高野孝子(野外・環境教育活動家) ・【心に花を咲かせて】自然は人を変える
高野さんは自然のなかでの体験から学ぶ教育プロジェクトの企画運営に長きにわたって取り組んでいる方です。 環境教育NPOを作り、ミクロネシアの島ヤップ島で電気もガスも水もない中、子供たちが自分たちの工夫で暮らすキャンプをさせる活動を毎年一回30年にわたって続けたり、地元新潟を拠点に自然キャンプや無農薬のお米作り、自然の中で暮らす技を古老に聞くなど様々な活動をされています高野さん、社会貢献活動に献身する女性7年に向けた「オメガアワード2002」を緒方貞子さんや吉永小百合さんと共に受賞、2017年には「ジャパンアウトドアリーダーズアワード 2017」の特別賞を受賞されるなど自然の中で人を育てる活動が大きく評価されています。 高野さんが大事なことと考えていることは何なんでしょうか、高野さんに伺いました。
アマゾン川源流を1000kmカヌーで下ったり、ベーリング海峡横断、北極圏をパラシュートで降下したり、冒険家として20代~30代に活躍。 地球規模の教育プロジェクトを企画運営して体験から学ぶキャンプに集中して、福井県でも子供キャンプをしています。
コロナでできないだろうと思っていたら、できるやり方を考えていろんな体験活動をさせてあげたいという事で、万全の感染対策を整えて2泊3日で行いました。
子供たちはテントを張って我々大人たちはブルーシートを屋根替わりをして、外で暮らすという体験です。 5人用テントを2人で使うようにしました。
地域の高齢の方に来ていただいて、昔遊びを習ったり、竹を切ってその竹からどんなものが作れるか、遊べるかというような事をやったりしました。
今ある便利なものがなくてもきちんと命をつないでいける、但し健全な自然があって、そういったものを取り出す知識と技術があればできる、という事を体験的に学んでもらう。
トイレは自分たちで作りました。(大きさなど考えて穴を掘って排泄物を自然に帰す。)
トイレットペーパーについても、おじいさんの時代にはくずの葉っぱで使っていたという事で全員トライしました。
台所用品は鍋とお玉、菜箸、へらだけです。(ナイフは持ってるがまな板はない)
自由に工夫できる環境にして大人も干渉はしない。
急に違うことをやるので戸惑うが、すぐに工夫をし始めます。
マッチは使うが、火をおこしてゆく段階は難しい、最終的にはご飯も炊けるがお惣菜も出来て、その達成感はめちゃめちゃ楽しいです。
キャンプを終えた後は自信を持つ、屋根さえあれば寝れるとか、外でトイレをすることは嫌だけれどやろうとすれば出来るとわかった、というような事を言っていてこれは成長だと思います。 人とかかわることの喜びもあると言っています。
ヤップ島では電気もガスも水もない中、子供たちが自分たちの工夫で暮らすキャンプで、30年近くやっていて、島も変わってきて、最近は電気、電話、もあって車もありますが、私たちが行くとそういったものがないところで寝泊まりさせてもらっています。
始めた動機は一緒に社会を作る、考える仲間を作りたかった。(20代後半)
小さい頃は割と自然が豊かな場所でした。(新潟県南魚沼郡塩沢町) 大学院生の時にあるプログラムに参加して、各地に行って3か月間一緒に暮らす、ホテルではなくて自然の中で暮らすという事で、これが大きい体験でした。
日本人は私だけで、インフラの無いところで、水を確保し、食べ物は持ち込みましたが、煮炊きするすべを確保して暮らしを始めますが、厳しい環境ですがちょっとした工夫で日々が楽しくなるという事を学びました。
人間って世界のなかでいきている大勢の人の命の中の一つだと痛感しました。
全てのところで互いに依存しあっている生き物同士の真っただ中で常に体験していました。
ヒルに吸い付かれる森の中を歩くんですが、森の中にもたくさんの生き物がいてお互いに必要としていることが判って、ヒルは嫌ですが、ヒルのお陰で生きているものもいてヒルが果たしている役割もあるという事が自然と納得できました。
ある沼に夕方になると野生の生き物たちが水を飲みに来るという事で茂みにいて、夕日が沈んできたら、あちこちからいろんな動物が集まってきて、オレンジ色の夕日の光とその場所が混じるようになって、そこに飛び出していきたい衝撃にかられました。 一緒に水を飲もうとしたら彼らはどういう反応をするのかと思いました。(いかなかったが。)
3か月の経験が今の活動につながっています。
文化の違い、言葉、宗教、育ち方、仕事も違う人達と生活する中で、違いを受け入れるという事が自然と身についたことが、原点になっています。 平和な社会を作ることができるはずだと思わせてくれる一つの経験でした。
自然のなかで暮らすことでプライバシーもほとんどなく、同じものを食べて、同じ課題に取り組んで工夫しながら毎日を過ごすと、生活がシンプルなだけに相手のことが見えやすいし、心の中に持っていた飾りがそぎ落とされて、運命共同体のような環境です。
子供のころから好奇心が強くて、アメリカに1年留学して帰ってきて、ますます違う価値観に触れることは大切なんだと思っていましたが、日本で過ごすうちに忘れそぅだと思って出ていきたいと思いました。 多様なものに出会うと自分のあたりまえが崩れる、そうすると私にとってはめちゃめちゃに楽しいことでした。
それで3か月間のプログラムに参加しました。
シンプルな暮らしを体験することはすべきだと思っていて、本当に大事なものが判って来ると思います。
大事なものは人とかかわる力、信用してもらえるような自分、というような事だと思います。
ヤップ島での体験者は小学生から青年までいますが、昨年その調査をしたんですがその経験から、時間が経過して20年過ぎても影響を与えているという事が見えてきました.。 その経験を踏まえて自分の価値観の一部になっていると書いてくれたりしています。
工夫する力は前の人達のほうが多かったと思います。
去年池田町でキャンプをしていた中学生が高齢者に聞き取り調査をして、子供たちが驚いたことに私は吃驚したんですが、昔は約束をしないでも遊び相手がいたとか、その辺にあるもので遊んでいた、子供だけで遊んでいた、というような事に驚いています、裏返せば今はそういうものがないという事です。
自然の中で工夫して暮らすという事は生きる力、折り合いをつける力とかだと思います。
これからも自然の中での学びの場つくりをしていきたいと思います。