2017年4月17日月曜日

大藏基誠(能楽師狂言方)       ・【にっぽんの音】

大藏基誠(能楽師狂言方)   ・【にっぽんの音】
狂言 能と狂言をひっくるめて能楽。 私は能楽師狂言方です。
能は昔の話を幽玄美を使って物語を作り上げているが、狂言は主人、太郎冠者(たろうかじゃ)、女、男、鬼、婿など何処にでもいるような、キャラクターを使って物語を展開している。
能は悲劇が多くて、狂言は家にあるのが全部で180曲演目があるが80%は喜劇です。
人間の弱さ面白さを描いているのが多い。
子供にやってはいけない、見てはいけないと言うような事に、やってしまう見てしまう心理を描いていたりするのが狂言の面白さです。
海外でやっても笑う壺は一緒です、根源的には変わらないです。
狂言は短いものだと6分、長いものだと1時間ぐらいになります。
舞台は能楽堂になり、都内で10数か所あります。
なにもない空間で舞台を作って行く。
「ここは宇宙でござる」というとそこは宇宙になってしまう、お客さんの想像にゆだねる。

能はお面を使うが、狂言は素に近い。
断髪令が出て、「ちょんまげ」を許されたのが相撲と能楽の世界だったが、相撲は残しますと言うことになり、能楽の世界は我々も落としましょうとなり、自由になりました。
能は敦盛だとか実在していた人物を演じるので面に憑依(ひょうい)させる、面を付けることによってその役に入る。
狂言は実在する人物ではなくて何処にでもある話なので面を付けることなく素顔で行います。
昔は面は高価なものだったので、買うことができなかったのでその時に顔を化粧をするようになったのが歌舞伎の世界と言うふうに聞いたことはあります。
おおきく分けて大蔵流、和泉流があり、鷺流があったが途絶えてしまった。
大蔵流には大藏彌右衞門家(本家)があり、東京に山本東次郎家、京都に茂山千五郞家、茂山忠三郞家があり、大阪神戸を本拠とする善竹忠一郞一門があります。
毎年5家狂言会をやっていて、若手がそろって、いろんな家の技が見れて面白いです。

小学校上がるまでみんな狂言をやっていると思いましたが、小学校に上がってから家だけなんだと気付きました。
反抗期には家出をしたりしたこともありました。
舞台に行かなかったことで父親が代役をやったりして親父に申し訳ない事をしたと言うことで、親の顔に泥を塗ってしまったことを後悔して、やろうかなと思いました。
みんな舞台に命をかけて居る、舞台に穴をあけてはいけないと言うか、みんなの熱い思いは大事にしたいと思っています。
舞台は一番と言うことを息子には見せようと思っています。
息子は同じクラスに狂言をやっている子がいて、いい環境だと思います。
稽古や、舞台に立つ瞬間は凄く厭です、めちゃめちゃ緊張します。
毎回演目が違うので、次のセリフを覚えなくてはいけなくて、並行して覚えなくてはいけないし、セリフも100点出さないといけないので追い込まれた時は厭になります。
だけど舞台に出てお客さんの笑いだとか拍手を貰うと、全部吹っ飛びます。

「一期一会」なんで今日の舞台はもう二度と見れないだろうと思ってやっています。
お客さんと演者とで一緒に作る空間だと思っています。
間を大事にするので、間をとった瞬間に携帯の音がしたりすると何やってんだろうと思います。
最近は見るお客さんが違ってきて、TV映画を見る感覚で来るお客さんが多いです。
TV、映画は一方通行だが、舞台はそうはいかないが薄れてきているように思う。
狂言はみんなに想像してもらって楽しむお芝居だと思っています。
『kyogen lounge』 44回目になり、パーティーと狂言を一緒にした舞台で、楽しんだ後狂言を見て、又お酒を楽しむと言うような空間を作っています。(1回/2カ月)
そこでの出会いがあったりして、狂言を通して繋がってもらうのはうれしいと思っています。
敷居が高いとか伝統芸能に対するイメージを変えてみたいと思ってやっていますが、好評です。

自分自身がパーティー好きと言うような思いもあり、思いつきました。
30代、40代の人が多いです。
狂言を見に来るときに、昔は何を着てきてもいいですよと言っていたが、最近はおしゃれして来てと言っています。
自身が脚本し舞台「TheFactory」を演出。
やるきっかけになったのは、日本の芸能をもっと知ってもらいたいと言うことが根本にあって、津軽三味線、尺八、和太鼓、狂言、殺陣、そこにアニメーションダンスを入れました。
間に芝居を入れる事によって、それぞれの津軽三味線、尺八、和太鼓、殺陣などの文化を知ってもらいたいと思いました。
音楽だけではなくて茶道、華道とか日本の文化を取り入れてもいいと思っています。
日本の文化を知ることによっていろんなものが見えてくるのではないかと言う思いがあります。
狂言の180曲の演目の中で誰一人として死なない。
人間の弱さ、面白さ、失敗談を描いていて、怒られるがその先は許すという、仏様、神様の教えが詰まっている演劇なんです。

おおらかな気持ちで物事を見なさいよとメッセージ性が強いと思っていて、日本の芸能全般が誰も人を殺していいとは言わない、文化芸術を楽しむことによって平和な地球が作り上げる事できるのではないかと言うことで、もっと発信してゆきたい。
狂言だけでなく、歌舞伎、文楽、落語などもっと楽しんだらいいんじゃないかと言う思いが「TheFactory」になった訳です。
世界中を回りたいと言う思いはあります。
日本の良さを発信したい 「おおらかさ」
日本の音 季節を感じたりしてしまうが、1年を通して日本の音で出て来たのは「鼓」です。
小鼓は湿気を大事にしていて、大鼓は乾燥を大事にしている。
小鼓に調子紙を貼っているが、この紙(切手より小さい)一枚で音が違ってくる。
「紙一重」という言葉はこのことからきている。
どんな音楽でも鼓の音が入ると凄く和っぽくなる。
左手で持って右肩に乗せて、右手で叩く。(意外と知られていない)
いろいろ知ってもらって人生を豊かにしてもらえればいいと思います。