは子供にちゃんとお金をかけて、良いことを見てもらい、聞いてもらうと言う事をやってゆく事ではないかと思います。