2019年4月30日火曜日

増島みどり(スポーツライター)      ・「スポーツと"平成"」~後半~

増島みどり(スポーツライター)      ・「スポーツと"平成"」~後半~
山本浩((法政大学スポーツ健康学部教授)
進行;工藤三郎アンカー

増島:「海を渡る・・・」と言うのは古い表現になってしまいました。
野茂投手のころはそういった感覚だったかもしれないが、今はそういった感覚はないです。
山本:今では学生のころからシーズンを選んで海外で暮らす事が当たり前になってきています。(スキーとか雪を求めて)
工藤:チームが何処の国にあろうが、同じ様なチーム、クラブの哲学を持って運営していくんだと言う事が、特にサッカーなどは多いのでは。
山本:使える者を使う、何処の出身だとかは関係が無い。
増島:若い人が向こうで存在を築いてしまっていて、日本に帰ってきてどうしようかなと言う形になってきている。
工藤:日本的な上下関係の在り方、人間関係、スポーツの位置づけのようなもの、そこが日常のレベルから、変わってくる流れになってきているのではないか。
山本:日本のスポーツは、あらかじめ決められた社会の仕組みがあり、そこに自分がピースとして入って行く格好になるが、海外では一人ひとりが自分の権利と能力を出す、それが受け入れられないなら別の処に行くと言う発想です。
或る意味実力勝負です。
最近のプロ野球でもそういう発想になってきている。

増島:指導ライセンスの存在、これは大きいと思います。
ライセンスも物凄く色々な段階があるようになりました。
山本:法人化をしてきてスポーツ各競技団体のガバナンスが問われるようになってきている。
情報も容易に行き来するようになった。
野球でセンターカメラでバッターの表情まで捕えられるようにカメラの性能も向上して、スター化が可能になる。
冬のスポーツは顔を覆っていて、カ-リングとフィギュアというスポーツはそうではないので,人気が上がってくる。
回線、昔は数がすくなくて、政治関係に関するものに主が行ってしまっていた。
回線が多くなるとスポーツなどで海外のゲームなども出されるようになってきている。
増島:ツールとスポーツの関係を抜きにしては考えれないと思います。
工藤:ネットの存在、情報の処理、スポーツの楽しみ方がかわってきたと思います。
山本:データの収集には随分時間がかかったが、今はなにもしないでぽっと出てきてしまう。
VTRは昔は大事なシーンを扱ったが今はプレーとプレーの間がリプレイされて、技術解説の時間が非常に増える。
同時に終わったプレイしか再生されないので過去に重心を置いた話になりがちです、スポーツの本来の醍醐味は未来へ向かう、放送そのものも変わってきていると思います。
TV、ネット、移動体通信の変化、スポーツを観る人の感覚が変わってきている。
増島:細分化、専門的になっている、その中心に居るのがファンの方ですね。
工藤:スポーツをビジネスとして成立するようになってきた。
平成の終わりごろにはネットのほうが巨大なお金を投資するようになってきたが、Jリーグが先駆的に動いてきた。
山本:スポーツを沢山の人が消費したがる、品質のいいものを欲しがるようになる、品質のいい選手、チーム同士の試合を観たいと思う。
サッカーで18もあると商品価値の低い試合などもあり、それが結果的にうまく統合されて大きな金とくっついてゆく、そういう流れにきているような気がします。
山本:ネットで見ている人間の方が多いと思います。
増島:若い人たちはネットで見ることが何ともないですね。
工藤:スポーツとお金の関係は或る種一線を引きながら存在していってスポーツの価値を高めるようなものがあったと思いますが、スポーツのよさを如何に守って行くのか、危惧するところもありますが。
山本:ドイツのカール・ディームと言う人がいますが、スポーツの価値はいったいなんなのかということですが、スポーツをやっている時に凄く楽しくて、結果に対して物凄く自分が打たれる、この二つがあるんだとこれを自分がしたいがためスポーツをやるんだと、それをお金の為にやるんだったら本来のスポーツの狙いと違うと言う事でアマチュアにこだわる訳です。
お金を貰ってスポーツをやる人達はそういうものを人に届ける、楽しかった事、勝った時の喜びを人に届けたいんだと、そのためには自分を常にそういう状況に置いておかないといけないので、そのためにはお金がいるんだという理窟だと思います。
プロとアマチュアとの境い目がすこしづつずれたり入り混じったのが平成だったと思います。
増島:スポーツの魅力は徹底したリアリティーだと思いますが。
AIがスポーツを変えると言った時にスポーツの何処を変えるのかと言うふうに考えるときはあります。
山本:ビッグデータを瞬時に計算しながらつぎの行動を予測するかとか、それを防ぐための策を授けるとかそういったことを要求していると思う。
勝負の判定にも当たり前のように要求してくる。
厳密性を要求する時代になってきている。
増島:ツールなど大変革がありました。
観る部分でも変わった時代だったと思います。
山本:平成の時代で話題になたのは不祥事の問題です、暴力的な指導、コンプライアンス、こういったことを令和の時代には過去のことにできるかどうか。
法令を整備するだけではだめだと思います。
社会の価値観がどういうふうにここの処に結実するのか、これが無いと令和の時代もやれやれと言う訳にはいかないと思います、
増島:組織の整理は必要だと思います。
インテグリティー(integrity 高潔、透明性、公正さ)、特にスポーツには求められると思います。
山本:この子は世界大会でも国内大会でも大したことはなかったが、物凄く幸せなスポーツ人生を今でも送っているよという子供をどんどん育てる指導者にもっともっと光を当てる時代が来なければいけないと思います。