2022年8月18日木曜日

アグネス・チャン(歌手・エッセイスト) ・【わたし終いの極意】 終活は人生最後の大冒険

アグネス・チャン(歌手・エッセイスト)・【わたし終いの極意】  終活は人生最後の大冒険 

香港生まれ、1972年に「ひなげしの花」で歌手デビューして、一躍人気アイドルになりました。  1994年にはアメリカのスタンフォード大学で教育学博士号を取得、大学で教鞭をとったり本を執筆するなど教育の分野でも力を発揮しています。   又、自身の癌体験をもとに癌検診の大切さを訴える啓発活動にも積極的に取り組んでいます。  20日に67歳の誕生日を迎えるアグネス・チャンさんに伺います。

日本での芸能活動は50年になります。   仕事、結婚、子育て、病気とかいろいろ体験して、お陰様で充実した50年だったと思います。   仕事だけではなく家庭を持ったことは私にとってありがたかったなあと思います。  2015年に「ひなげしの終活」を発売、注目を集める。 2007年に乳がんを宣告されて、もしかして命が終わるのかなあと思いました。  生きる事死のことを考えるようになりました。   その前年に顔面麻痺があり、笑う事が出来なかったり、一つ一つ出来ることに感謝しなければいけないんだなあと思いました。   NHKで乳がんに関する番組があり、観て感動してしまって、来年は現場に行って励ましたいと思いました。   会場に行くことが出来て、乳がんに関する知識も色々得て、1週間ぐらいしてテレビを見ている時に、右胸がちょっとかゆいかなと思って掻いてみたらちっちゃなしこりがありました。   もしかしてと思って調べてみたら早期の癌でした。  食事とか健康には気を付けていましたが、宣告された時には頭が真っ白でした。   その時には小学校5年生の子はどうすればいいんだと頭に浮かびました。   

終活」というと後ろ向きな感じがしますが、自由になって夢を追いかける時期だと思うんです。   私たちが楽しく生きていることが若者にはいい手本なんです。   終活は人生最後のチャレンジ、冒険です。  そして自分の何かを残すという事、文化、特技を伝え教えるとか。    自分の残した種が芽になり、花が咲き、種になり、次の世代につながってゆく。  或る意味死んではいない、身体はなくても魂が残ってゆく。   

母は香港にいて97,8歳になります。  1年に半分ぐらい帰って介護しています。    一緒にいることが一番の孝行かなと思いました。   母が昔歌ってくれた歌を耳元で歌ってあげたり手を握ってあげたりしています。   母は向上心のある人で私たちも刺激されてやりますが、なかなか褒めてはくれなかったです。   子供たち3人ともスタンフォード大学に行きました。  どんな育て方をしたのか、という事で本を書くことにしたらと言われて、出版して日本でもベストセラーになりました。  香港、台湾でもベストセラーになりました。    ポイントは毎日を楽しくする、そうすれば好奇心、向学心も育って、エキサイティングな子育てをしようと思いました。    

ユニセフの活動で電話も通じない海外に行きますが、幼い子を10日間みなくてはいけない時もあり、母親がいない時でも楽しく過ごせる方法を考えて、ビックリ袋を作ったんです。  その中にいろいろなものを入れるんですが、面倒を見る人が夜になるとそれを隠すんです。 朝起きると子供たりはそれを捜していろいろ遊ぶわけです。  

一番上の子が36歳になります。  1998年に初代日本ユニセフ協会大使に就任。  児童買春、児童ポルノの問題でタイに行きました。   貧困のせいで親が子供を売ってしまうわけです。  100%性病になり中にはエイズになってしまう子もいます。    発病すると売春宿によっては山奥に捨ててしまいます。  そういった子をどうやって力になって行けるのか、いつも考えさせられました。   翌年は南スーダンに行って、それは児童兵士の問題でした。  何十年も内戦が続いて、末期になると子供たちを使うんです。   私はクリスチャンですが、どうして神様はこういうことをやったんだろう、とか改めて悩んでしまって、同行の看護師さんから「理屈を言う暇があるなら、 与えられた役目を果たしなさいよ」と言われて、「役目は何だろう」と言ったら、「たくさんの人と話をして現状を広めるのが貴方の役目でしょう。 自分のできるところをやりなさい。」と言われて衝撃でした。   

がんになって負のことばっかりだとは思わないんです。   命の大事さが判ったし、2人に1人はがんになる時代になり、残った人は看病をするというようになり、無関係の人はほぼいなくなる。  女性の検診率が低い。  検診率の向上を掲げ、10%を割るようなところもありましたが、いまは大体40数%、70%程度に検診率も上がってきた地域もあります。  一生懸命活動すれば、後輩を通し私の魂がほの人に感じれば、それこそ命のリレーです。 

病気になったせいなのか、生きてることが奇跡で、歳を重ねるのは、身体が出来るだけ健康でいたいというのが大前提で、見た目がどうかとかはあまり気にしていないです。     笑顔が絶えなければ若く見えると思うし、前向きなエネルギーで若く見せようと思います。 食事には気を付けるようにしています。   肥らないように現状維持を心掛けています。 人は老け方が違う、18歳でも無気力だと老人のように見え、70代でも生き生きしている人は少年のように見える、身体と相談しながらどのぐらいできるのか、そっちが大事だと思います。   50周年の記念曲とアルバムも発売されて、新刊(「0歳教育」)も発売になって、絵本も4冊発売になり、絵も自分で描きました。  

人間の持っている最大の力は愛する気持ちだと思います。  齢を重ねることは怖がらずに、人を愛する気持ちはいつまでも無くさないで、それだけ信じて毎日やって行けば何とかなるんじゃないかと思います。  わたし終いの極意とは、「毎日が誕生日」です。   毎日新しい自分が生まれ、ハッピーになれる。