若本規夫(声優) ・【時代を創った声】
73歳、アニメサザエさんのマスオさんの会社の同僚、穴子さんや、カツオの同級生花沢さんのお父さんなどを始め、名わき役として知られています。
多くのナレーションやゲームに出演しています。
そんな若本さんがブレークしたのは実は50歳を過ぎてから。
それまでの自分の演技や話し方を徹底的に見直したという若本さんに伺いました。
もうすぐ声優人生50年というところです。
アニメ『サザエさん』のほかに『ドラゴンボールZ』、『北斗の拳』などでも活躍しています。
ゲームの出演が多いです、悪役です。
悪役は難しい、個性がないといけない。
呼吸がまず違います、荒くなる。
声は身体の呼吸から出てくるから、呼吸が変わらなければ多彩な役は演じられないという事はある。
訓練、修行は7割ぐらいが呼吸です。
気取ると、気取った分だけリアリティーがなくなる。
ルーツはリアリティーがないと、それは地べたの喋り方(自分のもっている喋り)です。
大阪育ち、早稲田大学法学部卒業。
ひそかに思ったのは大学院に行きたかったが、10月に受けたがこの成績ではだめだといわれた。
警察官募集のポスターがあり、11月1日が募集日で応募して採用通知が来て4月1日入りました。
交番勤務となったが、警察学校含めて1年半でやめてしまった。
日本消費者連盟のところにいって、そこでも2年ぐらいでやめてしまった。
黒沢良さんが声優を養成しようとしてオーディションがあり、これだと思いました。
25,6歳の時で周りはみんな若かった。
20人募集だったが大勢来ていて駄目かなあと思っていた。
10日ぐらいしてから合格通知が来ました。
ほかの人は全部バツだったが、養成所の最高権力者だった東北新社の中野寛次さんだけが僕を拾ってくれました。
その人がいなかったら今の僕はいなかったです。
当初は右も左も判らず苦労しました。
呼吸のことが判っててくるまで、20年、25年かかりました。
アメリカの歌手でスーザン・オズボーンという人が1年に一回ぐらい歌手に教えに来るという事で聞きに行きました。
「歌というものはため息ですよ、ため息が混ざらなないと歌にならない」というんです。
そのことがきっかけになり息と声をどういう風に混ぜればいいか考えましたが、教えてくれる人は日本にはいなかった。
当時は仕事に行き詰っていました。
新規の仕事が入らなくなりました。
自分の演技を聞いてみたらこれではだめだと思いました、リアリティーがなかった。
イタリアのトランペットの人のインタビュー記事を読んだら、「トップに上り詰めるためには気の遠くなるような毎日の練習が必要だ。・・・毎日8~9時間練習を繰りす。・・・」
この記事を読んで今までの練習は遊びのような感じでした。
今でも休みの日は6時間ぐらいはやります。
いろんな方法を抽出してやってきました。
好きなことをやって嫌なことはやらないようにしました。
声優というのは単なる声を操っているだけではだめだと認識しました。
生きている声なのか死んでいる声なのか、中間は無い。
頑張れるのは、究極の表現をしたいという欲望ですね。
最初は悩んだが穴子役はサラリーマンとして縫って歩くような声を出せばいいと思いました。
声優志願の手紙を100通ぐらい来ているが、真剣な内容のものもあります。
声優は3年やって一回も声が掛からないようであれば辞めた方がいいと思います。
人のことは考えずに自分のことに専念すればいい。