2024年4月5日金曜日

田中 秀明(樹木医)             ・桜の新種を追い求めて!

 田中 秀明(樹木医)             ・桜の新種を追い求めて!

田中さんは40年余りに渡って桜の品種調査、研究と取り組んできました。 田中さんが長年追い求めていたのが、800の品種の中にもないという白い花の枝垂れ桜。 2018年春についにその白い花を発見しました。 どこでどの様に発見してどんな名前が付けられたのか、田中さんに桜の魅力、花の愛で方、知られざる全国の名所や銘木を併せて伺いました。

桜の開花時期になると調査があるので、咲く時期に振り回されながらあわただしくしています。 東京の下町の生まれで、子供のころは谷中の墓地、上野公園にソメイヨシノの花見に家族で出掛けたりしていました。 小さい頃から植物が好きでした。 高校は園芸関係の高校、大学は東京農業大学に進み、植物の病原菌の研究をして、卒業後は民間の樹木園に入社、公益財団法人の日本花の会に入社、茨城県の農場で桜の苗木生産や育成、品種調査などの研究に携わってきました。 現在は国内外から集めた約400種類の品種1000本の桜が植えられていて、日本植物園協会と言う団体でナショナルコレクション認定と言う制度を設けて、認定されてます。 

1989年にさくら見本園の担当になって、様々な桜と向き合うようになりなました。 僕が担当していた時に名前だけで800以上の桜が農場に保存されていました。 様々な色の桜にすっかり魅せられてしまいました。 品種の特性調査は進められていなかったので、一本一本に番号を付けて特徴など品種の整理を続けてきました。  農場にアマチュアの桜研究家の方で川崎哲也?先生が毎年きて、桜の見分け方を教えていただきました。 写真は一部にしかピントはあわないが、スケッチはより詳しく見ている。

日本花の会から桜の名所作りを応援しようという事で、名所を作る為の品種のアドバイス、桜の育成、保存管理に関する知識を取得して樹木医に認定されました。 茨城県の農場で桜の苗木を生産して、名所作りを希望する住民団体等に苗木を提供することをやっています。 8種類ほど選んで提供しています。 ソメイヨシノについてはテングス病と言うのがあり5,60年で枯れてしまう。 テングス病が全国的に拡大していることが判りました。  ソメイヨシノの提供は辞めることにしてそれに代わる「ジンダイアケボノ」というテングス病に罹りにくい桜なので、ソメイヨシノを希望するところには提供しています。 もともとは神代植物公園に植えられていたものです。

私が作った桜もあります。 さくら見本園には400種類以上の桜が保存されていています。 種をまいて3~5年してから選択して、僕が選んだのはヤエベニシダレという八重咲きの枝垂れ桜です。 花は非常に美しいが、枝が垂れるので植えられる場所が限られてくる。 「マイヒメ」と言うのは花は母親とそっくりなんだけれど、枝が枝垂れない。  ソメイヨシノの様にまず花で覆われて、淡コウ種?の美しい桜が誕生しました。  花の会が50周年を迎えてその時にお披露目しようと一般に名前を公募して「マイヒメ」にしました。 全国に植えてもらっています。 

枝垂れ桜が記念樹に植えられることが多くて、「ベニシダレ」と言う系統が何系統かありますが、白い枝垂れ桜と言うのが無かったんです。 長年探していました。 2018年の春にようやく出会う事ができました。 上野公園で高さ10m、樹齢が70年ほどの白い枝垂れ桜を見つけました。(灯台下暗しと言ったところ)  環境によって色合いが異なったりするので、本当に白い花が咲くのか、3年継続して観察しました。 接ぎ木で増やした苗木が同じ花を咲かせるのかも観察しなければいけない。 それで新しい品種として発表することになります。 発表したのは2022年です。 上野公園には「コマツオトメ」という新しい品種も発見されいます。 名前の公募をして「上野白雪枝垂れ」と言う名前になりました。 

ソメイヨシノをバックにして食べたり飲んだりするお花見を楽しむこともいいですが、文化財として価値のある桜の花一本一本愛でるのもいいのかなあと思います。 上野公園には50種類以上の桜があります。 桜を愛でる場所はインターネットで様々な場所を観ることがが出来ます。 

河津桜、山口県上関町城山?歴史公園  2月中旬から下旬です。 「ヨコワサクラ?」、三重県伊勢市 接ぎ木でなくても増える桜。 生け花の素材とする。 山里を彩ってくれる光景です。  秋田県の井川町に日本国花苑と言うところに、様々な品種100種類ぐらいあります。  一番驚いたのは徳島県神山町の枝垂れ桜、ソメイヨシノに匹敵するぐらいの花のボリュウムで、あでやかです。 「神山枝垂れ桜」と言う名前を付けました。 花の会も全国に普及する活動をしているところです。 まだまだ素晴らしいところがあるんでしょうね。

銘木としては山口県防府市の「蓬莱桜」、小学校の校庭に植えられている。 樹齢も100年以上。 子供たちも桜の保全に関わっている地域の財産。                      富山県南砺市 「向野のエドヒガン」 河川の土手に自然に生えているもの。 樹齢300年程度で地元の人がツルなどを切ったりして掘り起こしたもの。 立山連峰の残雪を背景にして非常に絵になる桜です。自分なりの図鑑を作成しているところです。