常磐津菊与志郎(常磐津節 三味線方) ・〔にっぽんの音〕
常磐津=歌舞伎の音楽、というと、歌舞伎の音楽には常磐津節のほか、長唄、清元節、義太夫節、竹本ほかにもいろいろ三味線音楽がありますので、完全にはイコールではない。 常磐津の側からすると歌舞伎の演奏のほかに、日本舞踊の伴奏、素浄瑠璃、常磐津節の演奏だけを聞いていただく演奏会、などがあります。 創立は1747年(江戸時代の中頃)。 宮古路豊後掾という人が豊後節と共に歌舞伎で演奏してきた。 主に心中物で幕府としては治安を乱すという事で禁止されたりしました。 その弟子であった常磐津文字太夫が常磐津節を新たに作って、歌舞伎と共に発展してきた。
常磐津節の特徴は、特徴がないのが特徴みたいなところがあります。 長唄でしたら、舞台正面にずらっと並んで華やかな踊りの曲、華やかな印象がある。 清元節は色っぽい艶やかな部分があります。 常磐津節から清元節は分かれて発生しました。 高音を綺麗に聞かせるような部分が清元節の特徴です。 義太夫節は三味線は低音で、語りも力強い語りの部分がおおく、硬い印象があります。 常磐津節はよく言えば、そういったところのいいとこ取り、いろんな要素を含んでいる。 セリフもあります。
*「将門」 常磐津の中ではポピュラーな、頻繁に上演される演目です。 将門は出てこないが、将門の娘である滝夜叉姫が将門の恨みを晴らすために潜んでいるところへ、それを倒すために光圀という侍が出てくる。 その場面の一部。
声をかけるのには3つあり、①太夫さんが息を吸いやすいように声掛けする。 ②歌舞伎の役者さん、日本舞踊では踊りの方にリズムが判りやすいように声をかける。 ③曲自体に雰囲気を作ったり乗りを出したりするための掛け声。
「乗合船恵方万歳」も有名でお正月の隅田川のあたりの江戸のいろいろな風俗が出てくる。 甘酒売り、大工、芸者、通人、子守、女船頭など。 そこに三河からやってきた太夫と才蔵が合流し、船の出発を待つ間に皆それぞれ踊りを披露することになる。 7人が出てきてそれを七福神に見立てて、江戸の情緒を表す歌舞伎舞踊。 「身替座禅」も人気が高く頻繁に上演されています。
*「釣女」 人気の演目 狂言「釣針」をもとにした常磐津の「釣女」 大名と太郎冠者とはよい妻を得ようと恵比寿神社に参詣し、そのお告げによって両人は釣竿でそれぞれ女を釣ることになる。大名には美しい上﨟が釣れたが、太郎冠者の糸には醜女がかかって閉口する。 分りやすく滑稽な踊りなので人気がある。 その場面の一部。
長唄は細棹、竹本や義太夫節は太棹、常磐津は中間ぐらいの中棹の三味線を使っています。 弾き方は下の皮に当てるまで弾くのと、下からすくって弾く皮に当たらない弾き方、バチを使わない弾いたりする弾き方があります。
常磐津を始めたのは大学卒業前後ぐらいでした。 大学では長唄研究会で三味線を始めました。 先輩が津軽三味線が好きで高橋竹山の公演を一緒に聞きに行って津軽三味線を始めて、琵琶もやったりしました。 その後常磐津の師匠に入門しました。(大学卒業後)常磐津の曲は短くて10数分、長いと1時間から1時間半ありますが、暗譜しないと舞台に立てないので、覚える作業が大変でした。 失敗もいろいろありました。 弦の張り方とか、足がしびれたとか。 歌舞伎、踊りの方とかと呼吸が合って舞台全体がうまくいった時には嬉しいです。
日本の音とは、埼玉県の狭山市に住んでいるんですが、田んぼの四方八方から聞こえる蛙の声、三味線の一の糸には「さわり」というわざと音を濁らせるような弾く仕組みがついていて、その音が蛙の声に通じているのかなと思っています。 幅の広さが常磐津の魅力だと思います。