佐伯克美(クロスカントリースキーヤー) ・87歳、銀世界に魅せられて
佐伯さんは今年5月に世界最高齢の現役の女性のクロスカントリースキーヤーとして、ギネス世界記録に認定されまた。 大学生の時にスキーを始めて以来、仕事や子育てをしながら競技を続けてきました。 富山県魚津市を拠点に国内様々な雪山でトレーニングを積み、87歳の今もマスターズ全国大会で優勝するなど、競技者として活躍中です。 佐伯さんのこれまでの歩みと新たな目標、スキーの魅力について伺います。
この小屋は山の友達、スキーの友達が遊びに来て、自由に泊ったり、しゃべったりする出来る空間です。 立山などの山々、田んぼなどの景色が見えます。 冬は真っ白な世界になり、自分たちでコースを作ってクロスカントリースキーをやります。 毎朝1時間は雪の上を友達と一緒に歩きます。 ギネス世界記録に認定されまた。 続けてこれて今日があります。
試合に出るとなると又レベルが違ってくるので、もう1年もう1年と思って続けてきて、それだけの事でしたが、たまたま1年前に北海道のスキーの講習会に出たら、先生が凄いと言って目をつけてくれました。 その先生が 日本冬季マスターズスポーツ協会の理事さんでした。 とんとん拍子に光が当たってしまいました。 私よりも周りの人が吃驚してしまいました。 ジムに通っていますが、ジム仲間からも凄いと言ってくれたり、教員をしていたので昔の教え子たちが喜んでくれました。 有難いことだと思っています。 雪のない時に、滑れるように自分の身体を整えておく、これは毎日の当たり前の基本的な生き方になります。 簡単そうだけど難しいです。 ジムの好きな教室(エアロビクス、ヨガとか)に入ります。 自分に合った緩やかな教室を選びます。 1日、2,3つの教室に入り身体を動かします。 自分の動きに合うようにパーソナルトレーナーに付いて週1回トレーニングを受けています。
11月には立山で一滑りしてきました。 北海道に行って講習会にも行ってきました。 12月にはアルペンスキーの講習会、クロスカントリーの合宿で練習したりしています。 高齢なので前の年と同じことができるかというと、これはとっても厳しい事です。 体力が落ちた分、技術を磨こうと思ってきました。 私は60歳を過ぎてから始めたクロスカントリースキーなので、若い人がやってきたようなベースがないわけですが、努力を重ねて磨いてきました。 今年も滑ってみて去年と同じ様に滑れて、もうちょっと技を磨こうと思っているところです。
スキーを本格的に習い始めたのは大学生の時です。 子供のころから山が好きでした。 冬の山に登る手段としてのスキーを習おうと思いました。 当時は女の子がスキーをするというような時代ではありませんでしたが。 県の選手権などいろいろ試合に出ました。アルペンスキーでしたが、本当にやりたいのは山スキーでした。 教師として中学校に理科の教師として赴任し、そこでスキー部を自分で作りました。 県体に監督として行きました。 定年退職をした60歳の時に、大学のスキー部の先輩がロスカントリースキーをやらないかと誘ってきました。 それからクロスカントリースキーをやるようになりました。 綺麗に整備された斜面を下って来るのがアルペンスキーで、クロスカントリースキーはリフトを使わず裏山を散歩する,農道をで滑って遊べる、スキー場ではないところでスキーが出来る。 小学校の校長のころは子供たちにクロスカントリースキーを指導しました。
女性が結婚すると家のこと、子育てをしなくてはいけないし、教員の仕事もしなければいけない。 玄関を出ると周りには7人の敵がいると思って家を出ました。 姑も教員をしていて、生徒にも親にも慕われる実力のあるいい教員であったのに、女であるという事で管理職にはなれなかった。 私は仕事をきっちりやって管理職になると思って、仕事をしました。 私は家のことは余りせずに、それを姑が支えてくれ深く感謝しています。 子供をおんぶして滑りました。 いつの間にか長男も長女もスキーが上手くなりました。長男は山岳スキーのプロガイドです。 長女は教員ですが、スキーの指導員の資格を持っています。 今から考えるとよく頑張っていたなあと思います。
ちょっと楽しい事、ちょっと出来そうな事、ちょっとみんなが喜んでくれる事、ちょっとプラスのことを考えて行動すると、周りも喜んでくれる、自分も楽しい、そうすれば続けられる。 クロスカントリースキーをやるようになり、新潟の10km大会に出たり、北海道の85kmクロスカントリーの大会に出たりしました。 一方で夫と世界中を歩きました。 世界の山、氷河へスキーを持っていきました。 印象に残っているのは間宮海峡、冬は間宮海峡が凍ります。 間宮海峡を夫と共にクロスカントリー板で渡りました。海外の山へも1,2週間単位で毎年1,2回出かけました。
冬の剣岳に登りたかったが、登れて幸せでした。 一面の銀世界に自分がいる、これは今の自分が楽しめる世界です。 「歳いったからこそ今できることを楽しむ。」これが私のモットーです。 60,70代の若い人たちを誘って散歩スキーをしようと言う回数を増やしたいと思います。 山へ安全に連れて行ける人たちを育てるとともに、魚津市でやっている歩くスキーの楽しむ会を成功させるというのも楽しみの一つです。 富山マスターズのクロスカントリー大会をやろうということになり、第1回目(3km)が行われるので出たいと思っています。 世界大会は5kmですが、出てみたいとも思っています。