岸惠子(女優) ・戦争体験を、ドラマと本で
今夜NHK総合TVで放送される「マンゴウの樹の下で」で主演されています。
このドラマは太平洋戦争の中で最も凄惨を極めたといわれるフィリピン攻防戦で辛くも生き残った戦争体験をもとにしたものです。
岸さんは戦後の昭和、平成を生き抜いたヒロイン凛子を清原果耶さんとリレー式で演じていて、伊東四朗さん、渡邊美佐子さん、安藤さくらさんが共演しています。
岸さん自身も昭和20年5月の横浜大空襲で被災した体験がありますが、主人公凛子をどんな思いで演じたのか、そして伝えたい平和への思いなどを伺います。
「マンゴウの樹の下で」では12年ぶりの主演となりました。
フィリピンの日本企業で働くタイピストで、戦争の激しいさなかをくぐりぬいた強い女性。
戦争は絶対にあってはいけないものだと思うけれど絶対にあると思います。
人間は歴史から学ばないから、今のところは日本は地球上のうえでも一番平和でいいけれど何となく。
私は戦争映画とか実録、ニュースは好きです。
この話を頂いたときに、やってみたいと思いました。
人間があそこまで、あんなに尊い命を失わせてひどいものだと思っていたので、とってもやりがいのある役柄でした。
伊東四朗さんとは初めてです。
12年ぶりなので撮影法が全く変わったので、ちょっととまどいました。
フィルムはなくなって何回でも取られると私は消耗してしまうが、伊東四朗さんには無いんです。
安藤さくらさんも素晴らしかったです。
渡邊美佐子さんが凛子とフィリピンでともに生き抜いた人、お芝居もよかったです。
あのさなかだからこそ青春って尊い、違う形の青春が生きてこられたんだと思います、今の人たちの青春と比べてもっと密度が濃いと思います。
芽生えた愛情なり友情が固いものだと思います。
すぐ隣に死があるという事は大きいです。
私は12歳で空襲体験がありました。
人間って非日常体験があり、私にはそれが多かった。
フランスでのジハード、テロ事件がありましたが、友人の家に行くはずだったが、行く機会を失ったが、その人の家の階下でその事件は起きました。
イスラム教とは何だろうかとかとの思いがあり、2月7日に起きたが、その2か月後私は一人で3000人殺された革命広場に行きました。
10年以上前から女優よりも書くことをやろうと思いました。
空襲の日、5月29日学校へ行く用意をしているところ、青い空が銀色に染まるほどB29が来ました。
隣には赤ちゃんが一人でいて、母は助けようとしていきますが、私には羽根布団を水に浸してすっぽりかぶせて、公園の所定の場所で待ち合わせましょうといいました。(私が12歳)
それで母はいなくなってしまいました。
外へ出ると生き地獄でした。
若い女性が座って動かないでいたので、ゆすったら私の上に倒れこんできて下敷きになってしまいました。(既に死んでいた。)
若い男性に助け起こされました。
防空壕に連れていかれたが、簡単なものでここにいるとだめだと思いました。
何故か公園の松の木に昇ってしまいましたが、爆撃機が来てパイロットの顔が見えました。
機銃掃射で幸い私には当たらなくて、私の家が焼けるのが見えました。
赤ちゃんを助けた母と会えたのは、講堂に行ったときに会えることができました。
防空壕にいたら亡くなっていたと思います。(そこにいた人達は殆ど亡くなりました。)
子どもはやめようと思いました、大人のいう事を聞いていたら亡くなっていたので。
雑に作った常識の中に組み込まれるのはやめようとずーっと思い続けています。
正しい歴史の中の或る部分ではなくて、私が見た感じだけを書いたりしています。
自分で確認したいという思いがあり、そこに足を運びたい、イランに行ってルポルタージュを書きたくなって、二度目に又イランイラク戦争のドラマの真っ最中にもう一度行きました。
娘には申し訳なかったが、自分の好奇心で行っちゃいました。
「マンゴウの樹の下で」(愛情、友情、なでしこ決死隊など)、このドラマは是非観てもらいたい。
1951年デビュー、映画女優となる。
自分で選んだものもあり、100本には至っていないと思います。
6年目に辞めて結婚してフランスに行きました。
彼が「人生には時折二者択一の時がある、卵を割らなければオムレツは作れない」、それで私は卵を割ったんです。
せっかく割ったんだからいろんなことをしようと思いました。
フランス映画「男と女」 53年前に作られたが、同じ監督、主演者がそのまんまの歳で作品を作り、それを見て本当に感動しました。
成熟した大人の映画ができる国は素晴らしいと思います、日本ではありえないと思います。
もう映像には映りたくはありません、日本語で勝負したいと思います。
「マンゴウの樹の下で」 人々が持っている心の中の情が描かれていると思う、今は情がなくなっていると思います。
そういう人たちがこれを観たらどう思うのだろう、命の大切さが身に染みるのではないかなあと思います。