頭木弘樹(文学紹介者) ・【絶望名言】不眠症
不眠症についての絶望名言
「夜は生きているのが最もつらい時間で午前4時は私の秘密をすべて知っているの。」
ポピー・Z・ブライト(Poppy Z. Brite )
不眠症に対して6人を紹介。
難病になり13年間闘病している時には眠れない夜が多かったです。
ラジオ深夜便をイヤホーンで聞いていました。
ポピー・Z・ブライトはアメリカの作家です。
夜暗くしていると打ち明けてしまう事があるかもしれないし、自分自身で思いめぐらすこともあると思います。
午前4時台までは眠れないという様な人もいます、4時ごろは夜と朝の境目なのかもしれない。
夜は生きることについて考えてしまう事が多いと思います。
夜眠れない人は人生の半分は実は闇の中にあるという事をいやおうなしに感じるわけです。
「今日はひどい不眠の夜でした。 何度も寝返りを打ちながらやっと最後の2時間になって無理やり眠りに入りましたが、夢はとても夢とは言えず、眠りはなおさら眠りとは言えないありさまでした。」 フランツ・カフカ
不眠症の3つの特徴をよく表している。
①なかなか寝付けない。
②眠りが浅い。
③睡眠時間が少ない。
ぐっすり眠りたいという人は多いですね。
人間も昔はぐっすり眠るという事は危険だったと思います。
ぐっすり眠れる環境が整ってきたのは人類の歴史の中では割と最近のことだと思います。
理想の睡眠を求めすぎているところがあるのかもしれない。
「私は小学3,4年のころから不眠症にかかって、夜の二時になっても三時になっても眠れないで夜寝床の中で泣いた。・・・さまざまな眠る方法を聞いたがあまり効き目がなかったようである。
私は苦労性でいろいろなことをほじくり返して気にするものだから尚のこと眠れなかったのであろう。」 太宰治 思い出 晩年から引用
「安らかな深い眠りに恵まれる夜は年のうちに幾日もなく、不眠症や睡眠不足も40年の習わしではむしろそれが常とありまして、まともに寝入りそうな夜はかえってなにか不安を感じます。 川端康成 時雨(49歳の時の作品)
9歳の頃から不眠症という事です。
「たちまちのうちにまた不眠の夜のラッパが鳴り響くのです。」 フランツ・カフカ
「どうにもならぬことを考えていて夜が深まる。 どうにもならぬことを考えていて夜が深まる。」 住宅顕信(すみたくけんしん)
これは自由律俳句です。
夜眠れなくなるのはいろいろ思い悩んでという事が一番多いのではないか。
「人一日一夜をふるにだに。人一日一夜をふるにだに。八億四千の思いあり。」
能の求 塚(もとめづか)(観阿弥の作)より
八億四千の思いがあったらとても眠れない。
「ふと夜中に自分ではどうしようもないものについての不安で、目を開けている。」
山田太一
AにするかBにするか、選択するどうにかなる事でも悩むし、どうしようもないものについても悩む。
住宅顕信は22歳で病気になって妻とも離婚して、生まれたばかりの子どもを病室で育てながら闘病していたが、そういう中で俳句を作り始める。
281の句を残して25歳で亡くなる。
「若さとはこんな寂しい春なのか」 住宅顕信
「あなたは夜眠る、私は眠れない。 あなたの寝姿を見ていると悩ましい。
あなたの閉じた口、寝そべった大きな身体、変な形。
でも見ていると泣けてくる。 それからだしぬけにあなたは笑い出す。
眠っているのにゲラゲラ笑う。 その時あなたはどこにいるの。
本当にどこへ出かけたの。 もしかしたらほかの女と遠い遠いほかの国でその女と私のことを嗤っているの。」 ジャック・プレヴェール 「眠れないとき」
シャンソンの『枯葉』の詞や、映画『天井桟敷の人々』もこの人の作品です。
「ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす」 笹井 宏之
短歌 「あなた」
眠らないで大切な人を見守る、という事です。
「風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける」 笹井 宏之 短歌
15歳から難病で寝たきりで、26歳で亡くなっている。
そんな境遇の中で透明感のある軽やかなイメージの短歌が書けるということはすごいと思います。
「夜になるとさけは川を出て街にやってくる。 フォスターレートとか、A&Wとかスマイリーレストランといった場所には近寄らないように注意はするが、でもライトアベニューの集合住宅のあたりまでにやってくるので、時々夜明け前なんかには彼らがドアノブを回したりケーブルTVの線にドスンとぶつかったりするのが聞こえる。
僕らは眠らずに連中を待ち受け、裏の窓を開けっぱなしにして、水の跳ね音が聞こえると呼んでみたりするのだが、やがてつまらない朝がやってくるのだ。」
レイモンド・カーヴァー
「夜になるとさけは川を出て街にやってくる。」と夜に空想を楽しむ、これも豊かな生き方だと思います。
「やがてつまらない朝がやってくるのだ。」
空想は無駄なものではないと思います。
カフカは夜には二つあると言っている。
「僕の夜は二つあります。 目覚めている夜と眠れない夜です。」 フランツ・カフカ
*取り上げた文章、短歌などの文字が違っているかもしれません。