2022年12月24日土曜日

藤澤和雄(元・JRA調教師)       ・馬を育て 人を育て そして夢を育てる

 藤澤和雄(元・JRA調教師)       ・馬を育て 人を育て そして夢を育てる

1951年(昭和26年)北海道苫小牧市生まれ。  競馬の本場イギリスで技術を身に付けたのち、日本中央競馬会に入り調教助手を経て1987年調教師免許を取得、1998年(昭和63年)に藤澤厩舎を開業しました。  今年定年退職するまでの34年間で最高クラスのG1で34勝を含む優勝126勝歴代2位の1570勝を記録しました。   それまでの常識としてきたことを覆えす藤澤流とも呼ばれた手法で、数多くの名馬とそこにかかわる人材を育ててきました。  

実家が苫小牧で生産牧場をしていました。  修業は最初近所の「青藍牧場」に入りました。 田中良熊さんがイギリスから馬を買って来て、イギリスの厩舎と牧場を紹介してもらって勉強するように言われてイギリスに出発しました。  1年のつもりが面白くて4年ぐらいいました。   馬の調教が面白そうな仕事だと発見したのと、馬を取り扱う人たちの馬に対する話しかけとか、日本と違って素晴らしいと思いました。  朝、「おはよう」から声をかけて顔、首等を撫でて、夜は「良く寝たか」とか話をして、その後頭絡(頭部に取り付ける、馬具または畜産用具の一種)をつけます。  競走馬は凄く神経質な動物で早い動きが一番嫌いなんです。 

日本に戻って来て、日本中央競馬会に入り調教助手をしました。   イギリスで習ってきたこととはずいぶん違いました。  受け入れは余り親切ではありませんでした。     作業は当時男性ばかりで乱暴な人たちが多く居ました。  昭和53年に日本トレーニングセンターが新しくできて、いろいろな人たちとの交流がありました。    実績を残して認めてもらおうと思いました。   馬も鍛錬で鍛え上げるというか、そういう時代でした。  修行で一番勉強になったのは、馬は年齢と共に成長してゆくから、決してせかせない、急がせないという事で、馬は走れない時には𠮟られて走ると故障をしたり、性格も反抗的な馬になってしまうので、身体が十分に出来てから調教ぺースを上げて競争に使ってゆこうという事を習ってきました。  ゆっくりやって行くことに対しては周りからの抵抗はありました。 

集団調教、馬なり調教という言葉がありますが、私は厩舎から出る時には一緒に出て調教場に行って一緒に帰ってくるようにしようと思って始めました。  1時間ぐらい運動するので、調教師も馬も単独だと調教師も飽きてくるし、馬も1頭では心細くて厭がるので、集団で一緒に行って帰って来る。  調教師も集団で行うと馬へ怒ることも、他人の目があるので少なくなります。   しかし当時はあまり理解してもらえず、厳しい声がありました。  トウショウボーイの子供が欲しかったが、貴方は6番目ですねと言われたりしました。(対応が後手に成ったりした。)   オグリキャップで競馬も盛り上がりました。  武豊氏も出てきて時代が変わりかけてきました。 

「目先の一勝より馬の一生」「一勝よりも一生」 1500勝の記念碑に刻まれています。   現役時代にいい管理をした女の子(馬)は牧場に帰ってもいいお母さんになるという事をイギリス時代から習っていたので、この子たちはきっと恩返しをしてくれるという思いでいました。   1995年バブルガムフェローという馬、最優秀3歳というチャンピオンになってさつき賞で勝って、その後骨折、復帰後は天皇賞を目指す。  他の狙うレースでは3000mなので長距離には向かないと思って天皇賞(2000m)を目指しました。      

「幸せな人が幸せな馬を育てる」  イギリスで仕事をしていた時に、嬉しそうには見えないと彼らには見えたようで、「ニコニコして仕事をしろ。」と同僚から言われました。  それでなければいい馬は出来ないよという事です。  最初のころは岡部騎手に馬の仕上がり、馬の出る距離など相談したり、いろいろ教わりました。 

1998年タイキシャトル という馬、 フランスジャック・ル・マロワ賞 その時に乗っていたのは岡部幸雄さん。  シーキングザパールタイキシャトルの2頭が海外のビックレースを勝った。  タイキシャトルはデビューが遅くゲート試験でも2回落ちました。 神経質なタイプでしたが、無理をさせないためにダートが選ばれ、圧勝しました。   逞しくなってG1で勝つようになりました。 

2017年 レイデオロで日本ダービーで優勝。(開業30年目)  19頭目の挑戦。   競馬のゲームが出てきたり、「ウマ娘」という言葉が出てきて最初は判りませんでした。  ファンの雰囲気も変わってきました。   牧場にも沢山いいお父さん、お母さんが輸入されてきているので、子供、孫がいい成績を出して、海外からも日本の馬の血統を欲しいという声も上がっています。  海外のジョッキーも日本の競馬に乗りに来ます。  馬はとても臆病で優しい動物で、子育てに似ているような気がします。  今は1頭の馬を何十人で共同で持とうという仕組みが出来、ずいぶんよくなってきたし、みんなで参加して競馬もみれるので、楽しい方法だと思います。  12月25日に有馬記念があります。