2019年2月2日土曜日

田畑耕一(TAV交通死被害者の会 事務局長)・「交通犯罪」をなくすために

田畑耕一(TAV交通死被害者の会 事務局長)・「交通犯罪」をなくすために
     ~交通死被害者の会設立20年~
TAVはTraffic Accident Victims Netの略で田畑耕一さんは22年前、平成9年の1月に登校中だった小学生の列に車が突っ込み、当時2年生だった息子さんを亡くされました。
その後大きな悲しみと苦しみを抱えながら、被害者遺族が抱える様々な問題と向き合ってきました。
息子さんを失ってから2年後に設立された,TAV交通死被害者の会の中心メンバーとして、その経験を生かし活動してきました。
今も事務局長として被害者とその家族の心のケアを中心に支援しあい,被害者の立場に立った事故後の相談や裁判の支援、会員同士の交流を行っています。
交通事故の被害者、家族はどのような状況に置かれてきたのか、20年を迎えた会の活動について伺いました。

私の子供に関する事件、事件だと言っていることを心の片隅においていただきたい。
1997年1月22日集団登校の時に、車が突っ込んで命を奪われました。
その2カ月前、義理の兄が横断歩道を歩いていた時に、車に跳ね飛ばされて病院に行きましたが、命を亡くしてしまいました。
その後私の一番下の子が母親と2人の子供の前で命を奪われた訳です。
貴方がいつまでもくよくよしていると、亡くなった人の魂が浮かばれないよという話がありましたが、この立場になったら首を思いっきり傾けてしまいます。
善意で話してくれてるとは思いますが。
それが継続してくると、会いたくないという気持ちになります。
亡くなったあつし(篤?)は落ち着きはないが可愛げがある子でした。
1997年1月22日は寒波で近畿地方が大雪になった日でした。
集団登校で小学校5年生の姉と坂道を下りだしますが、横には次男の中学2年生、たまたま当番の妻が坂の上の方にいました。(一番兄と私は別に出発していました)
坂のほぼ頂点から加害者の車が出てきました。
5mしたらスリップして坂道をゆっくり回転しながら集団登校の子らに巻き込んで行きました。

路面状態が滑りやすく悪ければチェーンを付けるべきだし、坂は100mほどで子供達が抜け切ってから降りるのが普通だと思いますが、車を走行させてしまいました。
サイドブレーキを引いて車をスタートさせている。(タイヤは回転しない状況)
救急車は呼ばれるが、子供はきつい坂の一番下で押しつぶされていて、その下のゆるい坂道も近くに来た救急車は上がれなかったと言います。
溝に押しつぶされた子が3人いましたが、3人亡くなってもおかしくない状況でしたが、どうしてかうちの子だけが亡くなりました。
駆けつけた時には、肺が破裂していました。
交通事故では済まされないと思いました。
交通事故で重度後遺症の人も沢山いますが、信じられない保険金で途中でお金は尽きます。
家族は一生つききりで、そういったことは報道されません。

1週間ぐらい食欲がなく食べる気が起きませんでした、感覚のマヒが起きます。
厭でも仕事はしなければいけなくて、顔をあげられなくて、事故で亡くなった自分の子を知っているかと叫びたくなりました。
心が固まっているので動作も遅くなります。
私は教師をしていましたが、授業に行っても本来は生徒を見て喋るタイプでしたが、黒板ばかり見てしゃべっていました。
問題を作ったりする訳ですが文章作成能力が無くなって、教師としての仕事が成り立たなくなり1月休みをいただきました。
3人の子供達もそれぞれ心に傷を負ってこれまで暮らしてきました。
かなり自分の事が精いっぱいだったので、現場にいた二人の子供の心のケア迄は気持ちが行き届かなかったと思います。
周りの先生からはそれとなくフォローを頂きました。

TAVとの出会いもありました。
同じ苦しみを共有できる。
TAVが始まったころは10件ほどの裁判があり、お互いの裁判の傍聴に行ったりして或る意味で活気のある会でした。
関西支部として独立してもいいのかなという事で、1999年3月に設立総会を開きました。
20年になりますが、本当は自然消滅する会であってほしいと思います。(被害が続いているので本来は無くなって欲しい)
心のケアの推進、交通安全の啓発の話をして欲しいとか講演活動が増えました。
被害者側の遺族に交通事故の状況の説明の機会はないんです。
法律の制度上の不備があることもあります。
容疑者を現場に連れて行って警察が聞いて、容疑者の言ったことを記録します。
被害者が信号が赤できたと言っても、加害者が青できたと言うとそれは検証しないで、青という事でほぼ通ってしまう。
被害者が亡くなっても、車の傷の請求をされる場合もあります。

色々意見のやり取りをしました。
私や私のようにう運営に関わっている方が、一方的に支援している訳ではないと言う事をお伝えしておきたい、それが自助努力です、それがTAVといううちの良さだと思っています。
どんなに苦しい状況に置かれても一人じゃないんですよ、と言いたい。
交通犯罪だけでなく、殺人、少年犯罪の犠牲者遺族等色んなところで、こんな世の中少しでも変えないうちは死ねない、という方たちが一杯見えてきてそれが救いです。
平成29年死者は3600人ぐらいで一日10人以上が亡くなり、重度後遺症はその約10倍,けがをされたかたは60万人近いです。
安心して歩けない状況にあるわけです。