赤澤かおり(フリーライター・編集) ・〔美味しい仕事人〕 料理本を編む
家庭で料理を作る際に参考になるのが料理本。 直ぐに出来る料理のヒント、いつもと違う料理のヒント、アイディア、手の込んだ料理、新しい料理に挑戦するときなどにも料理本は役に立ってくれます。 料理本の編集に携わって四半世紀という、フリーライターで編集者の赤澤かおりさんに料理本の魅力や役立て方などを伺います。
スタートは出版社に勤めていて、編集部に配属されて車の雑誌などをやっていました。 自分の興味の方に向いて行って料理の方になって行きました。 生活の中で楽しくご飯を食べようみたいな記事が中心でした。 料理本の編集者としては25年ぐらいです。 美味しいものを皆さんと共有できたらいいなあというのが一番です。 お味噌も自分で作るとこんなに美味しいんだという事、作る楽しさなどもを知ってもらいたい。
料理本はキッチンの棚をちょっと改造してそこに沢山おいておきます。 寝室、トイレ、リビングの棚などにも置いておきます。 料理本だけで300冊ぐらいあります。 高山なおみさん,飛田和緒さん、笠原 将弘さんの本が多いです。 ハワイから買って来た外国の本があるので、今はハワイを思い出して作るものも多いです。 豚肉の塊に塩をして数日おいて、それでお出汁を取ってお水で煮て、沢山刻んだクレソンを入れます。 他にもいろいろ作りました。 豚肉にはいろんな料理法があって、干し草で豚肉の塊を煮ると柔らかくなるというようなことが80年代の本には書いてあったりしました。
シチューにご飯というのは違和感がありましたが(40年前)、こういったものもいいんだなと思いました。 本のなかで、言葉が生み出さす想像の世界は凄いことだと思います。 本の中から、こんなことをすればいいんだというような、励ましを頂いています。
高山なおみさんが神戸に引っ越しされてから初めて5年ぶりに出した「自炊。何にしようか」という本ですが、300ページを超える本です。 ドキョメンタリーの様に高山さんをドラマ仕立てにしたような1冊です。 高山さんは食べることを中心に生きていますので、沢山美味しいものが出てくるという感じです。 茄子の皮をむいて、蒸して、シバ漬けを自分で作るのがいいとおっしゃっていました。 一人で暮らしていると残るものも多いんで、どうしているかと言うような工夫の話も沢山出てきます。
食は生きる事、食べないと死んでしまう。 しかし、そこにプラスアルファが生まれてきます。 明日は何を食べようかと、必ず夜寝る前に考えます。 季節のものは取り逃がさないというような、いろいろ生きる糧になっていると思います。
料理本は出版社の企画があって降りてくる場合もありますが、私の場合はこういうものを作りたいという企画を出すところから始まります。 担当の編集者と先生と共にどういう内容にしてゆくかという事を話したりします。 何も決めずにスタートするという時も時々あります。 料理のスタイリスト、カメラマン、本のデザイナーといった方々と話し合いながらページを作っていきます。 校正を何度もやって、ようやく世の中に出ます。
料理本はレシピを知るものでもあるんですが、背景、地方都市の美味しい素材の愉しみが知れたり、先生方の言葉の特徴を読み解いたりするのも楽しいです。 ハギワラトシコさんのレシピ本を作った時に「味は整えないの」と返ってきました。 「それは自分が欲している塩加減で、整えちゃあ駄目なの。 しょっぱいのが食べたかったらしょっぱくていい。 毎回料理が整っていちゃあ駄目なの。」と言われました。 その人なりの先生方の感じをくみ取って最後を締めるようにと、考えるようになりました。
料理のレシピだけではなく、人生の愉しみを加える、プラスアルファしてくれるような1冊が出来たらいいなあと思っています。