小宮位之(無料塾理事長) ・〔ことばの贈りもの〕 貧困家庭だからこそできた無料塾
小宮さんは46歳、2012年に35歳で無料の塾「八王子つばめ塾」を設立しました。 主に中学生を対象に教えていて、設立以来300人を越える卒業生を送り出しています。 無料で塾を運営している小宮さんに伺います。
2012年に35歳で無料の塾「八王子つばめ塾」を設立しました。 公民館とか賃料の安いところで週1,2回で教える人もボランティアでやっています。(人件費は掛からない。) ボランティアで育った子供たちはいつかボランティアのフィールドに戻ってきてもらいたいと言う願いを込めて「八王子つばめ塾」としました。 関東圏ですとどんなに安い塾でも月に2,3万円は掛かるると思います。 2,3人となると大変ですので。 対象は中学2,3年生です。 コロナ禍の前は70人ぐらいいましたが、今は25人ぐらいが学んでいます。 4か所で運営していて、週に2回は来れるようにしています。
公民館代は掛かるので寄付金で賄っています。(国、都とか行政からは貰っていません。) 講師の方はとても思いのある方が多くて、子供のため、社会のために自分の能力を生かしたいという事で、会社の後に、7時から始まる「八王子つばめ塾」に約40人ぐらい来てくれます。 『「無料塾」と言う生き方』と言う本を出版しました。 副題は「教えているのは、希望」 「八王子つばめ塾」は食糧支援、独自の奨学金をだしたりしています。 勉強だけではなく生活もちょっと支えるようにしています。 入塾の条件は①経済的に家庭が困難であること。 ②他の塾に通っていない事。 ③勉強したいという気持ちが本人にある事。 教えたい、教わりたいという気持ちがないと成り立ちません。 普段は英語と数学です。
父はテレビドラマの制作をしていて、年収が150万円ぐらいで厳しい家庭に育ちました。 貧乏だけれど楽しい家庭ではありました。 中学、高校になるとうちは本当にお金がないんだなと感じました。 大学受験の勉強をしている時に、「今家にはお金が800円しかない。」と言う会話が聞こえてきました。 「給料は後20日後」と聞こえて、ショックで1時間ぐらい走ったことがあります。 一人っ子です。 高校3年生の或る時点でお金が払えないので高校を辞めて働く様に父から言われましたが、奨学金制度を利用して、繋ぎました。 大学には大反対でした。 母方の祖父母に何とか援助してもらって大学には行くことができました。(國學院大學文学部) 教科書が高くて買えなくて教科書を持たずに一か月ぐらい通っていました。 奨学金、アルバイトなどで賄っていきました。
2000年に卒業しました。 教員になる予定でしたが、就職氷河期でほぼ教員を採用しない時代でした。 社会の先生が184倍でした。 私立高校の非常勤講師になり4年ほど勤めました。 ビデオカメラマンの仕事に転職しました。 アフリカのウガンダ、レバノンに行ったのが思い出深いです。 ウガンダは少年兵士のインタビューをしました。 レバノンではパレスチナ戦争でレバノンに逃げて来た子たちの子孫の難民の方たちのインタビューとかしました。 自分の人生にも大きな影響を及ぼしました。 目に見える現実が余りにも厳しくて毎晩泣いていました。 そのうち世の中をちょっとでもよくする人材を育てたいと思いました。(26歳) これが無料塾を作る為の源泉になっていると思います。
東日本大震災の10日後、仙台にビデオカメラを持たされてボランティアかたがた派遣されました。 一週間ほどいて戻って来て、このままでいいのかと思った時に、「八王子つばめ塾」の転機が訪れました。(勉強のボランティア) 検索したら、ようやく「国分寺無料塾」と言うのが出てきました。 この内容に心から感動しました。 2012年9月に義母の持っている建物の一部を借りて、「八王子つばめ塾」が誕生しました。 生徒が初めて入塾したいとか、講師をやりたいというメールが来た時には、自分の気持ちが伝ったような気がして、本当に嬉しかったです。 最初は無料という事で怪しまれるようなこともありました。 口込みで段々信用を得られました。 妻と子供が3人います。 高校生の子は「つばめ塾」を経験しており、後二人も入れる予定です。 妻からは理解、応援してもらっています。 高校、大学の非常勤講師と病院のアルバイトなどをしながら暮らしています。 始めて3年後ぐらいから塾としては安定してきました。 行政から支援を受けると、自分たちのやりたいことが制約されてしまうので、独自のやり方をやっています。
都立高校の受験者がほとんどです。 卒業生は302名になります。 後輩を導いていってくれたら素敵だと思います。 40ぐらいが「つばめ塾」をお手本にしてやってくださってる人が居ます。 お金が無いんだけれど勉強したい、高校、大学に行きたいという人に希望を与えるように全国に広げていきたいと思います。 子供たちの役に立つ人間になりたいと思っています。