2019年2月23日土曜日

松田哲博(高砂部屋マネージャー)     ・わが相撲人生シコにあり

松田哲博(高砂部屋マネージャー)     ・わが相撲人生シコにあり
鹿児島県徳之島出身 58歳、相撲が大好きで、琉球大学入学と同時に大学に相撲部を作り、卒業して大相撲の世界に入ります。
昭和58年九州場所でデビューし、しこめいは徳之島その後一ノ矢 充と改めて奮闘しますが、力士としては怪我を繰り返し46歳の時に24年間の土俵に区切りをつけました。
現役中けがを克服するためさまざまな取り組みを試みますが、たどり着いたのは相撲の基本、シコ(四股 力士が、足を交互に高く上げ、力を入れて踏みおろす運動。)でした。
シコは膝や腰の痛みの改善や予防などにも効果があることが判ったということです。

今身長は165cmで体重は80kgです。
マネージャーの仕事は主に事務関係をやっています。
手紙を出したり相撲のチケットの販売、ホームページの運営などをやっています。
小さいころから相撲が大好きで、中学高校では相撲部が無くて柔道をやっていましたが、琉球大学入学してどうしても相撲がやりたくて大学に相撲部を作りました。
朝潮太郎は父親母親と同じ小学校の卒業生でした。
現在も徳之島出身での力士が3,4人います。
大学生のころに夏休みにキャンプに来ていて、序二段とか下っ端のお相撲さんと一緒に稽古をさせてもらいました。
自分の力を試したいと思って門を叩きました。
173cmが制限かと思ったら、それよりも少ない新弟子がいたので、聞いたらおまけしてもらったという事で入門できるのかなと思いました。

宇宙に対するあこがれがあり、宇宙物理学を勉強したいと思って大学の物理学科に入りました。
卒業の研究テーマがアインシュタインとデバイの比熱曲線でした。
数式を大型コンピューターに入れて比熱曲線のグラフを書いてゆくという作業でした。
相撲界に入ることは両親には反対されると思って、相撲部屋に入ってから家に電話をしました。
父親はカンカンに怒りました。

引退が46歳11か月でした。
引退パーティーの時に母親から手紙がありました。
「最初は2年間という約束でお父さんも相撲界への入門を承諾したので、こんなに長い間お相撲を続けるとは思ってもいませんでした。
琉球大学を卒業したのにお相撲さんになったなんて言えず、お父さんも私も両親には東京へいったとしか言えず暫く隠していたんですよ。
身体が小さかったからお相撲さんとしてやっていけるか、心配していましたが、序二段で優勝してくれた時には少し安心しましたが、その一方でやはり早く辞めて教員等、他の仕事をしてくれればいいと思っていましたが、あっという間に24年もたってしまいましたね。
亡くなったお父さんが結婚を願い続けたので、私もこれからどうなってしまうのだろうかと、とても心配しました。
結婚相手が見つかったという報告を受けた時はいい人を見付けてくれたので本当に幸せに思っています。
24年という永い間大きな怪我もなく健康で頑張ってこられたのでほっとしています。
結婚したらお嫁さんを可愛がって幸せな家庭を築いて下さい。」
引退パーティーの時にこの手紙を発表したという事がありました。

20代のころは怪我ばっかりでした。
昭和58年九州場所で初土俵。
しこ名は徳之島、その後徳錦、次に「一ノ矢 充」というしこ名になりました。
24年間で取り組みは484勝511敗でした。
序二段優勝は2回でした。
前相撲があり序の口、除二段、三段目、幕下、十両、関取、小結、関脇、大関、横綱となります。
ウエートトレーニング等やりましたが、あちこち痛めてもがき苦しみました。
やってもなかなか強くなることができませんでした。
身体が小さいので人よりもやらないといけないと若いころから強すぎて、がむしゃらにやるばかりで、それが怪我の原因になりました。
「7つの診察券を持つ男」と自分であだなを付けました。
いつもどこかしら怪我をしていました。
身体の管理の方法を色々勉強したりしていました。
「シコ」を踏む事が大事だという気持ちがありました。
シコはやっぱり特別な感覚があるという思いがだんだん強くなりました。
稽古でシコに段々移していくようになってから、怪我もしにくくなってきたし、怪我をしても治りやすくなりました。

シコは全身を合理的に使う。
心気体 心と身体をつなぐのが「気」で、気を強くして行くのが「シコ」であり「テッポウ」であり、心と体が繋がれば非常ににいい動きが出来るし、考え方もしっかりしてきます。
現代の科学ではシコの複雑さ、高度さに到達できないと私自身は思っています。
シコはやればやっる程深くて面白いものです。
お相撲さんにもシコの大切さを判って欲しいと思います。
つま先を90度から120度開き、上半身を真っ直ぐにして腰を割って行く。
平たく言うと股関節を開いて構える。
そうすると血液、リンパの流れもよくなり、全身が繋がりやすくなる。
足を上げ重力を使って片足をすとんと落とす、余り腰をおとさず行い、それを交互に行う。

全身を一つに使う、全身で受けると言う事がシコが目指しているものだと思います。
あとテッポウ、 柱に向かって手で交互に突く、これも全身を繋げることだと実感しています。
江戸時代には今と同じ稽古方法が確立していて、ずーっと続けているわけです。
相撲取りにとっては横綱は神に近いような存在だというふうな気持ちです。
身体の重いお相撲さんがスクワット的なことをやると膝に来てしまうのですが、膝を開いて股関節を開いて腰を落とせば、膝には負担がかからない。
膝の関節を痛めた人は膝を開いて股関節を開いて、足の運動をすると膝に負担がかかることなく身体を動かす事が出来るので皆さんにはやってもらいたい。
小さくストンストンとシコを踏むことによって、全身の細胞が整ってきて身体もすっきりして心もすっきりしてきます。