竹迫和美(藤田医科大学大学院元教授 ) ・「医療の現場から言葉の壁をなくしたい」
1955年東京生まれ、早稲田大学在学中に日墨政府交換留学でメキシコの大学に1年間留学しました。
1979年から1980年にかけてNHKの「ニュースセンター9時」でお天気キャスターを務め、その後外資系の航空会社の秘書を経て、スペイン語と英語の通訳の仕事に携わりました。
竹迫さんが日本語ができない外国人の患者の為に、手助けをする医療通訳が必要だと感じたのは、1995年阪神淡路大震災の際に、病院の救急に大勢の外国人が駆け込み大混乱になったのを見てからでした。
50歳を過ぎて自らも医療通訳のボランティアをしながら、二つの大学の大学院で医療通訳者養成の研究を続けました。
2016年からの2年間藤田医科大学大学院の教授として医療通訳分野で教えました。
竹迫さんはアメリカの医療通訳者の職能団体IMIAの日本支部の代表も務めています。
今、アメリカのテンプル大学の日本キャンパスの大学院の修士で英語教育学を学び始めました。
TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languagesの略で、英語が母国語ではない人々向けの英語教授法に関する資格のこと)、国際的な英語を教えるための資格がありそれを取りたいと思いました。
医療通訳者養成の研究をしてきましたが、判りえていないことが問題なんだと言う事があり、橋渡しの役目が必要だと言う事が強く感じました。
医療従事者になる学生に早く英語を学んでもらう事はもちろんですが、患者のかたに接する文化も配慮することも大事なんだと思いました。
都立新宿高校卒業後、早稲田大学商学部に入って、公認会計士を目指しましたが、簿記1を通った後無理だと思って、スペイン語を学ぶことにしました。
NHKのラジオとTVのテキストで独学を始めました。
上智大学の夜間のコースがありそれを取ることにしました。
日墨政府交換留学制度があり、メキシコの大学に1年間留学しました。
NHKの「ニュースセンター9時」については、最初ある教授の処に行って話したら、NHKでその教授がやっている番組で通訳を募集しているのでやってみないかと誘われました。
やっているうちに、色んな人達と会ったりしているうちに、電話で「ニュースセンター9時」の仕事をしたいんですがと話しました。
1979年から1980年にかけてNHKの「ニュースセンター9時」でお天気キャスターを務めました。
交換留学でメキシコに行った時に病気になり、医療に対する考え方が違うと言う事を知りました。
結婚してから5年半チリ住むことになり、子供がしょっちゅう病気をしました。
41度を越える高熱を出した時にも、ベッドのマットレスを取ってそこに水を流して、そこに息子を突っ込んだんです。
止めてほしいと騒いだら婦長さんに連れ出されてしまいました。
薬の処方についても不信に思う事がありました。
日本に帰ってきても、日本に来ている外国人はどんな苦労をしているのだろうと言う思いが起きました。
帰国の翌年に阪神淡路大震災が起きました。
救急の処に外国人がたくさん来て、言語ができるボランティアの人を必要だと言うことが耳に入りましたが、いろいろ事情があっていけませんでした。
それが心の中に残りました。
51歳の時に東京外国語大学の大学院に行きました。
医療通訳に関する現状を研究をしました。
修士論文が「多文化共生社会へ向けて専門医療通訳者の養成の考察」という事でした。
2007~12年までは大阪大学の大学院で学んで博士号を取得。
医療通訳の重要性について指導的な役割をしたいと思いました。
藤田医科大学大学院で教授として従事しました。
医療通訳については無償だったが、ぼつぼつ有償ボランティアという言葉が生まれるようになりました。
アメリカのIMIAは医療通訳者の職能団体。
その日本支部を2008年に立ち上げました。
外国人観光客が急増、2020年には東京オリンピックがあります。
官民一体となって医療通訳をどういうふうに現場で医療通訳者が医療通訳をして、外国から来た人等の患者をちゃんと診られるようにする、と言う事を今作ろうとしているところです。
日本の場合はここ数年で外国人がたくさん来るようになり、オリンピックもあり急ピッチで整備が進んでいて、日本がスピーディーに動くということは凄いと思います。
通訳の相手が病人なので聞き逃したり、落ち着いて聞いていないこともあるので、よく顔を見て観察しないといけない。
文化による違いもあるので、邪気払いというようなことも子供に対してやったりする国もあるので、医療現場に関しては風習を知っておかねばいけないこともあります。
検査も理由なしに言われることに対して、なんでなのかと疑問を持つ人もあり、それぞれの文化によっても違ってきます。
病院に医療通訳者がいる処も増えては来ています。
ビジネスとして医療通訳センターを作ってITを使ってつなぐと言う事もあり、千差万別です。
どんな問題を国として克服してきたかとか、医療通訳者と言う視点でどうしてきたか見てきているので、知見というものは生かしていきたいと思います。