2019年11月26日火曜日

早川基(JAXA プロジェクトマネージャ)・人生は水星探査とともに 

早川基(JAXAべピコロンボプロジェクトマネージャ)・人生は水星探査とともに
今日本とヨーロッパの2機の探査機が太陽に最も近い惑星 水星に向かっています。
水星は太陽に近く大変厳しい灼熱環境にあり、また太陽の強大な重力の影響を受けるので探査機を送ることが非常に難しい惑星です。
太陽系惑星の探査は数多く行われていますが、水星の探査は過去2回しか行われていませんでした。
この探査計画はべピコロンボプロジェクトといい、水星を多角的的総合的に観測しようと日本のJAXA宇宙航空研究開発機構と、ヨーロッパのISA欧州宇宙機関が共同で進めていて、日本側のリーダーがプロジェクトマネージャーの早川基さん(63歳)です。
早川さんは20年以上プロジェクトにかかわってきました。

紆余曲折がありましたが、昨年の10月20日に上がって順調に進んでいます。
出て行って12月ぐらいに一度地球の軌道よりも内側に入って、そのあと又来年の4月に地球に戻ってきて、フライバイをして速度をおそくして金星に向かいます。
(フライバイ:惑星間飛行を行う宇宙機が,目標の惑星に衝突したり,その惑星の衛星になったりすることなく,接近してその近傍を通過する飛行のこと。また惑星の近傍を通過するとき,その惑星の重力や運動量 (その惑星の公転運動量など) を利用し,宇宙機の速度や方向を変えることができ,その後は特定の方向に向って飛行を続行する。燃料を消費せずに軌道変更と加速ができるこのような飛行方式)
来年の10月に金星で同様に速度を遅くしてというのを繰り返して、最後は水星に向かいます。
フライバイは地球で一回、金星で二回、水星で六回行います。
水星は太陽の一番近い所を回っています。
見える時間が少ないので地上からの観測ではなかなかよくわからない。
大気が凄く厚い層で大気が揺らいでいるので望遠鏡では綺麗な像が撮れない。
人工衛星を持ってゆくしかないがそれがまた大変です。

水星は半径が2400kmです。
公転が楕円に近く、太陽との距離が5割ぐらい違い、公転の周期が88日ぐらいで、自転が57日ちょっとで3対2になっていて、不思議な現象があります。
一日が2年に相当します。
大気がなくて昼間は太陽に照らされて熱くなり、夜になると冷えてしまって(マイナス170度ぐらい)昼と夜の差が600度ぐらいあります。
火星は昔磁場があったが今はない。
金星も磁場がありません。
惑星が磁場を持つためには中心が流体になっていてそれが対流、動いていないといけない。
水星は中まで固まっているが、水星自身が固有の磁場を持っていないと変だというデータが出てきて、惑星そのものに興味を持っている人には、周回衛星を打ち上げたいという思いがありました。
べピ・コロンボ(ジュゼッペ(ベピ)・コロンボ)はイタリアの数学者、天体物理学者の名前です。(ベピはジュゼッペの愛称)
水星の自転と公転が2対3に同期をしているという事を数学的に示した方です。

欧州では1990年代に計画をしていて、日本では1997年に計画が始まりました。
1999年にISAのほうから一緒にやりませんかと声がかかりました。
日本では宇宙開発委員会に提出して認められました。
計画開始から打ちあがるまでは一番長いプロジェクトだと思います。
アメリカはメッセンジャーで一番乗りを目指しました。
実際のものを作り出すと想像以上にハードルが高くて、技術開発がいろんな面でトラブって、遅れていきました。
メッセンジャーが行って疑問をすべて解いてしまうのではないかと思いましたが、難問を一杯残してくれました。
①磁場の中心が惑星の中心にはなくて北にずれていてずれ方が非常に大きくて、どうしてそんなにずれているのかわからない。
②表面の鉱物組成を観測したがボラタイルという蒸発しやすい物質が多かった。
普通に考えたら蒸発してしまっているものと考えられるが、今の位置で水星が最初にできたとしたら、そういうものが残っていられるだろうかという疑問があります。
火星の位置で水星ができて、大きな惑星の摂動で今に位置に動いてきたのではないか、という説も出てきています。

見た目には月とよく似ていますが、水星と月の鉱物組成は全然違っています。
水星を知ろうと思ったら水星に行くしかないわけです。
MPO水星探査機は水星の表面御組成、地形などを調べて水星がどういう風にできて進化してきたのかを目的にしています。
MIO(JAXA)は水星が持っている固有地場によって太陽からのプラズマの相互作用をするのでそれによっておこる物理現象を調べます。
水星を調べることで地球のこともより分かってくる。
私は1996年の立上げ時期からプロジェクトに入っています。
初代のプロジェクトマネージャーは京都大学に転出してお前やれという事になりました。
マネージメントはしたことがなかったのでやりたくなかったが、引き受けることになりました。
太陽電池の開発には凄く苦労しました、5年ぐらいかかってしまいました。

子どもの頃は星を見るのが好きで神話とか伝説が好きでした。
望遠鏡は20cmの反射望遠鏡を中学の時に購入し土星を見て感動しました。
中学、高校はスポーツをやっていました。
理系に興味を持っていて、文化系に行こうとは全く思っていませんでした。
大学では1年の秋には地球物理の方に進みました。
プロジェクトするうえでは基本的には人の話を聞くというのを大事にしています。
いろんなかかわってくれる人たちが、自分のやりたいことをできるようにしています。
若い人たちに一番言っているのは自分の体が第一だと、絶対無理はするなと言っています。

健康維持に私は歩くことをやっています。(往復7km)
3歳ぐらいから15km歩くことをやっていたので歩くことは苦にならないです。
水星を調べることで太陽系がどうやってできてきたのか、宇宙の惑星系がどうできてきたかという事につながってきて、我々はどこからきてどこへ行くのかという、天文も似たようなところになりますが、そういうところの一部という風に思っていただけるといいなあと思いあす。
2026年ぐらいからいろんなデータが出ると思いますので判っていなかったことが判って来るように期待しています。
分離後15mの細いアンテナ4本、マストと呼ばれるもので5m2本を素早く伸展しなければいけなくて、流せる情報量が非常に少ない状態でやらなければいけなくて、一番危険な作業でいかに安全にするかという事を必死になってやっています。