2018年7月28日土曜日

中尾 彬(俳優)             ・終活で知る大切なもの

中尾 彬(俳優)             ・終活で知る大切なもの
池波志乃
お二人が身の周りの事を考え始めたのは十数年前の事。
相前後して共に大病した後、志乃さんからそろそろ考えてみない?と言われ、遺書を書くことから始まった二人の終活、しかし暗いイメージはありません。
ゆっくり時間をかけて整理を始める中で、孤独ってなんだろう、夫婦ってなんだろうと考えることが多いそうです。
終活は死に仕度ではないし、どれだけ楽しくやるか自然に委ねていけばいいと言います。

彬:アトリエが千葉の木更津にあり、色んなものを集めていましたが、病気になり、こんなものは使わなくていいというものがいっぱい出て来ました。
志乃:私が沖縄にいた時に倒れてフィッシャー症候群で急に手足がしびれて、目も開かなくなりました。
1カ月半で治りましたが、リハリビが必要でした。
その間私の母が癌になり、千葉に母が入院していました。
彬:私は60歳過ぎまで医者に行ったことがありませんでした。
64歳で肺炎になりました。(最初は風邪だと思った)
一つ良くなると又次にとか、筋肉が溶けるとか、そういう病状になり1カ月以上入院しました。
志乃:その時は何で後から後からと思いましたが、うまい具合に摺りぬけてお互いが偶然一緒にならなかったので何とかなりました。
一緒だったらなんともならないという事に気が付きました。
子供がいないので、自分で始末をなんとかしておかないといけないと思い始めました。
最初はお墓でした。

彬:私の場合は生存率が20%でしたので死と直面しました。
そこでお墓の事を先ず考えました。
志乃のお父さんが志ん生の所に入っていて、一緒に入ろうかと云う話まで行きました。
墓の設計をやろうとして奇抜なものを考えたが、お坊さんがなるべく奇抜なものはやらないでほしいと言われました。
志乃:父と母がなくなってから二人を連れて来て(向こうは美濃部家)、私たちが入ると中尾家なので、横に寝かした石が三つで、母の実家のおじいちゃんとおばちゃんもいるんです。
ちょうど三つになります。
「無」と彬が自分で書きました。
彬:スパッとやらないと何もかたづかないですね。
先ずはアトリエ、沖縄のアトリエと千葉のアトリエを手放すことにしました、絵は取ってありますが。
沖縄のアトリエでは絵をかくつもりでしたが、仲間が多く出来ました。
志乃:ものより人とか自分たちの思いとかの方が財産だと思いました。
沖縄へいっても掃除をしたり、いくこともしんどくなりました。

彬:写真とかも一杯あります。
見ていてもこれ誰だっけということで、一杯取っておいてもしょうがないと思いました。
志乃:写真って残されたら残された人に取っては始末しにくい。
貴重なものを抜いたら後は見ないで捨てる、そうしないと絶対かたづかないですね。
映像のテープも沢山ありましたが、全部捨てました。
VDVに焼き直すこともできますが、そのままだと画像がデブになってしまうので止めました。
彬:思い切りがいいと言われるが、判断だと思います。
志乃:ルールは決めておいた方がいい、それがもとで喧嘩というのは望まないことなので。
もう一段階楽しく過ごすということを目標にする訳ですから。
どちらかが迷った時には見えるところに置いておく。

彬:本は沢山あるが捨てられない。 
落語、料理、映画、絵の本位しかないから、本屋に電話するとむこうでも欲しいものがあるので助かりました。
志乃:体力が必要なので早くやらないといけない。
いろいろ片付けるものはまだ大分片付いたという訳ではなくて進行中です。
これから先ほしいものは今までと違うはずなので、欲しいものがあれば買ってもいいと思う。
これからもう一回新婚生活を始めるつもりで、あたらしいものも買っています。
捨てることが目的ではない。(断捨離ではない)

彬:人との付き合い、段々義理人情に欠けて来ました、いまは横着ですね。
志乃:定年がない商売なのでけじめが無い、義理でしょうがなく付き合っていたものを切れるチャンスだと思った方がいいと思います。
パーティーとかもろもろの付き合い、義理だけで行くようなところは無理はしないようにしようとしています。
彬:リタイアしてから何かやろうと言うのは遅い、40代からすこしでもいいから触れていないとだめですね。
なんか1時間でもいいからやっておかないとだめですね。
筆と万年筆と筆記道具はあります、自分に課してやっています。
孤独感はないです、さばさばした感じです。
志乃:あまり一人が寂しいということはないです。
寂しいというのが孤独で大変というのと、つるんでいるだけというのは違うのではないかと思っていて、友達だと思っていたがひょっとしてちがうかなと、或る程度の歳になると思える瞬間があると思う、なんかの都合でつるんでいたんだなあと。
彬:役者は意外とつるむんですね、つるまないと不安なんでしょう。
私は私たちの世界ではだれも友達はいないし作ろうとは思いません、知り合いは沢山いますが。 
違う職業の方の友達は一杯いますが。
同じ職業で付きあってしまうとある面で悪口が先行する、他の職業の人と付き合うと役作りにヒントを与えてくれます。

彬:映画、音楽、演劇などは無くても生きていけるが、私は遊ぶことが無いと生きていけない。
パチンコだとか競艇だとかではなくて、玄関に小さな絵が飾ってあって,ああ良い暮らしをしているなというよなそういう生活には一番憧れます。
志乃:一緒に同じものを面白がれるというか、根本のところであれば、食、味とか生理的なところが一緒でないと。
彬:老、死だとかは両方が元気な時に明るく話したほうがいいと思う。
志乃:きっかけが有った時に話しておく必要がある。
自分が安心するために。
最初の新婚は何にも判らない時からの新婚ですが、これから新婚と思えば何も怖くない、いらいらしたり喧嘩にならないようにできるんじゃないと、上と前を向こうと思います、あと何年一緒にいられるのか判らないから。
彬:終活は二人でないとできない、二人でやって掛け算して終活した方がいいと思います。
一人の人は何か趣味を見付けてやっていった方がいいと思います。
食事の絵日記を書いています。
旬のことも判るし、絵が浮かんでくるので文字も浮かんできます。
人生を整理すると言うことは全くないです。