2017年4月12日水曜日

早川由美子(ドキュメンタリー映画監督)  ・輝くインドの女性たち

早川由美子(ドキュメンタリー映画監督)  ・輝くインドの女性たち
フリーの映画監督早川さんは一昨年、インド、デリーのアジア女性映画祭から招待を受け、その時のインド紀行を2週間の旅日記として製作しました。
現在日本国内各地で上映展開しているこの映画はアジア各国の懸命に生きる女性の姿が生き生きと映し出され映像を生かして自国の難しい状況を必死に伝えようとする女性映画監督の迫力が画面に浮かびあがっています。
早川監督が感じたアジアの女性たちのパワフルな底力はもの言う機会のなかった女性たちが新たな手段として映像を記録、国や地域に訴え社会を変えて行く姿が具体的に判ります。
ストレートに国情を訴える女性の姿と早川さんの受け留め方をお聞きします。

ビデオカメラが段々小型化して、パソコンで編集ができるようになったので女性も段々進出してきました。
映像の凄さに感動して、ビデオカメラで表現したいと思うようになりました。
ティッシュペーパーを配るアルバイトをしていてホームレスの人たちと仲良くなっていて、女性が一生安定して働くには公務員しかないといわれて、郵便局員として働いていました。
駅、公園のベンチのまん中にひじかけがついていて、野宿者を寝かせないためにつけて居るのではないかと思って、凄く厭だと思って、街中から坐ったり、たむろすることに違和感を感じてそのことを取材始めました。(まだ勤めて居る頃)
それを記事にしましたが、何処も載せてくれる媒体はありませんでした。

あるインターネットのサイトが始まって、そこに記事を投稿したら思わぬ反響がありました。
ホームレスは自己責任だ、椅子を占領する方が悪いとか、そういったコメントであふれて居て世の中にはこんなふうに思う人がいるのだと吃驚しました。
この記事に関してTV局から4日間取材されて10時間撮影されて、最終的に放送されたのは3分ぐらいでした。
それを見たときに、表現される世界の情報量の多さと豊かさに圧倒されて私も映像をやってみたいと思うようになりました。
ジャーナリストになりたいと思うようになり、5万円のホームビデオを買ってイギリスに留学しました。
ロンドンの国会の前にテントの群れが並んでいるのが見えた。
イギリスは 国会の前にホームレスがいると思ったら、政府の戦争に反対して抗議活動をしているんだと言われた。

それを記録し始めました。(第一歩でした)
2009年に映画を完成させて日本ジャーナリスト新人賞に応募したら選ばれました。
当時、インターネットに動画を投稿することがはやり始めた時期でもありました。
小さい作品を80品ぐらい作って学んでいきました。
7~8品 原発で家族が崩壊してゆく家庭、公団住宅の問題などの作品を作る。
私は社会運動とか、デモとか何もしていなかったが、映画の上映を通じて社会問題に取り組んでいる人が呼んでくれて、あらゆる社会問題に触れるきっかけになりました。
日本の社会運動を見たときに高齢の方が多い、平和運動でも安保運動での人たちが頑張っている。
若い人の関心はなく日本の高齢化を思いました、、貧困、労働問題でもそうでした。
若い人たちには生活に余裕がなくて、無理だと云うことが判り、住まいの事が何とかなればもっと社会問題の関心も持つのではないかと思うようになりました。
わたしのなかでは住宅が大事なテーマになっています。

一昨年、インドの映画祭。
知り合いに日本駐在のインド大使を紹介してもらって、インド大使は女性だった。
「インドで活躍する女性達」という本を頂いて、面白そうな女性達の事を知りました。
そしてインドに行って、行き当たりばったりの取材をしました。
デリーからアーメダバードという都市に行きました。(ガンジーが育ったところ)
女性の日雇い、露天商とかの労働者が、自分たちの生活、地位を向上させるために組合を作り、銀行、学校作って組織を回している事を知って、会員が200万人がいて40年活動しているとのことでいきました。
文字が書けない読めない人がたくさんいる、担保を持っていないのでお金を借りれない。
高利貸から借りるしかなくて、一生を縛られてしまうので、自分たちで銀行を作ることにする。
文字が読めないのに、40歳から映像制作する人などもいてとてもパワフルです。
自分に自信を持てるようになったと言っています。
映画作りを始めて10年以上になるが原点をみるような思いをしました。

インドの映画作りをやっている人は一般的にエリートが多い。
彼女たちのドキュメンタリー映画は社会を変えて行く武器として使っているという側面が多いと思います。
住居、健康、雇用、暴力、など色んな事を取り込んでみんなに知ってほしいと出してゆく。
「アジア女性映画祭」と云う名前なのでアジアに起源をもつ女性監督の映画が上映されている。
ヨーロッパに亡命している人の作品も上映されていました。
イランの監督とかはスカーフをかぶっていないといけないが、スカーフをかぶらないで出演したので、国に帰った時に政府から引きとめられるかもしれない、政府から助成金が貰えないかもしれないと言っていました。
インドの監督、農地が強制的に取り上げられたり、工場汚水が垂れ流しになり農地が荒れてしまったとか問題が起きているが、そういったことが報道されるのはまれです。
しかし彼女は10年かけて取材して映画にしました。
彼女は暴行を受けて腕を折られて、逮捕されて裁判も開かれないで有罪になって服役して刑務所から出てきて映画を完成させたと言っていました。

カースト制度は法律では禁止となっているが、社会には根付いていて無くすのは難しい状況です。
彼女たちには激しい戦いですが、それが彼女たちが戦う気を起こさせているのかもしれません。
日本でもいろいろ社会の問題はあるが、TV、新聞で取り上げるのはほんの一部で、限度があり、状況を変えたいと思うなら、自分たちで撮って行くのがいいのではないかと思います。
彼女らに見習うべきだと思います。
技術ではないんだよと言っています。
今は撮ったものを瞬時に誰のチェックも受けず、世界に発信されてしまうので、トラブルをどう考えるか、いろいろ問題があると思いますが、そういったことをディスカッションしています。
言いたいことがあって何かを表現している人と接していると、私はこういうふうに生きて居るの、あなたはどうやって生きて居るのと、自分の生き方を問われ続けていると思うので、それが自分の人生をより考えさせてくれるきっかけを与えてくれたし、豊かにしてくれていると思うので、その体験はいろんな人にして欲しいと思っています。