小早川 毅彦(NHK野球解説者) ・〔スポーツ明日への伝言〕 さあ春だ、開幕だ!~新たな一歩を踏み出すために~
いよいよ野球シーズンを迎えるわけですが、選手や監督、関係者にとって長いシーズンの始まりである開幕とはどんなものなのか、どんな気持ちで迎えるものなのか、開幕をテーマに小早川 毅彦さんに伺います。
開幕と言うと選手もワクワクしますし、ドキドキもします。 1シーズンちゃんと乗り切れるか、不安も入り混じって複雑な心境です。 1997年の開幕戦、広島からヤクルトに移った年、巨人戦で齊藤雅樹投手から3打席連続ホームラン。 前年指導者として契約してくれないかと言われました。 現役に未練があったので移籍をしました。 野村克也監督でした。開幕では5番一塁手で先発出場しました。 ミーティングでは齊藤投手に対して7,8割の時間と内容を使ってやって、あとの2人に対しては1,2割だったのでびっくりしました。 「斎藤投手は3ボール、1ストライクで変化球でストライクを取って来て、そのボールを見逃してしまって、3ボール-2ストライクになってしまって押さえられてしまうので、そのカウントになったら誰かそのボールを打ってくれ。」と切なる一言がありました。
第一打席初球を打ってセンター方向のホームランになりました。(私のスタイル) 576日ぶりのホームランでした。 第二打席目は2アウトランナー無し。 カウントが3ボール1ストライクにたまたまなりました。 監督を見たらうなずいていました。 100%カーブを待って臨みました。 その通りカーブが来たのでうまく捉えることが出来ました。 ライトへのホームランになりました。 戻ってきたら監督がニコッとしていました。 三打席目は3-2でヤクルトリードで6回表1アウトランナー無し。 第一打席がストレート、第二打席目がカーブで、監督が「もう判っているだろうな。」と一言言ったんです。 自分でもシンカーしかないと思っていて、シンカーを狙って打席に立ちました。 全部シンカーでした。 ちょっと高めのボールを捉える事が出来ホームランになりました。
開幕戦がいいスタアートを切れるかどうかによって、後に大きく響いて来るので一試合の重みはあると思います。 そのシーズンは西武を破って日本一になりました。 野村監督は開幕戦が大事だったといっていました。(私個人にも言ったし、マスコミにも言っていました。)
広島県出身、高校は大阪のPL学園、甲子園は2回出場、卒業後法政大学に進学、春にリーグ戦からいきなり4番を務める。 2年の秋のリーグ戦では3冠王、4年間でリーグ優勝4回、明治神宮野球大会、全日本大学野球選手権大会でそれぞれ優勝、日米大学野球でも日本代表としても活躍。 1983年(昭和58年)ドラフト2位で広島東洋カープに入団、新人王を獲得、1997年にヤクルトに移籍、1999年に現役を引退、2006年から2009年まで広島の打撃コーチも務める。
江川投手(大学の先輩)を引退に追い込んだ一発、1987年9月20日の巨人戦。 1-2とリードされていた。 9回裏2アウトランナー一塁でした。 江川さんの気迫が感じられました。 盗塁には気を使わなかったので2塁に盗塁する。 ストレートしかないと言う予感を感じました。 キャッチャーはアウトコース低めに構えるが、インコース高めでした。 完璧なスイングが出来て捉えることが出来ホームランとなりました。 江川投手の談話で「ホームランを打たれて野球人生が終わったと感じた。」と言うコメントがありました。
*「ゴールデン・スランバー」 ビートルズ
昭和53年春の高校野球選抜で3打数ヒットなし、大学1年立教大学との初戦4打席ヒットなし。 プロ野球開幕は1984年中日戦、ピンチヒッターで出てセンターフライでした。ヤクルトに移籍して野村監督との出会いがあり、野球の奥深さを知って、意外な発見があるという事を知りました。 野村監督からは「お前は器用なのか、不器用なのか。」言われて「自分としては不器用です。」とっ答えたのですが、「お前は器用な選手のようなやり方をしている。」と言われました。 後でいろいろ考えて、器用な選手は何も考えないで物事を器用にこなす、不器用な選手はいろいろ工夫をしたり、自分で考えてやるという、結局はそういったところに結びつけて行きたかった、という事なんです。 野村さんと出会って一日が楽しかったです。 野球の話と言うよりも社会人としてどうあるべきかとか、チームがどういうチームになって欲しいとか、人としてこうあるべきだと言った話の方が多かったです。
毎日ミーティングをしますが、その後で1年目の選手を集めて1時間から1時間半ミーティングをします。 野村さんが喋りながらホワイトボード書き込んで行って、それを大学ノートに書き込んで行って、キャンプが終わるとあっという間に大学ノート一冊溜まりました。広島で13年間厳しく学ぶことが出来て、その後野村さんの元に行ったので、だからよく判りました。 逆だったら今のような私になっていなかったかもしれません。
大谷翔平選手がバッターとしてどういった実績を残すんだろうという事が一つ、山本由伸選手と言うピッチャーがどれだけ貢献できるのか、と言うところが楽しみです。 個人的にはホームラン、打率など想像できないような数字になる可能性もあるのではないかと思っています。