穂村弘(歌人) ・【ほむほむのふむふむ】
1月に「図書館の外は嵐 穂村弘の図書館日記」が出版され、装丁がヒグチユウコさん、本を読んでいる女の子を取り囲んでいる動物たち、その外は嵐。
周りは本の好きな人達で本を紹介されたり、本と本で繋がりがあるから、そういう楽しさがあるような気がします。 書くことと読むととは凄く繋がっているみたいです。 ペンを持っていて読むときもペンが受信アンテナみたいな役割をしています。
最近の作品
*「夜更かしの人がどこかにいることが救いだという夜更かしの人」 穂村弘
自分のことで、朝まで起きていることが多くて、凄く寂しくなるんです。 夜自分以外のものが動いていたら寂しくないと思うんですが。
*「友達が遠くなるのはなぜだろう銀河と銀河と銀河のように」 穂村弘
友達同士の距離は歳をとるにつれて遠くなる。 銀河のように集合的に遠いい。
*「光線の記憶のごとく懐かしむ友人たちの恋人たちよ」 穂村弘
自分だけがそんな遠い昔のことを描いているような気がしてならない。
*「今そこにいる人間がいるんだとおもって行く年くる年を見る」 穂村弘
ゆく年くる年を見ると不思議な気持ちに昔からなるんです。 各地を映すがそこには絶対誰かがいるんです。 年が入れ替わる瞬間の映像に同時性を感じます。
*「「穂村さんスイカの準備が早すぎるまだまだかざさなくてもいいよ」」 穂村弘
言われるまで気付かなかった。 どうでもいいような事を心配されることが幸せな気持ちになります。
*「このへんはあぶないよって嬉しそうイルカの水しぶきがかかるって」 穂村弘
イルカショーの水しぶきを若いころは楽しむが、歳をとってくると後ろのほうで見ればいいという感じになってしまっていて、昔のイメージです。
*「明智さんとつぶやきながら陽炎の陸橋渡る小林老人」 穂村弘
明智さんは明智小五郎、小林老人は年老いてしまった小林少年、今の僕の心境がよく出ていて・・・。 小説の中では歳を取らないが、現実には年を取って行く。 明智小五郎も、怪人二十面相もすでにいなくて、生き生きと闘っていた時自分も明智さんを助けて活躍する青春があった。 もう自分は年老いて陸橋もゆっくりと渡る。 明智さん
*「叫びつつ行く人々とすれ違うプールサイドにイルカが堕ちた」 穂村弘
人間を喜ばせるために芸をしているのに、そんな目にあったらかわいそうという事と、何か青春の終わりみたいなものがイメージの中でかぶっている。
*「ペンギンは微動だにせず頭上には入道雲の群れ湧き上がる」 穂村弘
ペンギンって水族館などでは本当に動かない。 それと入道雲は生き物みたいに空にわいてくる。 そんな対比です。
*「海軍のカレーライスを試食する僕らに夏が近づいて来る」 穂村弘
戦争にはいかないだろうと思いつつ、海軍のカレーライスを試食して、夏が、青春が近づいてくるというようなかつてのきらめきのイメージですかね。 水しぶきが絶対にかからないような席に座るようになっら、青春は死んでいるみたいな・・・。
*「スキップ通り一瞬びくっとしたけれどみんな普通に歩いています。」 穂村弘
武蔵境の駅の通りにスキップ通りがありましたが、一瞬びっくりしましたが、みんな普通に歩いていました。
リスナーの作品
*「階段の踊り場という蠱惑的響きに惹かれステップを踏む」
*「お正月せかす私に母は笑みふくら雀にポンとその手が」
晴着をお母さんに着せてもらっている。 ふくら雀は帯の結び方。 お母さんに着付けをしてもらって、ハイ出来ましたとポンと叩く仕草。
*「雨粒を拾って全部投げつけてしまいたかった判る判って」
無意味な行動なんだけれども、その虚しさの中に感情が伝わって来ます。
注:*印の短歌はひらがな、漢字等違っている可能性があります。