古庄紀治(染織家) ・藍染に生きる
70歳、藍染の青は古くから生活に密着した、すがすがしい色として親しまれてきました。
江戸幕府は庶民の着る物の色を制限しましたが鼠、藍、茶は例外としたため、渋くて美しい藍色が様々に工夫されました。
藍色は多くの植物から染めだされますが、なかでも蓼藍(たであい)は桃山時代から阿波地方で栽培が盛んとなって、徳川家御用の高級品から庶民向け物まで生活用品に幅広く使われてきました。
所が明治に入って化学染料の流入によって、植物染料の藍の利用は一気にすたれてゆくことになりました。
そんな中で徳島市の古庄家は代々植物染料の藍を使った藍染めに取り組み、6代目の紀治さんも昔ながらの手法による藍染めを受け継いでいます。
特に紀治さんは難しいと敬遠されていた絹の藍染めを復活させ、国から現代の名工に、徳島県からは無形文化財保持者に選ばれています。
藍染めの注文が増えて来ましたが、藍を知らない人からの注文が多いので、日にちが間に合わないということが多いです。
せめて1カ月半ぐらいが欲しい。
オリンピックの影響が強いと思う。(オリンピックのマークが藍の色に指定された)
戦争中に食べ物しか育てなくてはいけないということで藍は1年草なので種を育てるが大変だった。
戦後は食料優先で後回しにされた。
私は次男で継ぐ気持ちは無かったが、回り回って継ぐことになりました。
継ぐにあたって全国の染めている家を回って、目は肥えました。
絹は触るなよということは言われました。(絹は染まりにくい)
阿波藩の城主が徳島の藍以外を継ぐはずは無いと思って、藍色の昔のやり方を勉強しました。
そうすると生地を選ぶが、染まるようになりました。
現在やっている方法は江戸中期のやり方です。
天然藍でやると染まり具合を自分の意志で調節ができます。
天然藍は繊維の間に入って行きやすい。(深く染まる)
人工だと表面につきやすい。
木綿、麻などを天然で染めると10g位重くなる。(500g位に対して)
そうすると強さが増してくるし、虫が寄ってこない。
樟脳の代わりに藍の風呂敷で着物を包むと言うことをしていました。(防虫効果)
個人差はある様ですが、アトピーの皮膚表面に弱い子供達にも効果がある。
藍の原料 すくも 藍の葉っぱを腐葉土にしたようなもので色素が入っています。
アルカリの液でないと溶けださないので、木の灰の上澄み、石灰、糖蜜、強力粉を使っています。
以前は酒を使っていましたが、ドバイの方の注文で酒は使わないで染めてほしい(宗教上)ということが有り糖蜜、強力粉でやっています。
江戸時代京都では上職人がお公家さん侍、下職人は町人のものを染めていました。
上職人が酒を使っていた。 下職人はふすまなどを使っていた。
徳島では酒の搾りかすと糖蜜を使っていた。
1週間から10日掛けて作ります。(その1週間前から色々準備が有ります)
藍の特徴が一番出しやすいのは絞り染めだと思います。
絹を染める時には木綿を染める時よりも少しアルカリの度合いを低くします。
絹の素材が関係してくる。
絹の繊維の中にたんぱく質・フィブロインという成分が有り、そのふちにセリシンというものがひっついていて、藍はそのセリシンに付くわけです。
セリシンを取ってしまっている方が、くさび染めとか化学染料で染める時には綺麗に染まります。
ですからセリシンを取ってしまった布が多い訳です。
10分と30分浸けるとでは藍の濃さは違います、30分をめどに染めて行きます。
12分以上浸けた方がむらができにくい。
藍色を濃くするためには繰り返します。
木綿、麻は色がきれいになるまで時間がかかります(6から8分位)、絹は時間が短い(1分30秒から2分位)。
それ以上長いと下が濃くなって、短いと上が濃くなる。
技術的には絹は難しい。
45年藍染めをやっていますが、防染方法も常に新しい技術が出来ているので、それを試さなくてはいけなくて勉強しなくてはいけない事が沢山あります。
抜染という色を抜く方法、無地の布を紺に染めたものに対して模様を型で糊をおいて、日光に当てて色を抜く方法があるが、6年ぐらいで出来て来ました。
レーヨンを染めるのに染まらない様なレーヨンが出てきたりしています。
ナイロンはよく染まるが、ポリになるといくらやっても染まらない。
染まらないレーヨンはポリ系の再生繊維だと思う。
染まらないものは大豆を摺って、その絞った液を布に塗って染めていたが、早く良く染まっていたが、レーヨンにそれをすれば染まるかもしれないが、はがれる可能性がある。
徳島のすくもが少なくなっているので、それをなんとかしないといけないと思っている。
藍の苗を作る人が少なくなってきている。(高齢化、機械化もされていない)
買った物を使ってもらった方が色が綺麗になる(不純物がなくなって行く)ので使ってもらいたい、置いておくと焼けたりする原因になる。
天然藍は折った所が色あせても戻ってくるが、化学藍は戻ってはこない。
沼津の灰の入手も難しくなってきています。
バイオマスの灰が上手く利用できれば安心ですが。
藍の色を出す方法も沢山あるので(薬品、天然等)、ものによっては色が直ぐ抜けてしまうことが有るので、聞いてからにした方がいいと思います。