2020年8月15日土曜日

令丈ヒロ子(児童書作家)         ・【戦争・平和インタビュー】「戦争を知らない私から子どもたちへ」

令丈ヒロ子(児童書作家)         ・【戦争・平和インタビュー】「戦争を知らない私から子どもたちへ」 

令丈さんは子供たちが楽しめるファンタジー作品を数多く執筆、代表作「わかおかみ」や「小学生シリーズ」は累計で300万部以上を売りあげ、これを原作としたアニメ映画は日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞するヒット作となりました   デビューから30年ユーモアあふれる作風で愛されています。   そんな令丈さんの作品の中で唯一戦争を題材に書かれたのが「パンプキン!模擬原爆の夏」です。  1945年日本各地に落とされた原爆の投下訓練のための爆弾模擬原爆について、主人公の少女と少年がともに調べ事実に迫ってゆく物語です。   自ら戦争を経験したことのない令丈さんがどのような思いをもって、どのようにして子供たちに伝えるための作品を作り上げていったのかを伺いました。

パンプキン模擬原爆とは、1945年8月9日に長崎に投下された原子爆弾がありますが、丸くてずんぐりむっくりしていてその形からファットマンという名前がついていました、ファットマンと同じ大きさ、重さ、同じ形で中に核物質は入っていないが、火薬が入っていて原子爆弾の投下練習として作られた模擬原子爆弾です。

パイロットが目的地に落とすときに、風が上がって旋風で飛行機が巻き込まれてしまうので、巻き込まれないように、正確に落とすための練習としてパンプキン模擬原爆が作られました。

本当は50発でしたが1発は海上投機されていて、49発が北海道、沖縄を除いて日本各地に落とされたということです。  大阪は7月26日に東住吉区に投下されました。   死者は7名で負傷者は73名ということです。

2003年に自転車で通りかかったときに石板があり、読んでみたら模擬原子爆弾で亡くなった方の慰霊のために建てたという文章があり吃驚しました。

模擬原子爆弾って何と思いました。

2008年にその碑の近くに引っ越してきて、地元の街並み保存委員会のメンバーになったというのがきっかけで、初めてどういうものか知りました。

作家だったらこのことを本に書いてほしいといわれて、実際にあったこと、戦争をテーマにした本は書いたことがなかったが、見過ごすことができないという思いがあり、やらなければいけないと突然思いました。

それまでは子供たちが楽しめるような本を書いてきましたが、伝えようとかの意思で本に取り組んだことがありませんでした。

最初は元になる資料、米軍資料の「原爆投下報告書」がすべての大元になっています。

日本の原爆投下候補地をどう絞っていったかとか詳細に書かれています。

1945年4月27日に第一回原爆投下目標剪定委員会がありました。

人口が多い都市が入っています、東京、大阪、京都、佐世保、福岡、横浜・・・・・・。

会議が進んで7月25日に広島、小倉、新潟、長崎に対して原爆投下命令が下されるわけですが、ちょっと前の原爆実験に成功した直後からパンプキン模擬原爆が投下されます。

この資料を読んで大まかな計画、全貌が判りました。

近所に住んでいる方で、長崎で被爆された山科和子さんが一瞬でご家族を亡くして、ご自身も放射能の後遺症で長く苦しんだんですが、非常に頭脳明晰な方で通訳をされていて、自分の被爆体験を日本全国、海外の学校にいって語り部としての活動をしていて、その人を紹介してもらって話を聞く機会ができました。

聞いていて壮絶な体験なので安易に聞いていいのかと思いました、そして結婚はされたが、子供はつくらかなったとか、言っていました。

アメリカによって落とされた爆弾で家族を失ったので、アメリカに行くのは抵抗がなかったかどうか聞きましたが、私は割り切っていたのではないかと思ったが、そうではなくて全然嫌でしたとのことでした。

アメリカの学生さんに原子爆弾は持たないほうがいいとか、戦争はよくないということ体験談を話したら、泣いて話を聞いてくれて、話してよかったと言っていました。

本を出すにあたって体験談として出しても世の中には多くあるので、どうすべきか考えていたら、山科さんが長崎はいい街でいろんな国の人が共存していたと、お互いを尊重していたとおっしゃって、そういう世界がこの先も出来ないはずはないとおっしゃって、それが本のテーマとして、その言葉をうまく伝えるような作品にできないかと思いました。

フィクションとして小学生の男の子と女の子を主人公にしたほうが感情移入しやすのかと思いました。

読みやすいようには工夫しました。(子供が調べてゆくスタイル)

主人公たくみ君らを通して大事な問題の破片を盛り込んで、過去に何があったか知ることも大事で、アメリカ、中国、韓国などの現在の文化は知っているが、当時のことは知らないが段々と調べてゆくにしたがってわかってきてショックを受けてゆくわけです。

この本は血が飛び散ったり目の前で家族亡くなってしまうとか痛々しい場面はないです。

未来につなげる考えも入れないと児童書作家である意味がないのではないかと思ってまずは手に取りやすいように工夫をしました。

これをきっかけにしていろんなことに興味を持ってほしいという入り口として、事実を知ってほしいということで、知りたいことは自分で調べるとか、やっていってくれたらいいと思ってこういう話にしました。

過去を知らないと未来のビジョンは立てられないと思うので、戦争の事実はしっかり知っておいてほしいとは思いました。

より良い未来を作る有力な手掛かりの一つとして知識があると思うのでちょっとでも貢献できればと思いました。