2019年1月17日木曜日

森田みさ(司法書士)            ・震災孤児 見守り続けた7年

 森田みさ(司法書士)             ・震災孤児 見守り続けた7年
東日本大震災から今年3月で8年になります。
死者行方不明者は1万8000人に及び、その中には育ち盛りの子供が親を亡くしたケースも少なくありません。
宮城県内で震災後に司法書士が、震災孤児の後見人になって支援する活動を続けています。
震災の翌年から中心となって取り組み始め、今も2人の孤児の後見人を務める森田さんに伺いました。

宮城県では東日本大震災で当時18歳未満の孤児が126人と全国でも最も多かった。
未成年後見、親権者がいなくなってしまった子供の親権者の替わりをする。
裁判所で選任されるが、多くは身近な親族がなるケースが多いです。
財産の金額によって一定数以上の財産がある子に関しては、後見の監督人を付けるとか、司法書士、弁護士など専門職が財産管理の為に一緒に後見人をやるという制度があります。
震災孤児には義援金、亡くなった方の弔慰金、亡くなった方の保険金、色んな種類のお金が入ることになって、親族の方だけで適正な管理ができるかどうか裁判所が慮って、私達のような専門職が後見人になったというケースが沢山あります。
大きいお金があればそのまま預金をお預かりしたり、毎月の生活費で不足があれば里親、親族に渡すとか、大きなお金(教育費など)が掛かる時には相談を受けてこちらからお金をお送りすることがあります。
20歳までですが、成人になる時に後見人から本人に全部財産を引き渡して、自分で管理してもらうことになりますが、それまではむやみに減ったりしないように管理をしなければいけませんし、適切な支出なのかなどを考えなければいけません。
進路を選ぶ時にどういう進路を選ぶのか、子供とか親族と一緒に考えながら意見を述べなければいけないので、責任があるところだと思います。

今も男の子、女の子の2人を支えています。
出会った当初、1人の男の子は赤ちゃん返りみたいになっていて、大分大きいのに指しゃぶりをしていたりして暫く戻らなかったり、勉強にも身が入らない。
女の子は不登校ぎみで学校生活がうまくいかないということがありました。
良くなったり悪くなったりする時期がその子によって違います。
津波の震災を経験してしまって、湯船には入れなくなったという子がいます。
海が怖いという子はよく聞きます。
被災して年齢によって、多感なころに被災すると印象が強烈に残っているかもしれないし、小さかった子はあまりおぼえていないという事はあると思います。
成年後見というのもあります。
高齢者、障害者、判断能力がなくなった方の為の後見制度があります。
多くの司法書士が後見人として沢山活動していますが、未成年はもともと数が少なかったので推薦依頼は来ませんでした。
段々裁判所から依頼が来るようになって、10件/月来るようになりました。

宮城県の場合は引き取った親族の内訳は、祖父母、叔父叔母がほとんどで半分半分ですが、後見は親族の理解を得ると言う事が非常に難しいです。
未成年後見人という人が戸籍に乗ってしまいます。
子供の戸籍に関係ない人の名前が出てきたりするのに抵抗を覚える親族がいます。
子供の独自の財産という観念があまり一般の家にはなじまないので、管理しているものがおうちの金というふうになってしまうと間違った使い方というふうになってしまうので、なかなか裁判所からすると適正な運用にはならないという事が多々あったのかもしれません。
震災孤児の食費などもなかなか分けられないので、なかなか難しい。

震災孤児を引き取って育てている親族の方々の状況も様々です。
仕事がなくなっていたり、家をながされたりして家計が苦しいという家庭があったり、自分の子がいるなかで震災孤児を引き取っているという方もいます。
養子にしたというところもありましたが、そういう家ばかりでは無くて親族と震災孤児がうまくいかないという所も何件かありました。
祖父母が育てる場合は、8年歳をとると言う事は高齢になってしまうケースもあり、亡くなってしまったり認知症になってしまうと言う事もあります。
子供が祖父母の介護をしなければいけないというケースも出てきたりします。

平成28年宮城県内で東日本大震災で両親を亡くした小学生の甥の未成年後見人として家庭裁判所から選任された親族が甥の預金を着服して逮捕された事件がありました。
裁判所は不正なお金の使用をしないように監督はしているが、それでも裁判所までもだまそうというところまではなかなか防ぐのは難しいと思う。
その事件の為、後見人はあまりいい目でみられなくなってしまったのは残念です。
虐待を受けたりして、その子のその後の人生も凄く心配になりました。

8年の間に半分ぐらい成人しましたが、その後の生活についてはあまり分からないが、今も未成年の子について言うと、選択しながら生きていかないといけない。
相談する相手がいる子もいればいない子もいて、孤独な状態で成長している子もいて支えが必要だと思います。
後見人は親代わりにはなれないと思います。
距離感をもった関係性は必要だと思います。
自立する時に、財産、預貯金を引き継ぐ場合、お金がどうしてそれぐらいあるのか、まず説明する必要があります。
これからの人生でお金が必要で大切なことだと説明します。
一人で管理することが不安な場合は親族との相談等も行います。
困った時に誰かにSOSを出せるのが、まず自立の条件だと思っています。
東北人特有な特性があり、なかなか他人に自分の困っていることを話すのが恥ずかしいというような事があると思います。
抱え込んでしまって誰にも相談できなくなって、暗闇に入ってしまうというケースが多くて、どうやってSOSを発信してもらえるのか、課題だと思っています。

最近では震災という事が困っていることの事実としては埋もれているが、その影響は大きくてまだまだ残っているものがあると思います。
目に見えていない部分がたくさんあると思います。
何処でまた災害が起きて、同じ様なケースが出てくるのか判らないので、私たち司法書士がこういう未成年後見をやって来たという事を発信したりだとか、やってみたがこういう問題点があると言う事を、発信していかないと制度改善につながらないと思います。
これを全国に広めて行きたいと思います。