2022年1月20日木曜日

佐藤仙務(起業家)           ・寝たきり社長がひらく 障害者の未来

佐藤仙務(起業家)           ・寝たきり社長がひらく 障害者の未来 

愛知県東海市在住、30歳。 生まれた時から脊髄性筋萎縮症という進行性の難病を患い自分の身体を自由に動かすことが出来ません。   寝たきりで生活する中、2011年ホームページや名刺の作成を手掛ける会社を幼馴染と共に起業、持ち前の熱意と工夫で会社を経営する上での様々な壁を乗り越えてきました。  佐藤さんに働くことへの思いを伺いました。

話をすることと、顔の表情と指先数センチ動かす程度です。   天井方向にパソコンのディスプレイがあり、目でパソコンを操作するのを補っています。   目で見ているところがマウスのカーソルポイントとなっています。  ホームページや名刺の作成、パンフレットのデザインの仕事を行っています。   ほかの人たちも一緒に仕事をしてパソコンの中で仕事が完結するようになっています。   メールも行います。  目で操作する前は手で操作していましたが、手の力が無くなってきて、目で操作するというものに出会って、以前と比べたら10,20倍の速さで行えるようになって、段々楽になっています。   

小学1年生から高校まで名古屋の養護学校に通っていました。   高校3年生になり重度障害者が働ける場所って世の中にないという事が気付きました。    会社を興して自分で仕事を作るというのが、働くための最終選択肢だったんです。   2011年に「仙拓」という会社を幼馴染と共に立ち上げました。   正当な対価を得たいと思っていました。    当時重度障害者にとって1か月1万円でも凄いと言われるような状態です。   私は男兄弟の3番目で、兄2人は健常者で通常に就職して生活費を稼いでいました。    自分も働いてお金を稼ぎたいという思いは強かったです。    アルバイトとかもしたことがなく人生で初めての仕事が社長業でした。  何にも分からない状態での怖さと不安はありました。  19歳で障害者で寝た切りでという事は前例がなかったので、自分たちがうまくいったら、ほかに障害を持っている人たちが自分にもできるかもしれないと思ってもらえるきっかけになってくれたらいいなあと思いました。    

実際会社を立ち上げましたが、仕事が全然来なくて、会社が空中分解するのではないかという不安のなかで、ビジネスの世界は私たちを特別な扱いをしないで、もしこの社会で稼げるようになったら、認めてくれるようになるかもしれないと、逆転の発想をしました。   こういう会社があるんだよという事を皆さんに知ってもらわないといけないと思って、フェースブック、ツイッター、SNSで日々の自分たちの活動を皆さんに見ていただくという事をやり始めました。  最初はほとんど相手にされませんでしたが、続けることで段々返事が増えて行きました。  最初は長文でしたが、パッと見て判るように工夫し始めました。   少しづつ仕事へと結びついていきました。   

自分は好奇心旺盛な性格だとは思います。   周りに亡くなった人もいて、毎日が当たり前のようにあるというのは絶対に思ってはいけないと思っています。   私も重篤な肺炎に罹って目の前に死が近づいたことがあって、物事の価値観、感覚というのは変わるなと思います。     仕事が全てでもないし、家族、友人、自分の大切な人と過ごす時間が大切だから、そのために仕事をして世の中と関わって役に立って、お金を稼いでという事が大事だと思います。   人生の中の優先順位というものは、自分が死を目前にして考え方が変わると思います。   何のために生まれてきたかというと、人と出会うために生まれてきたのかなあと思います。   いろんな人に出会うと自分の中で、あっ、こんな自分もいたんだなと、本当の自分にも出会えると僕は思います。  仕事はあくまで手段なので、手段を通じて人と出会って、人と関わってと言うほうが本当は大事なんだと思います。   周りから絶無理だといわれていたのをやってきて、今回も何とかなると思って頑張ろうというのも人とのつながりだと思います。   

他人よりできないことが多くて自分は弱いなあと感じることがありますが、人の本当の強さは弱さの中にあるのかなあと思っていて、2年前の入院の中から自分がこういうところが不便だから、もっとこうあったらいいとか、思ったところを今の仕事に生かしているところが沢山あると思うので、自分が弱いなあと思った部分がいろいろ感じるところがあります。

コロナ禍になって世の中がテレワークが多くなってきて、今まで以上に仕事はしやすくなったと感じます。   この2年で健常者と障害者というのがほんの少し縮まったように感じます。   入院していた時に医師からもうご飯を食べることはできませんと言われて、こんなに「食」という事は大切だったんだなあと思い知らされて、病院、施設などで外へ行って食べれない人とか、「食」って単に栄養を取るというだけではなくて、人に生きる力を与えるという風に考えた時に、自分の会社で仕事にしたいなあと考えました。  新たなチャレンジかなあと思います。  キッチンカーであれば障害の方へも行くことができると考えて、移動販売をやってみようかなあと考えました。   ホットサンド、・・・(聞き取れず)ず)、クレープなどの販売を考えています。  障害者に食べやすいように工夫しています。  

創業10年、こんな会社、社会だったらもっとみんなが幸せに暮らせると、描いたものを実現するにはまだ1/10にも行っていないと思います。  色々考えてはいますが、考えることも大切ですが、行動に起こすことがもっと大切だと思います。   凄くいい発想でも実現しないと何にもならない、考え抜いたものを実現するという事が大切だと思います。 

自分のことを好きになるのには、可成り努力が必要で、人に比べて自分には出来ないとか、自分にはないとか、人と比べるのは単なる嫉妬で、僕は人生で一番厄介だなと感じているのが嫉妬なんですね。   嫉妬はその人を駄目にしてしまうと考えていて、嫉妬を考えるとどんどんマイナスの方向になってしまう。  もっと自分のことを好きになろうという努力がかなり必要と思います。   何かを実現しようと思ったら、自分の心の中で約束することなので、必ず言葉に出します。  僕に取って起業は人生の選択肢を一つ新たに増やしてくれたものかなと思っています。  まだまだ障害者にとって日常の選択肢が少ないので、選択肢をご提案し続けられるような会社にしたいと思っています。