佐々木道彦(ワイナリー代表) ・ワインで地域の食と人をつなぐ
宮城県南三陸町、この町で地域の食材と人を繋ぎたいと地道な活動を続ける人が居ます。 ワイナリー代表の佐々木道彦さん(50歳)です。 佐々木さんは震災後に町で初めてとなるワイナリーをオープンし、地域の活性化を担っています。 町に賑わいを取り戻そうと奮闘する佐々木さんに活動内容と今後の目標などを伺いました。
2020年10月に南三陸町に新しい産業としてワイナリーを興しました。 醸造したワインを販売するだけではなくレストランを併設して、ワインと地元の味を楽しむことができる。 今はカキを使ったグラタン、春はサーモンとかです。 季節によって食材が変って来ます。 海産物だけではなく、77%は山で里山では野菜、米などが栽培されているので、美味しい食材が沢山あります。 最近はツアーのお客様も沢山来ていて、又地元の方も少しづつ増えてきています。 収穫ワイン会を毎年ブドウ畑でやっています。
400ヘクタールの畑で植樹しながら増やしています。 9割ぐらいは契約農家さんからブドウを購入してワイン作りをしています。 山形県は全国4位の生産量で岩手県は全国5位の生産量です。 宮城県が45位ぐらいです。 果樹に頼らなくても農水産業で成り立ってきたからかと思います。 最初に植え始めたものが8年目になり500本ぐらいあって1トンぐらいが収穫できるようになってきました。 同じ品種でもその地域の気候風土によって味が違ってきて、同じ土地から取れる野菜、海産物と相性がいいのではないかと思います。
南三陸町に移住して5年目となります。 山形県出身で、横浜国立大学卒業後、静岡県浜松市に本社のある大手楽器メーカーに務め、東日本大震災が起きた時にボランティアで駆けつけ、その後宮城県の仙台に移住する。 最初に実際の光景を見た時にはショックでした。 がれきの撤去とかおこなって、段々町が綺麗になって行ったものの、人口は減って行って、地域に元気をもたらすのは地域に根ざした新しい産業、事業を起こさないといけないと感じていました。 会社では新規事業開発に携わっていたので、何かできないかと思って3年後に家族と共に移住しました。 たまたまワイングラスを作る機械があり、それを通してワインの魅力に引き込まれました。 ワインは人を笑顔にさせるお酒だなという事を感じました。 勉強してワイナリーを作りたいと思うようになりました。
仙台で仕事をしながらワイナリーの起業についての勉強をしました。 2015年に秋保温泉という仙台から車で30分ぐらいの所に震災後初めてワイナリーが出来て、そこでワインの仕事をやらさせて貰いました。 2017年に南三陸ワインプロジェクトがスタートしたことを知り、期待感を持ちました。 移住してから5年近くはいろんなことをしてきて、本当にこれでいいのかという思いはありました。 ワインは出来ていたので、販売については免許が必要で、法人として免許を取って行かないといけないという事です。 2019年1月南三陸地域おこし協力隊にはいって、2月に南三陸ワイナリー株式会社を立ち上げました。 4月からワイン販売スタートしました。
我々が作ったのは辛口の白ワインで、お食事と一緒に楽しむお酒なので、牡蠣、ホタテとか、鮭とか合わせて飲んで下さいと言い続けてきました。 甘めのワインが好まれるのと、ワインそのものを飲む方が当時は少なかったです。 ワイナリーをオープンさせたという事が一番の転機だったと思います。 地域おこし協力隊と言っても事業はあくまで個人のリスクでやってゆくので、何千万円と言うお金を銀行から融資をしてもらい、立ち上げたもので、ワイン作りを証明できた、理解していただいたと思っています。 水産加工場だったところを利用させてもらったり、多くの方々のご協力があって出来ました。
新しいことをやるのは自分での遣り甲斐でもあります。 大地に囲まれて季節を感じながら、自然を感じながら生きていけるというのが支えになっていると思います。 自分の毎日の楽しみが、自分でもそれが出来ていて、生活も楽しめているところが支えになっていると思います。
三陸沿岸部には「きりこ」と言う文化があり、三陸沿岸部は水害、冷害が多くて不漁、不作の時に神社へのおそなえ物として、紙を形どって神様に奉げていた。 創作きりこを作るようになって、神社以外でも創作きりこが使われるようになりました。 神社の方からきりこを切っていただいて、それをワインのラベルとして使っています。
海中熟成、ワインを海中に沈めて熟成させる。(海中の振動で熟成が早まる。) イベントとしてみんなでやります。 いろいろな異業種の方々と一緒に活動をしています。 ワインツーリズムを一昨年から始めました。 南三陸、気仙沼、陸前高田、大船渡の4都市を結んでシャトルバスを走らせて、三陸のワインを楽しむようなツアーを今年は6月に2日間やることが決まりました。 7割以上が東北以外の方が来ます。 継続していきたいと思っています。