2024年4月4日木曜日

浅川智恵子(日本科学未来館館長)      ・あきらめなければ、道はひらける

 浅川智恵子(日本科学未来館館長)      ・あきらめなければ、道はひらける  

浅川さんは全盲です。 11歳の時のプールでの怪我がもとで、14歳のころ失明しました。   1985年に大手外資系企業に入社、以来点字翻訳システムやホームページリーダーなど視覚障害者の暮らしを支える様々な技術を開発してきました。 現在はスーツケース型のナビゲ―ションロボットAIスーツケースの実用化を目指しています。 3年前には東京にある日本科学未来館の館長に就任、科学技術を生かして誰一人取り残さない社会の実現を目指して、取り組みを重ねています。 

 日本科学未来館館長(第2代)に就任したのが2021年4月で、開館20周年の節目の年です。 初代館長の毛利衛さんからバトンを受け取りました。 私は人にフォーカスした研究の経験を通してこれから未来館をリードしてゆくという事で、新たなチャレンジになるという事で重責を感じました。 人の視点から科学技術を捉え未来を一緒に作ってゆくという思いを込めています。 そのための4つの入口、①ライフ、人生100年時代を迎えて今の私たちはどう生きてゆくべきなのか、という事を考えてゆこうという事、②ソサエティー、AI、ロボッティクスの普及によってどんどん変わってゆく、新たな町を一緒に考えようという事、③アース、地球環境、美しい地球に住み続けるために今の自分たちに何が出来るのか、という事を考えてゆこうという事、④フロンティア、宇宙開発などに見られる基礎科学と基礎の研究。 この4つの領域の視点から人を考えて行こうという事で様々な活動を行っていきます。 

新しい常設展を作ることになりました。 昨年11月からオープンしています。 一つはライフから老いパークを始めました。 老いをポジティブに捉えて、それぞれの老い方を積極的に考えて欲しいという思いを込めました。 二つアース、からはプラネタリークライシス、気候変動にフォーカスしたもので海面上昇、フィジーなどは海面上昇によってさまざまな変化が起きています。 没入型の映像で体験頂き、二酸化炭素のについてのことも展示しました。 三つめは7色クエストと言う未来にロボットと一緒に暮らす未来での体験型です。 又最先端のロボットを展示して、体験して貰うようなものを公開しました。  アクセスビリティーラボと言う研究室を立ち上げました。 移動のアクセスビリティーを支援するAIスーツケースの研究開発を進めています。

オトリアという新しい技術、ユーザーの方には眼鏡型のオーディオデバイスを装着頂きます。  デバイスにはスピーカーがついていて、ユーザーの位置を正確に認識できるので、ユーザーがその展示の前に行くと自動的に説明が流れるという仕組みになっています。(視覚障害者が自分のペースでいろんな展示を楽しめる。)

1958年大阪府生まれ。 子供時代はスポーツ少女で勉強には興味がありませんでした。 体育系に進み出来るならオリンピックに出たいと思っていました。  小学校5年生でかなり水泳が速くなっていて、プールの短い辺で泳いでいたら思っていたより早く壁に着いてしまいました。 顔を上げたら目の下をぶつけてしまいました。 段々視力が落ちてきて、中学2年のころに完全に失明しました。 まず体育系には行けないと夢を諦めました。 一人で何も読めなくなった。 一人で移動できなくなった。 中学卒業後は盲学校に行くことに決めました。 自立の道が開けて行けることを実感しました。 陸上、水泳、スキーとか何でもやりました。 点字を読むことは難しかった。 英語点字はすらすら読めるようになりました。 

大学は英文科に進みました。 視覚障害者がコンピューターのエンジニアとして就職したことをテレビのニュースで聞きました。  日本ライトハウス情報処理学科で2年間勉強しました。 1985年日本アイ・ビー・エム基礎研究所に入社。 パソコンでホームページの内容を音声で読み上げる実用的なソフトウエア―の開発に世界で初めて成功しました。  1997年に製品化されました。 17の数字キーでウエブにアクセスできる。(操作性をできるだけ簡単にする。) 自分で調べたいものを独力で出来るようになったのは非常に大きいです。 スマホは今や私には欠かせないツールです。 電子図書をスマホで読むことが出来ます。 

AIスーツケースの研究を行っています。 スーツケースの形をした視覚障碍者のためのナビゲーションロボットです。 ハンドルを握ると目的地まで連れていてくれるというものです。 自分が行きたいところをスマホを通して設定します。 スーツケースのハンドルの下にはタッチセンサーがついていて、握ると動き出し、離すと止まります。  障害物はスーツケースについているセンサーが認識して、よけたり、止まったりします。 アイディアが浮かんできたのが2014,5年でした。 最初のプロットタイプが出来たのが2017年ごろです。 実際に使用している状況を披露。

安全性が非常に重要なのでそれが確保できた所から実用化を目指していきたいと思います。 実用化のためには乗り越えなければいけないことがいくつかあります。  持続的にユーザーに届けることができるかどうか。 社会の理解も必要。(スーツケースと一緒に歩いていると判らない。) 行政、地域とかを巻き込んでゆく必要があります。 

私のモットーは諦めないという事です。 諦めなければ道は開ける。 一度始めたことは最後までやりきる、やり切ってから次のことを考える。 音声合成のレベルが高くなって、嬉しい事です。 障害、年齢、高齢とかの問題が無くなる社会になるために、自分に出来ることをやり切りたいなと思っています。 そのためには科学技術を最大限に生かすことが重要です。 人と人とのつながり、社会の仕組み、と言ったものを大切にして新しい社会が実現できるのではないかと思っています。