青木睦(国文学研究資料館准教授)・「アーカイブズ・レスキュー ~記録遺産を守る」
アーカイブズ・レスキューは公文書、民間に伝わる貴重な記録等が災害にあった時などに、それらをいち早く救出、復元、保存して、次の世代に引き継いでゆくと言う新しい研究分野です。
日本では阪神淡路大震災の時に、ボランティア活動として行われ、以降研究の進んでいる欧米に学んできました。
そし東日本大震災の時には岩手県釜石市で、初めてアーカイブズ・レスキューに取り組みました。
青木さんは元々は古文書解読の専門家で、信州真田家の古文書などを研究しています。
国文学研究資料館では研究者の少ない古文書の復元と保存も並行して取り組み、阪神淡路大震災の時には、ボランティアとして公文書などの復元を行いました。
以降青木さんはアーカイブズ・レスキューの実践を通してその定着に組んでいます。
アーカイブズと言うのは、個人でも組織でも生きて行くため、企業が営業して行く為、国は自治体の運営の為の記録を作成します。
記録が溜まっていくと、いらないものは廃棄しようと言う事で、必要な記録を残していく、残すと決めたのが、アーカイブズです。
古文書、地域にある様々な資料が様々な災害にあったりします。
地域にある企業、病院、学校、自治体などにあるアーカイブズが被災すると言う事が起きるので、支援して歴史を知るための様々な活動に活かしていただこうと言うのがアーカイブズ・レスキューです。
助けたアーカイブズを必要な人たちが、よりよく活用できるようにすると言うのがアーカイブズ・レスキューと言うことになります。
欧米などは大変進んでいます。
水に濡れたり燃えたりするので、保存の為の科学的な処置方法が重要ですが、それ以上に重要なのは地域にある資料をどのようにようにネットワークや管理する体制側が、ネットワークや組織的な対応を組んでレスキューし、それを活用できるようにするがとっても重要です。
ヨーロッパでアーカイブズ・レスキューの体制が進んでいるのは、1966年にイタリアのフィレンツェにある国立中央図書館、国立公文書館がありますが、そこの資料がアルノ川の大氾濫ですべてが、100万を越える世界の歴史的な文化遺産が泥の中に埋まってしまいました。
イギリスから専門家が入って、その後世界各国の修復に関わる専門家が集まりました。
クリーニングして乾燥して図書館などで活用できる様にするという活動をしてきました。
その間に急速に進歩しました。
ICA(International Council on Archives)の話を直接聞いて、その2カ月後に阪神淡路大震災が起きました。
(国際公文書館会議 ( ICA) は、世界中の記録とアーカイブズの専門家の代表が集まり、記録の効率的な管理と、世界のアーカイブズ遺産の保存、管理、及び利用を支援することを目的とする。)
私はそれを契機に動き出しました。
神戸市の水道管の埋設の地図がなくなってしまいました。
歴史的な古い資料だけではなくて、災害が起きた時には専門家として必要な公文書も併せてレスキューすることを知りました。
戸籍、土地台帳、出生証明などが管理、残されているので、レスキューする対象になります。
東日本大震災で釜石市で実践しました。
4月26,27日に釜石市に伺いました。
市の公文書が被災したという情報が入ってきました。
当時先ずはライフラインの復旧でしたが、文書をレスキューしますと市の方に話しました。
今も8年を越えるが使えるようになりました。
2万点の文書を2カ月かけて運び出して最新の技術を使って乾燥させ、使用できる様な文書にして元に戻しました。
人間文化研究機構のレスキューチームとして行くことができました。
国文学研究資料館のチーム、千葉の国立歴史民族博物館、大阪の国立民族学博物館、の人達が関わりました。
最初私達3人が入りボランティアを募集しました。
今も続いていますが、ようやく収束する時期に来ました。
地域のアーカイブズの公開利用が進んできているのは、欧米では進んでいます。
公開システムが必要です。
自治体は住民の為に活動しているので、住民の為に公開されなければいけないと思います。
釜石市のアーカイブズ・レスキューをもとにして、全国の関係者が集まってフォーラムを開催しました。
残念ですが、岩手県には県立公文書館が無いんで、県のアーカイブズがありません。
公開できるシステムを作ってもらえるようにする。
私は本来、専門は古文書を解読してそれを保存することです。
地域の歴史、暮らしを解読することによって、多くの人に知っていただくと言う事が初めでした。
どのように古文書を収納するか、保存管理そういう事をやっておる方はほとんどいませんでしたので、それをやろうと思いました。
それがきっかけでアーカイブズ・レスキューをはじめました。
昭和26年に文部省が設立した文部省資料館ができました。
古文書が散逸の危機にあると言う事が判って、国が収集しなければいけないと言う事で設立されました。
国文学研究資料館の中には60万点に近い古文書が収蔵されています。
真田家の古文書は当館の大きな資料としてあります。
文化庁が中心になって被災文化財等救援委員会が出来ました。
阪神淡路大震災の時に歴史資料ネートワークが神戸大学を中心に出来ました。
宮城県でも東北大学を中心に宮城県の資料ネットワークができました。
愛媛県にも出来て、23を越えるネットワークができました。
記録が電子化されてきている。
電子情報は災害に弱い。
分散管理ができていないケースがあります。
原資料も重要ですが、電子情報化されたものもきちんと管理する、災害対応に応じたシステムの提案も必要です。
どのようにレスキューをするものを優先順位を付けて、レスキューするかという事も重要です。
事前に何を優先するかというシステム作りが必要です。