2023年9月16日土曜日

畑山博(産婦人科医)          ・生まれてくる命を輝かせたい

畑山博(産婦人科医)          ・生まれてくる命を輝かせたい 

旗山さんは27年前、35歳の若さでおよそ100年の歴史がある京都市の産婦人科病院の6代目院長に就任しました。  当時閉鎖寸前だった医院を立て直そうと、分娩数の増加に取り組む一方で、産婦人科の枠を超え、小児科、子育て支援センターなどを次々と立ち上げ、5年前には医療的ケア児も受け入れる大規模な認可保育園を開設しました。 今では京都市で生まれる5人に1人はこの産院で生まれると言われ、子育てを支える一大拠点となりました。  原動力となったのは母親たちの切実な声、そして体重がおよそ1000gと小さく生まれた長男の存在でした。  畑山さんがどんな理念でお産や子育て支援に向き合ってきたのか、伺いました。

1978年、18歳の時に、イギリスで一番最初の体外受精の子供が生まれました。    試験管ベビーという事で凄いと思いました。  文系でしたが、理系に変って愛媛大学の医学部を卒業して京都大学医学部付属病院に移りました。  体外受精の研究をしようと思いました。  最初は産婦人科の臨床を5年間して、それから大学院に入って体外受精の研究をずっとやりました。  結婚して子供も2人生まれました。   学生なので生活するためにアルバイトもしました。  平成8年にアルバイト先の院長になることになりました。院長から「僕は辞めるから院長をやって欲しい。」と言われました。(僕は35歳)   父親からは教育者で「人から命令されたらノーと言え、人から頼まれたらちょっと無理をしてでも聞いてあげろ。」と言われていました。  自分がやらねばこの病院は潰れるな、と思いました。

1996年当時はバブルがはじけて、周りは駐車場で若い人は住んでいませんでした。    当時800人のお産をしていたところが京都では5つありました。  それに並びたいと思いました。  うちの病院は100人ぐらいでした。   看護師長から「これからのお産は変わってくる、自分のお産は自分で決めたいという人が増えてくる、生む人の側に立ったお産をして行った方がいい。」とのことでした。  口コミでお産が増えて行きました。  お産が増えてくると、生まれた赤ちゃんを見て欲しいという事が増えてきます。  理事会で小児科を作ると言いました。   その後一番必要なのは子育て支援だと思いました。  近くのマンションに空いていたところがあったので、ここに子育て支援センターを作ろうと思い直ぐ動き出しました。  一番大変だったのは行政との許可で、前例がないという事でした。  今までどこにも出れなかったお母さんたちが集まって、仲間、友達が出来てゆきました。   どうしたらできるかを考える方が建設的で楽しい。  楽しいことを考えた方が絶対良いですね。  

30歳の時に超未熟児で生まれた息子の存在が大きいです。  12月25日に妻が出血があるという事で、来てもらったら陣痛が始まって、赤ちゃんは1000gぐらいで、8か月(28週)を過ぎたらもしかしたら赤ちゃんが生きれなかもしれない、というのが当時(30年前)の産婦人科の常識でした。  27週を過ぎたばかりでした。  産婦人科部長と相談したら「助からない。」と言われてしまいました。  「助かったとしても何らかな障害を持ってしまう。」と言われました。  妻と妻の母親にも事情を説明しました。     しかし、心音を聞いていると助けたいと思いました。  

帝王切開で取り上げました。  どんな障害があっても育てようと妻と話し合いました。   一つ一つクリアしていって、小学4年生の頃になると背も追いついて行って、勉強もよくできるようになって、中学高校では朝練して、友達たちと楽しんでいきました。  医学部を目指すようになり、入って実習で未熟児センターを回りました。   「親は未熟児で生まれた後の将来を心配しているが、畑山君が未熟児で生まれて現在の姿を見せてあげれば、親は凄く嬉しと思う。」と、小児科医の先生がたから言われたそうです。  息子は「未熟児の脳疾患の専門医になりたい。」と言いました。  今は超未熟児の治療と研究をしています。  

障害児保育の医療的ケアのできる保育園を開設しました。  ケアは募集をし4人になり、園児も4人いれました。   園児たちは150人いて、0歳から5歳までいて、何でもやります、走り回り、落書き、近所の家の布団に水をかけるとか、でも医療的ケア児を一緒にしてみていると、ちゃんと気を使って接しています。   健常児にとってみても凄くよかったです。  医療的ケア児たちも一気にいろんなことを覚えてゆく。  みんなで一緒に暮らすことで、助けたり助けられたりする社会が出来るから、これは凄くいいことだと思います。  助けると、自分が困った時に助けてという信号が出せるが、引きこもりの人は助けてという信号が出せない。   

今年から妊婦の検診費用をゼロとする新しい取り組みを始めました。(無料産院事業)  妊婦の検診費用、出産費用をNPOが支払う。 その受け入れ病院の第一号になりました。妊娠して相談もできず、病院にも行けないという時に、赤ちゃんを産んで捨てて殺人になってしまう。   妊娠して、初診料も要らない、お産の時も大丈夫という仕組みを作る、それに対してうちの病院が最初に手を上げました。  ちゃんと赤ちゃんが育っていけるようにする、赤ちゃんを育てられなかったら、又特別養子縁組みたいな制度もあるので、赤ちゃんを育っていけるようにもする。  犯罪者にならずにお母さんになることが今回のプロジェクトです。  この3か月で3組のお母さんから連絡が来ています。  産んでよかったなと思える環境作りをしてきたし、していきたいです。