2017年4月5日水曜日

D・アトキンソン(文化財修理会社経営)・世界を魅了する“日本の宝”

デービット・アトキンソン(文化財修理会社経営)・世界を魅了する“日本の宝”
デービットさんはイギリスの生まれで大学で日本語学科を専攻しました。
およそ30年前に来日し、金融業界で活躍していましたが、42歳で仕事を辞めて趣味の茶道を楽しむ生活をしていました。
2年程してひょんなご縁で文化財の修理を専門とする会社を任されました。
昨年日本の経済を活性化する方法を提言した本を出版して話題となっています。

「新・所得倍増論」を発表。
日本の国宝を守る本だったが、そこから日本経済の全般に対する見方からスタートして、パーツパーツを取り上げて、専門書を書いてきました。
今回は経済専門書と言うことで、生産性の分野を取り上げて書いた本です。
国連の分析、世界銀行の分析とかで日本人労働者の質がきわめて高いという評価をされているにも拘わらず、世界第3位の経済かもしれないが、一人当たりで計算すると27位だった。(本を書いた時点)
2016年の数字では世界第30位です。
子供の6人に一人が貧困、福祉、年金が大変な状況で、高齢者の介護、医療は国として払えるかどうかと言うところがあって、国の借金が1000兆円を超えて居る。
悪循環にある。
これまでの実績のある国の経済成長してきた中で、子供の6人に一人が貧困で、国が破綻して良いのか、いいわけがない、しかし危機感もない。
現実を客観的にみて欲しい。

イギリスの田舎の生まれ、4人兄弟で3番目です。
オックスフォード大学で日本学科を専攻、文学、日本史、読むこと、書くこと、そして戦後経済の発展は論文を書いた部分でした。
漢文、古文、漢詩なども勉強しました。
当時イギリスは失業率が13%とかで日本は高度経済率が高く日本を勉強する人がいなくて、就職が有利なのかなあと思って決めました。
日本企業がニューヨークに進出している関係から、3年間アメリカに住んでいました。
バブルが崩壊して1990年に来日。(日本にある仕事しかなかった)
その後金融機関に入社、42歳で会社を辞める。
茶道、書、能、旅行したりしていたが、京都の町並みを見て、何処にもあるような町並みに変って行くのをみて、ストレスがたまるだけで、一軒を買って改修して日本文化が楽しめるようにしました。

文化財修理会社の面倒を見てほしいといわれて、引き受けることにしました。
日光東照宮が出来たときに出来た会社で、漆塗り、彩色調飾り金具の修理をしてきた会社で、日本最高の技術を持っている。
京都の技術は日光の技術には足元にも及ばないものです。
この業界の職人の4割ぐらいを雇用していて、最大手の会社です。
これが無くなることは日本の文化財の修理としては大打撃です。
職人集団を守らないとしょうがないからと言うことで引き受けました。
京都は分業制が多いが、日光の場合は、日光東照宮を中心に380年前から常に修理をしている場所です。
日光東照宮は建物が多く、仕様が極めて重く、常に仕事がありますから、物凄い技術が集中されています。
18歳で雇って亡くなるまで会社で仕事をしてもらう文化があるが、いろいろ問題があり一時期4割を非正規社員にされた時期があり、私が社長になった時にこれはおかしいので内部の無駄を省いたりして全員正社員に戻しました。

技術の継承は若い人を雇っているか、雇っていないかだけの問題です。
文化財を守ると云うこと自体は意味があるとは思えない。
近代的なものだけではなく、古くはこういうものがありましたということで、人生が豊かになる。
赤坂迎賓館、京都迎賓館のアドバイスをやっているが、国賓が来るときに使われるが、たまに使われるだけなので、もったいない。
一般公開しましょうということになり、毎日何千人来て、意味合い、使われ方、歴史的背景、何処の大統領がきたとか、両陛下がこういうところで実際に御挨拶されるとか、いろいろ紹介している。
文化財は守るためにあるのではなくて、皆さんが学んだり体験したり空間を楽しんだりするためのものなので、文化財を皆さんに楽しんでもらうためのものだと思っていて、楽しんでもらうために修理をしなければいけないということで、修理をする職人が結果として必要になってくるが、これがメインになってはだめなんです。

文化財を説明するときに、建造物としての説明が多くて残念に思います。
陽明門を50年ぶりに修理をして今年3月10日一般公開しましたが、私が検査してきましたが500以上の彫刻があり、漆、金箔がありすばらしいものです。
いろいろな彫刻物などはそれぞれ深い意味合いがあり、日本の宗教の考え方、哲学的な事、道徳、なんの意味があり何を伝えようとしているのか、残念ながら伝えて居ない。
これからは解説しようと、事業を立ち上げて居る最中です。
日光の場合は見えるところが彩色されている処だけではなくて見えないないところも彩色されている。
職人の世界と神様の世界で、修理するときにしか見れない。
角の龍の彫刻などは頭の部分は誰にも見れないので普通のやり方ではそこには彩色しない。
彩色は通常は顔料をじかに塗るが、日光ではまず漆を塗って(黒と赤の両方塗っている)、その上に全面的に金箔を貼って、その上に彩色を塗るが、普通は一色塗るが、二、三回塗り重ねていってぼかしたり色んな事をしています。
こういったものは日光にしかない。

段々劣化して外側が消えていくが、重ねて塗っているので顔が変わっていきます。
更に劣化すると、金箔が見えてきて、金箔が無くなると、漆が見えてきて何時まで経っても木が見えない、違う楽しみがみえてきて何時まで経っても美しいままで、これは独特の文化です。
こういったことは説明しないと判らない。
外国人観光客にいうのではなくて、向こうから言ってもらうのがベスト、感じてもらって理解してもらって日本文化の深さを言ってもらう。
時間とお金をかけて日光に来て、感動するものなのに感動させないままで帰ってもらうことは作った人(命をかけて修理しているのに)に対して失礼だと思います。
外国人にもきちんと説明すると又来たいと感じるかもしれません。

明日の日本を支える観光ビジョン構想会議が開かれたが、2020年4000万人、2030年6000万人外国人観光客を誘致すると云う目標が設定された。
文化庁の日本遺産認定が数年前から始まっているが、ストーリーがあるので、物語を語ってもらおうと整備している。
どういう神様、仏様かとか、歴史的な事とかいろいろな情報を知らせる。
多面的に判るように解説をやろうと文化庁などでやっています。
観光産業がどう伸びて行くのか楽しみです。
京都は世界観光都市として満足度世界一になりました(イギリスの雑誌で紹介)
外国人宿泊世界観光都市ランキングがあるが、2年前 100位以内に入っていない、昨年89位、潜在能力は1位、実績は89位と言うことです。
日本経済全面的なものです。
89位をトップ10あるいは20にするのか、潜在能力をものにするのが今一番求めてられている。